週末ゲーム
第512回
多彩な成長要素が魅力の“ひらめきRPG”「帽子世界」
帽子の奪い合いから意外な方向へ発展する物語も見どころ
(2013/2/15 12:08)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、スキルのひらめきなどの多彩な成長要素と、帽子をテーマにした物語が魅力のファンタジーRPG「帽子世界」を紹介する。
ひらめきが楽しい! サポートも充実したライトな感覚のRPG
今回ご紹介する「帽子世界」は、バトルやキャラクターの成長、武具の作成などに多彩なシステムを盛り込んだ、本格派のRPGです。プレイヤーは特殊な力をもつ“帽子”の所有者“管理人”となり、ほかの管理人の持つ帽子を集めてまわります。数多くの要素が詰め込まれているので、それらを順に紹介していきます。
ゲームでは横スクロール型のフィールドを歩いて探索します。途中に見えるモンスターと接触するとバトルが始まります。ジャンプで避けたり、別の道を選んだりして、接触を避けることも可能です。
バトルシステムの基本はオーソドックスなコマンド選択式のものです。特徴的なのはキャラクターの成長システム。経験値の概念は存在せず、攻撃時や被ダメージ時に時々、能力が向上します。能力値を上げたい武器や魔法を使っていると、だんだんその力が伸びていきます。
そして武器を使った攻撃の際に時折、新たな技“アーツ”をひらめきます。使っているうちに前触れなくひらめくのが、バトル中の楽しみの1つになります。武器の種類ごとにさまざまなアーツがあり、ほとんどはひらめきによって身に付けていきます。キャラクターは戦っていれば自然と強くなり、技を覚えていくという仕組みです。アーツは通常より攻撃力が高いほか、追加効果をもつものもあります。
また最大3人で構成されるパーティメンバーが特定の行動順でアーツや魔法を発動させることで、連携して攻撃する“コンボ”を繰り出せます。アーツと魔法には、上・下・上下の矢印が示されています。これが下・上など向かい合う順番になるように攻撃すれば、コンボが発生します。個別に攻撃するより大きなダメージを与えられるというメリットがあります。
本作は、回復方法もユニーク。非戦闘中には、“マナ”を消費してライフを完全に回復できます。マナは画面左上に表示されている数字で、非戦闘中には自然に増えていきます。戦闘中には使えませんが、1回の戦闘さえ乗り切れば、手軽に使える回復手段が用意されているわけです。ちなみにマナは魔法使用時にも消費しますが、敵も味方も1つのマナを共有しており、キャラクター個別に分かれていないのが特徴です。
戦闘中の回復手段は、アイテムや魔法のほか、“オーバーソウル”もあります。攻撃したりダメージを受けたりするとオーバーソウルのゲージが貯まっていき、満タンになると発動できます。使用した瞬間にライフが完全に回復するので、ほかの回復手段なしでもある程度は立ち回れます。
かなり親切なつくりになっていますが、それでも強敵にやられてしまうことはあります。その時は拠点となるホームに戻されますが、それ以外にペナルティはなく、何度でも気軽にやり直せます。バトルを繰り返していれば、たとえ敵を倒せなくても少しずつ強くなっていきます。システムは懐かしさを感じる部分も多いですが、このお手軽さは今風のゲームだなと感じます。
ジェムの強化と武具の生産でオリジナルキャラクター作り
バトルで敵を倒すと、“クリスタル”が手に入ります。クリスタルはこのゲームにおけるお金のような存在で、さまざまな使い道があります。
第1の用途は“ジェム”の強化です。ジェムはキャラクターの成長要素の1つで、特定の系統の武器攻撃を強化したり、魔法を覚えたり、戦闘に役立つ特殊能力を身に付けたりするのに使います。最初からいくつかのジェムは持っているのですが、新たなジェムを得たり、効果を強めたりするのにクリスタルを消費します。
ジェムは1キャラクターにつき4個まで装備できます。使用する武器や魔法に応じてジェムを選んでおく必要があるので、キャラクターの個性を決める重要な要素です。付け外しは自由なので、魔法に弱い敵を相手にする時は物理攻撃系のジェムを外して魔法系で固める、といった戦略的な使い方もできます。
また武具やアイテムの入手にもクリスタルを使います。本作にはアイテムを売る店はありませんが、フィールドや倒した敵から拾える素材、それにクリスタルを使うことでアイテムを作成できます。強い武具が欲しければ、希少な素材と多量のクリスタルが必要になります。さらにゲームを進めていくと、武具の強化も可能になりますが、ここでもやはりクリスタルを消費します。
