レビュー
一歩一歩が死と隣り合わせ。身を削って茨の道を征く高難易度ノンフィールドRPG「いばらのうみ」
最大HPを消費してステータスアップ。戦略性の高いバトルを堪能できる密度の濃い作品
2016年8月24日 06:05
「いばらのうみ」は、30と数歩の踏破を目指すノンフィールドRPG。RPG制作ツール「WOLF RPGエディター」製ゲームのコンテスト“第八回WOLF RPGエディターコンテスト”に出展されたフリーゲームで、現在同コンテストのWebページからダウンロードできる。
不毛の地である“茨の海”を乗り越えて、奥地に潜む“孤独の王”を倒すのがゲームの目的。“探求者”のムルソーとロボットのロボタ、そして“とり”という1人と1体と1羽によるパーティで進み、一歩ごとに戦闘や回復地点、買い物など固定のイベントが発生する。
孤独の王に到るまでの歩数はたったの30と数歩だが、その道程はなかなかにシビアだ。茨の海の刺により、ムルソーは一歩ごとに最大HPからの割合でダメージを受ける。また、ムルソーはレベルアップしても最大HP以外のステータスが上がらず、最大HPを消費して攻撃力・防御力・最大MPを上昇させる仕組み。成長と生存のバランスを考えつつ、慎重に進んでいく必要がある。
戦闘はターン制のコマンド選択型。攻撃方法や行動パターン、ステータスなどが特殊な敵ばかりで、初見ではどう倒せばいいのか見当がつかないことも。レベルアップで増えていくさまざまなスキルを駆使し、1回の戦闘ごとに誰を攻撃の主力とするかなど各キャラクターの役割分担を考えつつ戦う、戦略性の高いバトルが特徴だ。敵の攻撃は激しいが、回復アイテムで戦闘不能からの復帰も可能。“速度”のステータスで決まる敵・味方の行動順を把握し、戦闘不能とそこからの復帰も折り込むなど戦術パターンの構築もポイントとなる。
進行内容が固定ゆえに、お金の代わりとなる“水差し”など入手できるリソースも限られているため、進め方次第では詰む場合も。セーブ・ロードをも駆使しながら状況を打開していくのが醍醐味となっている。
シナリオは、メニューから“心話通信”を選ぶか特定キーを押すと受信できる通信により展開。奥に踏み込めば帰還不可能となる茨の海を征くムルソーを引き留める者、別れを告げる者……さまざまな人物からのメッセージにより、世界観や物語が徐々に明かされていく。黒基調の画面デザインやオリジナルのキャラクターイラスト、メロウな英語ヴォーカルが印象的なBGMにより醸し出される、寂寥感のある雰囲気も本作独特の魅力だ。
クリアまでのプレイ時間は、筆者の場合“セーブデータに記録されるものとしては”1時間程度だが、実際には試行錯誤により、その数倍はかかっている。難易度は高いが、それだけに難所を越えた際の達成感は格別。一戦ずつじっくり考えて戦うRPGが好きなら、ぜひチャレンジしてみてほしい作品だ。
ソフトウェア情報
- 「いばらのうみ」
- 【著作権者】
- あーりん 氏
- 【対応OS】
- Windows(編集部にてWindows 10で動作確認)
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.03(16/08/05)