特集

Modern UIの真骨頂“スナップ”対応アプリレビュー

Windows 8/RTを使いこなすための10ジャンル・12アプリ

 Windows 8の発売から約半年が経過した。同じModern UIを搭載するWindows RTの方も、マイクロソフト純正タブレットのSurfaceが日本で発売され、ようやくプラットフォームとして動き始めたという印象だ。当初はアプリが少なかったWindows ストアアプリも、有名どころのサービスが増えてきて、実用的になってきている。

 タブレット向けにデザインされたModern UIには、ほかのスマートフォンやタブレット向けのOSとは一線を画す機能がある。それが“スナップ”だ。メインとなるアプリのほかに、別のアプリを画面の左脇ないし右脇に細長い状態で置いておけるというもの。実質的に2つのアプリを同時に使えるというのが、Modern UIの強みだ。スナップの方法は、“Windows 8 ナビゲーター by Impress Watch”の解説記事をご覧いただきたい。

 スナップされたアプリの挙動は、全画面時とは異なるため、アプリごとの個別対応が必要になる。そのためスナップに対応しないアプリもあるが、スナップでの利用を想定してきちんと作り込んできているアプリもある。今回はスナップに対応したアプリを、10ジャンルに分けてご紹介しよう。

ラジオ

フル画面時の「TuneIn Radio」

 仕事中でもプライベートでも、BGMやニュースを手軽に聞けるインターネットラジオ。その定番となっているのが「TuneIn Radio」だ。日本を含む世界中のラジオ局を検索して聴けるというもので、登録されているラジオ局は7万局以上とされている。実際のラジオでは聞けない地方のローカル局や、アメリカ・ヨーロッパなど世界各国のラジオも聴ける優れものだ。

 アプリでは、ジャンルや地域別、言語別などで選局が可能。スナップ時にも検索や選局が可能で、フル画面にすることなくあらゆる操作に対応できる。スナップの使い方をイメージするには一番わかりやすいアプリと言えるだろう。

 ちなみに一度選局して再生を始めれば、あとはスナップですらなく、ウィンドウが裏に回っても再生し続けてくれる。

スナップ時にも選局可能。気分に合わせて気軽にラジオ局を選べる
「TuneIn Radio」
【著作権者】
TuneIn Inc
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.1.0.0

動画再生

フル画面時の「niconico」

 ラジオがいいなら動画はどうだ、ということでスナップ対応をうたっているのが“ニコニコ動画”の公式アプリ「niconico」だ。利用にはプレミアムアカウント(月額525円)が必要。

 アプリ単体で人気動画のランキングやジャンル選択、検索(チャームから検索する)が可能。再生時にはワンタッチでフルスクリーンにできるなど、タブレットでの利用を想定したデザインになっている。

 スナップ時にも画面は小さいながら動画を視聴できる。スキップやコメントのオン・オフなど操作も可能。検索はチャームから呼び出すため、スナップでの使用は考慮されていない。BGM感覚で流し再生したいような時には便利だ。なおウィンドウが裏に回ると再生がストップする。

 利用シーンから考えると、生放送を画面端に置きながら、気になる展開が来たら拡大するといった使い方を期待したいのだが、残念ながら今のところニコニコ生放送は非対応。今後のアップデートに期待したい。

スナップ時は小さい画面ながらきちんと再生できる。見るというより聴くという使い方に向いている
「niconico」
【著作権者】
DWANGO Co., Ltd.
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト(月額525円(税込み)のプレミアムアカウントが必要)
【バージョン】
-

ニュース

フル画面時の「朝日新聞デジタル for Windows」

 最新ニュースをチェックするニュースアプリは、スナップでの利用も容易に想像できるので、大抵のアプリで対応している。ただ使用感にはアプリごとに差があるので、好みは分かれるところ。筆者のお気に入りは「朝日新聞デジタル for Windows」だ。

 通常時はModern UIを意識したタイル表示によるニュース一覧が表示され、タッチすると詳細記事を読める。速報のほか、社会、経済、政治、国際、文化と実際の新聞に近いジャンル分けもされており、好みの話題を見つけるのも簡単だ。チャームでの検索にも対応し、キーワードがヒットしたニュースが一覧表示される。長い記事を読むには月額3,800円の“朝日新聞デジタル”の契約が必要だが、多くのニュースはそのまま読める。

 スナップ時には、各ジャンルのトップニュースがストレートに並ぶ。タッチするとスナップ側の画面でそのままニュース記事を読める。またこのアプリには記事の自動更新機能があり、5分、10分、15分、自動更新なしから選択できるのが利点だ。

スナップ時もニュースの一覧や記事が見やすい。自動更新を設定できるのもニュースではありがたい
「朝日新聞デジタル for Windows」
【著作権者】
朝日新聞社
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
リリース5

