やじうまの杜

青空文庫の『銀河鉄道の夜』に登場人物などが異なる版があるって知ってました?

その違いを「WinMerge」などで調べてみた

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4種類の『銀河鉄道の夜』

 宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』は青空文庫に4種類の版が存在するって知ってました?

 青空文庫には新字体・旧字体や新仮名遣い・旧仮名遣いといった違いで、異なるバージョンが登録されていることがよくあるようです。『銀河鉄道の夜』では、新字体・新仮名遣いを使った作品ID“43737”、新字体・旧仮名遣いを使った作品ID“48222”、新字体・新仮名遣いを使った作品ID“456”、旧字体・旧仮名遣いを使った作品ID“46322”が存在します。

 あれ? 新字体と新仮名遣いを使ったバージョンが2種類ある……。気になったので、新字体と新仮名遣いを使った2つのバージョン(作品ID“456”と“43737”)をテキストファイルを比較して色分け表示できるフリーソフト「WinMerge」で調べてみました。結果は……

2種類の『銀河鉄道の夜』を「WinMerge」で比較した画面(右が作品ID“456”、左が“43737”)

 ルビや改行の位置・回数が違うのでわかりづらいですが、ほかにも細かいところが違います。

 気になるのは漢字の使われ方。“云”と“言”、“吊した”と“つるした”、“見附けた”と“見つけた”といったように結構違います。細かいところではありますが、読んだ時の印象がちょっと変わるのではないでしょうか。

 ついでに、旧字体・旧仮名遣いを使った作品ID“46322”と新字体・旧仮名遣いを使った作品ID“48222”を比較してみたところ、新・旧の字体だけでなく大きな違いを見付けました。作品ID“46322”では冒頭の先生の台詞が

「ではみなさん、さういふふうに川だと云はれたり、乳の流れたあとだと云はれたりしてゐた、このぼんやりと白いものが何かご承知ですか。」

宮沢賢治 銀河鐵道の夜(作品ID“46322”)

となっていますが、作品ID“48222”では

「ではみなさんは、さういふふうに川だと云はれたり、乳の流れたあとだと云はれたりしてゐたこのぼんやりと白いものがほんたうは何かご承知ですか。」

宮沢賢治 銀河鉄道の夜(作品ID“48222”)

となっているのです。“48222”では“何かご承知ですか。”の前に“ほんたうは”が加えられていますね。新字体・新仮名遣いを使った“456”と“43737”にも“ほんたうは”が加えられています。

作品ID“46322”と“48222”を「WinMerge」で比較した画面(右が作品ID“456”、左が“43737”)

 このような違いは『銀河鉄道の夜』が未定稿として残されたことが原因となっているようです。Wikipediaによると『銀河鉄道の夜』は、第1次稿から第4次稿までが存在し、第1~3次稿に登場する“ブルカニロ博士”が、第4次稿では登場しないといった違いがあるそうです。

 青空文庫に登録されているバージョンでも、作品ID“456”と“46322”には“ブルカニロ博士”が登場しますが、作品ID“43737”と“48222”には登場しません。私が読んだ『銀河鉄道の夜』は、どのバージョンだったのでしょうか。