とくに序盤はクリスタルがいくらあっても足りないので、誰の何を強化するか頭を悩ませることになります。しかし逆に言えば、どのキャラクターにどの武器を持たせ、どんな風に育てるかは、プレイヤーが自由に決められます。個性的なキャラクター育成が楽しめるのは、本作の大きな魅力です。
帽子を集めて特権を得よう
このゲームの鍵を握るのが、タイトルにもある帽子です。プレイヤーは帽子を持つ6人の管理人の中から1人を主人公に選び、ゲームを始めます。帽子にはそれぞれ特殊な力が備わっているため、選んだ主人公によって初期の能力が異なります。
筆者が選んだ“ドーラ”は、最初から武具の強化が可能です。初期の武具を強化することで、より強力な武具と同等の性能を安上がりに実現できるので、素材集めの手間が格段に減りました。
ほかの管理人が持つ帽子では、戦闘終了後にライフが自動回復するものや、フィールドで2段ジャンプが可能になるもの、敵と味方の行動順が見えるようになるものなど、それぞれ強力な特権があります。
これらの特権は、ゲームを進める中でほかの管理者と戦い帽子を獲得することで、自分のものにできます。すべての帽子を集めることが目的となるので、どの主人公を選んでも最終的には大きな違いはありません。どの管理者と戦うかという順番もプレイヤーに委ねられているので、好みの能力をもった帽子を優先すれば、ゲームを進めやすくなるというわけです。
なぜ帽子を集めるのか? 急展開が待ち受けるファンタジックストーリー
ここまでシステムの話をしてきましたが、物語の方にも目を向けたいと思います。先述のとおり、このゲームでは管理者の持つ帽子を集めることが目的となっています。これはどの主人公で始めても共通した目的で、主人公に選ばれなかった5人の管理者と戦い、帽子を奪うという流れは変わりません。
帽子を集めれば、主人公の能力は強化されていきます。しかしそれはゲームのシステムの話。そもそも、主人公である管理者は何のために帽子を集めるのでしょうか?
実はこの帽子を持つ管理者は、特殊な力をもつのと引き換えに、ある問題を抱えています。管理者たちはこの問題に立ち向かうために知恵を絞ってきましたが、未だ根本的な解決策は見いだされていません。そんななか、主人公となる管理者の1人は、ある意図をもってほかの5人の帽子を集め始めます。
そのタイミングに合わせるかのように、この世界に“ヨウコ”という少女が迷い込みます。彼女はセーラー服を着ていて、いかにも現実世界から来たような風貌をしています。彼女は事情が掴めないまま、帽子を奪う戦いに巻き込まれていきます。そしてそのなかで、帽子に秘められた謎を知ることになります。
プレイヤーの分身となるのは管理者の1人ですが、プレイヤーの目線となるのは、どちらかといえばヨウコのほうです。彼女がこの世界の謎に迫ることで、プレイヤーもこの世界の全貌を掴んでいくことになります。先々の展開は伏せますが、この主人公の意図が判明したその先には、さらに深く辛い真実が待ち受けています。ふんわりした印象のイラストからは想像のつかない、意外な展開に期待してください。
クリア後もまだまだ終わらない。別キャラでプレイするもよし最強を目指すもよし
ゲームをクリアすると、一部のデータを引き継いで新たなゲームを始められます。作者によると、繰り返しのやりこみプレイは想定していないそうで、主人公を変えてもストーリー展開の大枠は変わりません。しかし主人公たちは初期能力の違いだけでなく、性格的な違いがあります。その個性を楽しむという意味でも、クリアしてすぐにまたプレイしたくなる魅力があります。
もちろんゲームをクリアした後も、より強い武具を作ったり、キャラクターを最強まで成長させたりといった楽しみもあります。キャラクター育成に幅のある本作だけに、とことん遊び込む楽しさも十分にもち合わせています。
キャラクターの成長と、帽子を集めるという2つの要素が、いずれも自由度の高い形でまとめられた、完成度の高いゲームだと感じました。筆者がクリアまでにかかったプレイ時間は15時間程度。急げばもう少し早くクリアできそうですが、登場するサブキャラクターたちはいずれも個性的で、少し物語が進むたびにみんなに話しかけてしまいました。
このゲームをどのように楽しむかはプレイヤー次第。個人的には、あまり早解きしようとせず、“「帽子世界」の世界”をゆっくりと味わうことをオススメします。
ソフトウェア情報
- 「帽子世界」
- 【著作権者】
- えぬ 氏
- 【対応OS】
- Windows XP/Vista/7/8/XP x64/Vista x64/7 x64/8 x64
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 112(13/02/10)