スポーツ速報

フル画面時の「スポーツ」

 仕事中でも、気になるあの試合の速報は知りたい。スポーツの最新情報をチェックするのにオススメのアプリは、標準で用意されている「スポーツ」。

 最初から入っているアプリと侮るなかれ。選べるスポーツのジャンルが非常に幅広く、J1・J2を含む世界中のサッカーや、日本のプロ野球やメジャーリーグ、さらにはNBAやNFL、F1やMotoGPまである。各ジャンルのニュースに加え、チームや所属選手のデータも閲覧でき、これ1つでスポーツのあらゆる情報が手に入ると言っていいほど充実している。以前は日本のスポーツがほとんどなかったのだが、最近のアップデートで一気に充実した。

 スナップでは好みのジャンルの試合情報を表示できる。特にありがたいのがアプリに用意されている“お気に入りチーム”機能。野球やサッカーなどジャンルをまたがって、指定した複数チームの情報をスナップ時に一覧表示できる。『海外スポーツのあの試合はどうなったかな?』と軽くチェックしたい時に、一覧表示してくれるのは実に便利だ。

スナップ時には気になる試合の状況をリスト表示できる。お気に入りチームを設定できるのがとても便利
「スポーツ」
【著作権者】
Microsoft Corporation
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
2.0.0.273

株価情報

フル画面時の「kabu.com for Windows」

 “アベノミクス”で盛り上がる昨今、株やFXを始めるチャンスと思っている人も多いはず。そんな方の情報チェックに便利なアプリが「kabu.com for Windows」だ。

 通常時にはマーケットのトピックスやニュースリリース、各種ランキング情報を表示。また自分でお気に入りに登録した株価や為替の情報がタイル表示される。銘柄の検索はチャームの検索窓で対応する。タッチすれば詳細なデータも見られるので、情報管理ツールとしても便利に使える。

 スナップ時にも同様の情報がコンパクトに表示される。株価や為替を一覧で表示できるほか、見たい情報をタッチすればスナップ状態のままでグラフなどの詳細データを参照できる。なお更新間隔は5分、10分、自動更新なしとなっているが、“カブドットコム証券”の口座を開設するとリアルタイム情報も確認できるようになる。

スナップ時にも株価や為替の情報を一覧表示できる。データをざっと確認したい時ならこれで十分
「kabu.com for Windows」
【著作権者】
kabu.com Securities Co., Ltd.
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.3.2

メモ

フル画面時の「Evernote Touch」

 スナップ対応のメモアプリはいくつもあるが、ここは定番の「Evernote Touch」をご紹介したい。

 “Evernote”はさまざまなプラットフォームにソフトを展開している、テキストや画像のデータをクラウド上に保存できるというサービス。ある端末でメモを書いておくと、同じアカウントを使っているほかの端末からも、そのデータを参照できる。端末を選ばず、思いついた時にメモしておくという使い方がとても便利なソフトだ。

 スナップ時にも文字入力は可能。新たにノート(ファイル)を作成して、テキストを入力、保存できる。メイン側の画面で情報を検索し、スナップ側でメモを取っておけば、ほかの端末でもそのメモを参照できる。メモ帳としての運用だけを考えても、とてもシンプルで使い方を迷うこともない。何より保存先を意識しないでいいというのが、Modern UIではとても便利だ。

スナップ時にはシンプルなメモ帳として活用できる。データのやり取りが楽な点でほかより抜きんでた便利さがある
「Evernote Touch」
【著作権者】
Evernote Corporation.
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
-

コミュニケーション

フル画面時の「Twitter」

 常に画面に出しておきたいアプリと言えば、コミュニケーションツールの存在は外せない。日本でも利用者が激増し定番ツールとなった“Twitter”では、公式アプリが用意されている。

 通常時はタイムラインを表示。つぶやきたい時はアイコンをタッチすればウィンドウが現れる。更新したい時は、コメント表示部分を上から下へスワイプする。スナップ時もこれとほぼ同様の操作感になっており、タイムラインの表示やつぶやきが可能。必要最低限の機能がシンプルにまとめられており、ごちゃごちゃした機能を求めないのであればスッキリしていて使い心地がいい。

スナップ時にも想定通りの動き。シンプルながら見る・書くという基本機能はまとまっている
「Twitter」
【著作権者】
Twitter Inc.
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
-
フル画面時の「LINE」

 コミュニケーションツールとしてはもう1つ、こちらも定番となりつつある“LINE”も公式アプリが配信されている。

 登録された友達やグループがタイル表示されるので、話したい相手をタッチすればウィンドウが開く。友達の追加や検索にも対応している。スナップ時は友達とグループがリスト表示され、こちらもタッチすると会話のウィンドウに遷移する。想像通りの挙動とはいえ、スナップ上でも全く問題なく会話できるので、Modern UIでは重宝するアプリだ。なお、本アプリは通話には対応していない。

スナップ時も会話には支障ない。メイン画面で何かを見たり調べたりしつつ会話できる
「LINE」
【著作権者】
LINE Corporation
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
-

