杜のVR部

第24回

ついに日本で発売される初の本格的なVRヘッドセット“Gear VR”は何がスゴいのか?

その特徴を実際に体験して一気に紹介!

 日本で初めて発売される高性能なVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)“Gear VR Innovator Edition for S6”(以下、Gear VR)。サムスンとOculus VR社が共同開発を行った製品だ。4月23日から予約が開始されている。

 このGear VRはサムスンのスマートフォンGalaxy S6/S6 edgeを装着してVRが体験可能になるというもの。Oculus VR社が開発しているPC向けのOculus Riftの製品版よりも早く販売が開始されることになる。Oculus VR社のVRHMDはこれまで開発者向けのOculus Rift DK2しか購入できなかったが、VRの普及に本腰を入れるための製品版がGear VRということで、とにかく気合が入っている。

Gear VR。外見もだいぶ洗練されている

 性能もさることながら、装着後の体験がOculus Riftと格段に違うため、今回はその体験について順を追ってポイントを紹介していこう。

 なお、筆者が本稿を執筆するために使用したGear VRは、4月23日より予約発売を開始した“Gear VR Innovator Edition for S6”ではない。海外で昨年12月より発売されている一世代前のモデル(国内未発売のスマートフォンGalaxy Note 4専用のモデル)だ。国内発売される“for S6”は執筆時現在、家電量販店の店頭で体験できるのみ。サイズやハードウェアの外見、端子部の違いなどが若干あるものの、VRの体験自体は変わらないこと、今回紹介する特徴も筆者自身が両モデルを体験した上で共通だと判断したことを申し添えておきたい。

装着すると電源がONに!各所に埋め込まれたセンサー

 まずは、体験する前の準備段階から説明したい。Gear VRを体験するためにすることは2つ。Gear VRにスマートフォンを装着して、被るだけ(初回は初期設定が必要)。Oculus Riftの場合、PCやカメラとの配線やアプリの起動など細々とした手順が必要だが、Gear VRはとにかく早い。非常に手軽に準備が完了する。

マイクロUSB端子にスマートフォンをはめ込んだら、あとはカチッと音がするまで入れるだけ

 そして、スマートフォンを装着した状態で頭に被ると、“ピコッ”という音とともにスマートフォンの電源が入り、目の前にはGear VRのロゴが表示される。Gear VRにはスマートフォンのセンサーを補完するために多数のセンサーが埋め込まれており、そのひとつが装着の有無を判断するセンサーだ。電源のON/OFFが自動でされるのは、実際に体験するとかなり便利。

右目用レンズの下にあるのが装着を感知するセンサー

 そして装着して起動したら、最後にピントを調整しよう。Gear VR上部にあるダイヤルを回すとピントを調整できる。近視の人でも眼鏡なしでクッキリと見えるくらいのところまで調整できるため、眼鏡は不要だ。

Gear VR上部に搭載されたダイヤル。ピント調整はかなり幅広い。筆者は0.01程度の視力だが、眼鏡無しでも問題なく体験できた

アプリのダウンロードから起動まで、VR内ですべてが完結するUI

 さて、Gear VRを装着してまず表示されるのはホーム画面だ。Oculus Riftは、体験したいVRコンテンツを起動してから急いでOculus Riftを被るなど、どうしてもPC側での操作が必要だった。しかし、Gear VRは違う。

これがGear VRのホーム画面「Oculus Home」

 ホーム画面「Oculus Home」からアプリが起動できるだけではなく、ストアにアクセスするとソフトの説明などを読んでダウンロードができるようになる。現時点で日本国内からアクセスするストアには無料のものが並んでいるが、今後有料コンテンツが配信された際には購入もこのホーム画面で行うことができる。

最近使用したアプリが“HOME”画面に表示される。他のアプリは“LIBRARY”で一覧を見ることができる。

操作系の工夫

 ところで、このホーム画面を見て、操作はどうするのかと疑問に思った方も多いのではないだろうか。Gear VRでは側面右側にタッチパッドと物理ボタンが1つ、そして音量調整ボタン備わっている。このタッチパッドをタップしたりスワイプすることで操作を行えるというわけだ。物理ボタンは基本的に“戻る”ボタンとなる。この操作方法で、コントローラーなども必要なくメニューの操作ができる。一部のゲームを除いては、そのままVR体験も完結してしまう。

