レビュー

従業員の出退勤管理を無償で行える「MylogStar WorkRadar Free」

ユーザーのログイン・ログアウト情報をもとに出退勤管理を記録、レポート作成が可能

「MylogStar WorkRadar Free」v1.0.2.14

 「MylogStar WorkRadar Free」は、(株)ラネクシーの業務効率化支援ツール「MylogStar WorkRadar」が備える機能から、ユーザーのログイン・ログアウト情報をもとにした稼働記録やレポート表示の機能を無償で使用可能にしたツール。同社のWebサイトからダウンロードできる。データ管理を行うサーバーPCはWindows Server 2003 R2/2008 R2/2012に対応し、加えてIISおよびMicrosoft SQL Server 2008/2012が必要。また、クライアントPCはWindows XP/Vistaおよび64bit版を含む7/8をサポートする。

 一般的な企業は従業員の労働日数や労働時間を把握するため、始業・終業時刻を確認する出勤簿を作成している。これは労働基準法で作成が義務付けられている法定帳簿のひとつだ。古くはタイムカード、現在は表計算ソフトで管理するのが通常だが、最近ではイントラネット上のサービスで出退勤時刻を管理する企業も少なくない。しかし、出勤簿の代わりになるシステムを構築するコストは決して安くないため、従業員300人未満の中小企業や個人商店の場合、導入をためらってしまう経営者は多い。

 だが、業務でPCを使っている場合、4GB以上のメモリを搭載するWindows Serverマシンを用意すれば、無償で出勤簿管理システムを構築できるのが本ツール最大の特徴だ。ただし、SQL Serverのエディションに応じてクライアント(ユーザー)数は限られてしまう。そのため、50名以下であれば無償利用可能なExpressエディション、300名以下ならStandardエディションと、従業員数に合わせてSQL Serverのエディションを選択するとよい。

 「WorkRadar Free」はサーバーとなる「WorkRadar Server」と、クライアントにインストールする「WorkRadar Agent」で構成されている。サーバーに関しては後述し、まずはクライアント側の動作から解説しよう。まず、「WorkRadar Agent」をインストールしたPCでサーバーへのログインを実行するとウィンドウがポップアップし、始業時刻の記録と体調および作業の進捗状況を選択する。

 ここで記録された内容は後から編集することも可能で、タスクトレイに常駐するアイコンの右クリックメニューにある[出退勤入力]を選択すれば同名のウィンドウがポップアップし、始業・終業時刻の変更などを行える。また、ログイン時に現れる“現在の稼働内容登録”ウィンドウは右クリックメニューから同名の項目を選択すれば再び呼び出せる。さらに、右クリックメニューから[ログアウト]を選べば、サーバーからのログアウトと同時に終業時刻を記録できる仕組みだ。

ログイン・ログアウトなどの操作は、通知領域に常駐する「WorkRadar Agent」の右クリックメニューから実行する
サーバーへ自身のユーザーアカウントでログインする。なお、サーバーのアドレスなどをあらかじめ設定したカスタム版「WorkRadar Agent」を配布する「Make MST Tool」も付属している
正しくログインすると始業時間の登録と共に、体調や作業の進捗情報などを数ステップで記録できる
右クリックメニューの[出退勤入力]から呼び出せる同名のウィンドウ。事情があって出社・退勤時にログイン・ログアウトできなかった場合に手動で編集する
こちらはWebブラウザー経由でサーバーにログインした状態。最初に現れるダッシュボードで出退勤の入力などが可能だ

 なお、これらの操作はWebブラウザー経由でも実行可能。Webブラウザーでサーバーにアクセスすると、同じように出退勤時刻や作業内容などの入力フォームがダッシュボードに現れる。ユーザーは作業内容や実際の作業時間に応じて編集すればよい。また、複数日に対して編集を行う場合は“出退勤入力”画面から編集した方が簡単だ。

 一見すると作業開始や会議といった業務内容を変更するたびに操作を強いられる印象を受けるが、後から簡単に「WorkRadar Agent」やWebブラウザーで編集できるため、会社から求められる出退勤時刻や業務内容の適切な記述を容易に実現できるのは評価に値する。

“出退勤入力”画面では複数日の編集が簡単に行える。一日の作業内容が多種多様な場合、こちらから編集した方が便利だ。なお、指定月の稼働状況も一目で把握できる

 今度はサーバーに目を向けてみよう。「WorkRadar Server」のインストールはウィザード形式で進み、データベースも付属するテンプレートファイルで自動的に作成される。ただしWCF(Windows Communication Foundation)のインストール後にIISをインストールした場合、一部のファイルが正しくマッピングされないといったIIS側の問題が発生する可能性がある。そのため、IISの運用に慣れていない場合は、新たにWindows Serverマシンを構築した方がスムーズに導入できるだろう。

 インストール後はWebブラウザーから管理者ユーザーでログインし、ユーザーアカウントの設定を行う。その際、各ユーザーに“ロール”と呼ばれる利用権限の割り当てを求められるが、出退勤情報を管理するユーザーに対しては、一般ユーザー権限が必要となるので注意が必要だ。また、ユーザー登録は少々面倒だが、事前にActive Directoryでユーザー管理を行っている場合は、そのユーザー情報を「WorkRadar Server」にインポートすることもできる。

 「WorkRadar Server」を運用する上でもっとも有益なのがレポート機能だ。フルバージョンではユーザーが利用したWebアクセスやアプリケーションの分析も可能だが、「WorkRadar Free」は前述のとおり出退勤情報に制限されている。経営者や部門管理者といった権限をもったユーザーであれば、従業員の稼働時間を数値と共に視覚的に確認できるため、全体の業務効率を把握しやすい。

 また、従業員が行う稼働内容はあらかじめテンプレートが用意されているが、これらの結果はレポート機能にも反映されるので、業務内容に合わせてカスタマイズすることをお勧めする。

「WorkRadar Server」でユーザーアカウントを作成する
“経営者レポート”による出退勤管理情報を示した状態。ユーザーの稼働時間がグラフ表示される
“部門管理者レポート”の情報。日・週・月単位でユーザーの稼働状態を大まかに確認できる
“稼働内容管理”で業務内容に応じた項目のカスタマイズも可能だ。ここで設定した表示色は各レポートにも反映される

 この他にもデータベースのメンテナンスやバックアップがあらかじめ自動スケジュールされるため、日々のメンテナンスが必要最小限で済むのは魅力的だ。前述のように中小企業が低コストで出退勤管理システムを導入する場合、「WorkRadar Free」はよい選択肢となるだろう。

ソフトウェア情報

「MylogStar WorkRadar Server」
【著作権者】
(株)ラネクシー
【対応OS】
Windows Server 2003 R2/Server 2008 R2/Server 2012
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.0.2.14(14/01/15)
「MylogStar WorkRadar Agent」
【著作権者】
(株)ラネクシー
【対応OS】
Windows XP/Vistaおよび64bit版を含む7/8
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.0.2.14(14/01/15)

(Cactus:阿久津 良和)