タスク管理

フル画面時の「gTasks HD」

 たくさんのタスクを抱える忙しいビジネスマン。忙しいからといっても、仕事の期限や打ち合わせの日程を忘れるわけにはいかない。常にタスクを確認したいなら「gTasks HD」が便利。

 通常時にはタスクが大きくリストアップされ、期限順、件名順などで並べ替えして確認できる。Googleカレンダーと同期も可能で、登録してあるタスクを一括して管理できる。また時間になると通知する機能もあり、ウィンドウが裏に回っていても、デスクトップ利用時であっても、“トースト”機能によりサウンドとポップアップで通知してくれる。

 スナップ時には登録されているタスクがリスト表示される。タスクをタッチすれば詳細も確認でき、タスクの終了設定や日時の変更やアラートの有無なども設定可能。また今日のタスクなど表示切り替えもできるので、複数のタスクを確認しながらメイン画面で作業するといった使い方にも対応できる。

 なおダウンロードは無料だが、タスクの登録数に制限がかけられている。制限を解除するには、アプリ内課金(280円)により有料ユーザー登録をする必要がある。

スナップ時にもリスト表示の並べ替えなどに対応。複数の仕事を並行している時には、これでチェックしつつ進めると安心
「gTasks HD」
【著作権者】
Yaniv Katan. 氏
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.2.0.50

ゲーム

フル画面時の「Microsoft Solitaire Collection」
フル画面時の「Microsoft Minesweeper」

 仕事の息抜きにちょっと遊びたい時もある。その「ちょっと」をスナップ上でできてしまうゲームもある。さすがに対応するゲームは少ないが、「Microsoft Solitaire Collection」や「Microsoft Minesweeper」が対応しているのが面白い。

 前者は「ソリティア」、後者は「マインスイーパ」として、Windowsユーザーにはなじみ深いゲーム。Windows 8では標準アプリから外れ、ストアからダウンロードする必要がある。いずれも無料で提供されているが、内容は以前のものより大幅にグレードアップし、タッチ操作に合わせたアレンジも加えられている。特に「Microsoft Minesweeper」ではゲームのルールを活用したダンジョンモードが追加されるなど、まるで別のゲームの様相となっている。

 スナップにすると、「Microsoft Solitaire Collection」では縦長の画面にトランプのカードが配置され、ゲームを操作できる。「Microsoft Minesweeper」では小さな画面ながら上級難易度もプレイ可能。小さすぎてタッチも難しくなるが、ピンチ操作で拡大縮小できるので、小さい画面でもちゃんとプレイできる。

 とはいえ普通はゲームプレイは大きな画面で遊ぶはず。ゲームならば、ソーシャルゲームがスナップ対応してくれると、画面横に出しておいて状態を見るというのができて良さそうだ。大手ソーシャルゲームにはぜひ対応してもらいたい。

「Microsoft Solitaire Collection」のスナップ時。縦長の画面にゲームをうまく収めている。プレイ感も良好
「Microsoft Minesweeper」はスナップすると小さすぎるように見えるが、拡大縮小ができるので意外と快適に遊べる
「Microsoft Solitaire Collection」
【著作権者】
Microsoft Corporation
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.6.2.30419
「Microsoft Minesweeper」
【著作権者】
Microsoft Corporation
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.6.2.30419

ショッピング

フル画面時の「Amazon」

 最後はショッピング。通販大手がそれぞれアプリを用意する中、比較的スナップに親和性が高いのが「Amazon」だ。

 アプリを起動し自分のアカウントでログインすると、おすすめの商品や人気商品などがタイル表示される。上部にある検索ウィンドウで検索も可能。詳細を見たい商品を選ぶと、アプリ内ブラウザーのような形で商品ページが表示される。

 スナップ状態でも同様に、商品のタイル表示と検索が可能。この状態で商品を選ぶと、メイン画面がWebブラウザーに切り替わり、そこに商品情報が表示される。スナップ側ではそのまま商品検索などを続けられるので、複数の商品を選んだり探したりする時には、スナップの方が使い勝手がいい。スナップ画面で何かするというよりは、2種類の使用感を使い分けられるといった感じだ。

スナップ時はメイン画面にWebブラウザーで商品情報を表示する。メイン画面での利用時とは異なる使用感を提供するという趣向になっている
「Amazon」
【著作権者】
Amazon.com, Inc. or its affiliates
【対応OS】
Windows 8/RT(x86, x64, ARM)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
-

 以上、10ジャンルで12本のアプリを紹介させていただいた。スナップで使えるアプリという視点で見ると、ニュースなどの定番だけでなく、ゲームなど意外なジャンルに作りこまれたものがあったのが興味深かった。スナップを活用したアプリが充実することで、プラットフォームの強みを見せることにもつながるはず。アプリ開発者の方には、ぜひスナップを意識し、利用シーンを想定したアプリ開発に挑戦していただきたい。

(石田 賀津男)