タッチパッドと“戻る”ボタン。音量調整ボタンもある。感度が良いのでVR体験中、使う必要がない時はうっかり触れないようにしよう

実際の体験の比較、美麗な映像

 さて、ハードウェアの特徴の話が多くなってしまったが、実際のVR体験もいくつか紹介したい。Galaxy S6の解像度は2,560×1,440で、Oculus Rift DK2の1,920×1,080をかなり上回っている。それだけ映像のクオリティが高く、ドットの網目も気になりにくい。

とにかく画面が美しい。実写でも遜色ない。この解像度がそのまま視界いっぱいに広がる

 また、描画速度を表すフレームレートは60fpsとOculus Rift DK2の75fpsに劣るが、頭の動きに視界が反応するヘッドトラッキングは極めてスムーズで、快適そのものだ。Oculus Rift以上に最適化が図られていることがわかる。

 コンテンツも実写系のものからフルCG、そしてゲームコントローラーを使うゲームまでさまざまだ。

「VR Introduction」。まずはこれから始めよう。実写映像に見とれること間違いなし
バーチャル映画館で映画の予告編を観ることができる「Oculus Cinema」。ロビーで観たい映画を選ぼう
鑑賞する場所も選べるが今回は映画館を選択。本物の映画館にいるかのように大スクリーンが広がる。解像度が高いので、映画も全く問題なく観ることができる(スクリーンショットでは再生時間等を示すバーが表示されているが、鑑賞中はすべて消えて映像のみ表示される)
360度の映像を体験できる「Oculus 360 Video」。その中でもオススメなのが映画『パシフィック・リム』のフルCGコンテンツ「Pacific Rim: Jaeger Pilot」。2分程度だが臨場感抜群だ
Oculus Riftでも体験できた3人称視点のSTG「Vanguard V」。頭を振ってターゲットをロックオンできる

 体験できるコンテンツは海外製のものに加え、コロプラの「白猫VRプロジェクト」、ユニティの「ユニティちゃん Candy Rock Star VRライブ!」、カヤックの「Little Witch Pie Delivery」といった国産コンテンツのGear VR版が登場する。発売以降、コンテンツは増えていくことが確実なので期待したいところだ。

他にも施されている工夫や機能

 ここまで紹介してきた以外にも、きめ細やかな工夫が施されている印象だ。例えば顔に直接触れるスポンジ。Gear VRのスポンジはベルクロで着いているため、簡単に取り外して洗うことができるほか、スペアのスポンジまで付属している。さらに、持ち運びを想定したキャリングポーチも付属。コントローラーも小さいサイズのものであれば収めることができて完璧だ。

こんな感じでスポンジの付け外しが簡単。体験していると汗をかいたりするため、交換・洗浄は重要だ

 最後に、用途はまだあまりないが、Gear VRを装着したまま外を見ることができる機能“パススルー・カメラ”を紹介したい。スマートフォンのカメラを使って、そのまま目の前の様子を見ることができる。遠近感が変わるので、歩行などはしないように気をつけよう。

“戻る”ボタンを長押しすると表示されるメニュー画面。バッテリーの残量なども確認できる。左下から2つ目のアイコンがパススルー・カメラだ
ヘッドマウントディスプレイをつけているのに、目の前が見える!

 ここまで、Gear VRもの良さをお伝えしてきた。しかし、このGear VRも製品版とはいえ、これからもまだまだ進化することは間違いない。実際に体験してみると、まだドットの網目が気になる人もいるかもしれないし、トラッキングカメラが無くて頭の動きしか認識されないことが不満な人もいるかもしれない。一部の家電量販店にあるGalaxy Shopでは、実機を体験することができる。百聞は一体験にしかず。ぜひ一度、体験してみてほしい。

(もぐらゲームス:すんくぼ)