杜のVR部
第30回
製品版Oculus Riftへ向けた“実在感”の追求「Neos: The Universe」
VRで一気に体験する最小から最大の世界
(2015/6/16 11:00)
製品レベルのVRを体験できる日が近付いている。日本時間6月12日午前2時から開催されたOculus VR社のイベント“Step Into the Rift”では、Oculus Riftの製品版“Rift”のデザインのほか、体験できるコンテンツ、そしてVRの体験で要となる入力機器についての発表があった。
今回紹介するコンテンツにも関わりの深い発表だったので、簡単にその内容を紹介しよう。
インディー開発者への支援と新たな入力機器の登場
ハードウェアは、性能面でもこれまで出荷されていた開発者向けキット第2弾(DK2)と比べるとかなり向上している。詳細なスペックは正式には明らかでないが、両目それぞれに配置されたディスプレイの解像度は合わせて2K近く、描画の滑らかさを現すフレームレートは90fpsとなっている。また、視覚だけでなく360度の音声を再生することによって聴覚の没入感も深めるため、ヘッドホンが一体となっている(取り外しは可能)。
筐体は装着の快適さとずれにくさを追求し小型・軽量化。これまでのヘッドバンドから、よりしっかりとしたパーツへ変更された。そのほか、個人差のある瞳孔間距離(IPD)に対応するための調整つまみが備わっている。
コンテンツの紹介ではローンチタイトルになると予想されるいくつかのゲームの予告映像が披露されたほか、少人数のチームで開発を進めるインディー開発者へ、総額1,000万ドル(約12億円)の支援を行うことが明らかとなった。これまでOculus VR社は、オープンな環境でのコンテンツ開発を重視し、開発者用の機材を比較的安価で世界中へ平等に提供にしてきた。その数は累計17万台を超えている。今回の支援により、これまでさまざまなコンテンツを作ってきたインディー開発者をさらに後押ししたい考えだ。
そして今回のイベントで最も注目されていたのが、VRのインタラクティブ性に関係する入力機器だ。Oculus VR社は、Microsoft社とパートナーシップを結び、Xbox Oneコントローラーを同梱すること、そしてWindows 10がRiftに公式で対応することを明らかにした。
そして発表の最後には、Oculus VR社の創業者パルマー・ラッキー氏がVRでより現実と同じような感覚を得ることに特化した新たなコントローラー「Oculus Touch」を発表した。
このOculus Touchを使うことで、手のトラッキングが可能となる。プレイヤーの手の動きを認識するだけでなく、ジェスチャーの読み取りや重みのフィードバックなども行うことが可能。このOculus Touchを通じたVRでの体験は、これまでのゲームパッドを使う体験とは次元の違う、より没入感の高いものになるのではないかと期待できる。
こうした手のトラッキングは、VR内にある物や人への干渉を目的としているものだ。その時に、VRの中に実際にその物があるかのように感じる感覚=実在感は非常に重要になってくる。Oculus VR社の公式ブログでも、没入感(immersion)と並び、実在感(presence)という言葉は繰り返し使われており、ハードウェアの性能向上によってある程度の没入感が実現した今、コンテンツ制作サイドによる実在感の実現が求められている。
たとえば、すでに市販されているサムスンのVR HMD“Gear VR”では「ORBX Media Player」というアプリによって、レンダリングを工夫しより実在感を増した奥行きのある画像を鑑賞することができる。思わず現実にあると見まごうほどだ。
実在感を深めるために
今回紹介するOculus Rift対応ソフト「NeoS: The Universe」は、実際に実在感を感じられるコンテンツ。インディー開発者の手により、5月に公開されたばかりのVRコンテンツだ。Gear VRのコンテンツを提案するコンテスト“Mobile VR Jam”でゲーム以外のVRアプリ・体験部門で銅賞を獲得している。このコンテンツでは、プレイヤーは世界を、原子などの小さいものから細胞、人間、そして宇宙全体に至るまでさまざまなスケールを一気にズームアップして体験することができる。
かつて、10分間で細胞レベルから宇宙までを一気にズームアップ、ズームダウンする『Powers of Ten』という映像作品があったが、さしずめそのVR版といったところだ。
タイトル画面からは、ナレーション付きで自動的に進むモードと、自分でズームアップ、ズームダウンを調整するモードを選択できる。
ナレーション付きのモードを選択すると、さっそく目に入ってくるのは、原子や中性子といったごく小さなサイズの物だ。プレイヤーが上方向へ進むにつれて徐々に、遺伝子などサイズが大きくなっていく。
このコンテンツを体験して感じるのは、普段決して体験することができないサイズが眼前いっぱいに広がる感動のみならず、それぞれの物体が目の前にあるという“実在感”が強いということだ。目の前にある星を触れるのではないかとついつい手をのばしてしまうほど。
記事の冒頭でOculus Rift製品版の新たな入力機器“Oculus Touch”を紹介したが、VRの中にある物や人物とインタラクティブなやりとりをしたくなるということは、それだけVRに実在感を感じているからだ。
「NeoS: The Universe」で、VRの世界の実在感をぜひ体験してみてほしい。
ソフトウェア情報
- 「NeoS: The Universe」
- 【著作権者】
- Solirax Ltd
- 【対応OS】
- Windowsなど
- 【対応ハードウェア】
- Oculus Rift DK1/DK2、Gear VR
- 【ソフト種別】
- フリーソフト(寄付歓迎)
- 【バージョン】
- 1.0
評価PCスペック(参考)
- マウスコンピューター G-Tune NEXTGEAR-NOTE i790SA1
- 【CPU】
- Core i7-4700MQ 2.40GHz
- 【メモリ】
- 16GB(増設)
- 【グラフィックボード】
- GeForce GTX870M
- 【fps】
- 不明
- 【ヘッドホン】
- Creative Sound Blaster EVO Zx
- Neos: The Universe | Apps | Oculus Share(Oculus Rift向け)
- https://share.oculus.com/app/neos-the-universe
- NeoS: The Universe | Oculus' Mobile VR Jam 2015(Gear VR向け)
- http://vrjam.challengepost.com/submissions/36836-neos-the-universe