杜のVR部

第25回

音で視界を確保しながら進んでいくアドベンチャー「Obedient Echo」

VRで感じる“聴覚”の没入感

 手軽に楽しめるハコスコといったスマホVRの紹介、Unite 2015 Tokyoのイベントレポート、日本で発売されたGear VRの紹介と、Oculus Rift向けのVRコンテンツの紹介から少し遠ざかっていた本連載。本筋に戻り、今回からは再びOculus Riftコンテンツの紹介をしていきたい。

 そして5月6日、Oculus VR社はOculus Riftに関して公式ブログで大きな発表を行った。これまで明らかとなっていなかった製品版の出荷時期が2016年第一四半期とされ、さらに製品版の写真が公開されたのだ。年内には予約を開始するとしているほか、今後性能やローンチタイトルなどの詳細を徐々に明らかにしていくという。

Oculus Rift製品版。これまでのDK2に比べれば洗練された外見
装着側。Oculus VR社のパルマー・ラッキー氏は、マイクも内蔵されると発言している

 その性能は最新型プロトタイプCrescent Bayをさらに改良したものということで、現在流通している開発者向けキット第2弾(DK2)と比較すると飛躍的に没入感の高い経験ができるようになることは間違いない(Crescent Bayの特徴や使用感については、第17回をご参照いただきたい)。また、VRゲームなどをプレイするための入力機器についても付属する模様。ValveのHTC ViveやソニーのProject Morpheusも来年上半期に発売ということで、今年の終わりからVRヘッドマウントディスプレイがアツいことになりそうだ。

 Oculus VR社も社内のスタジオでゲームタイトルや映像作品を制作しているが、今後、Oculus Rift製品版の発売に向けてVR向けのタイトルが活発に発表されることは間違いない。引き続き注目していきたい。

 さて、前置きが長くなってしまったが、今回は音をテーマにした1人称視点のアドベンチャーゲーム「Obedient Echo」を紹介しよう。なお、本作は執筆時現在、公開中止になってしまっている。理由は不明だが、ぜひ復活に期待したい。

手を叩く“音”で視界を確保していく

 このゲームでは、ダンジョンのような場所を手がかりのメモを探しながら探索していくアドベンチャーゲーム。一人称視点なのでやや酔いやすくなっていることに注意だ。

この画面だけ見ると普通のダンジョン探索ゲームに見える

 これだけだと普通のダンジョンクロールのゲームだが、このゲームの面白いところは、プレイヤーの目が見えないという設定であること。目だけでは視界が確保できず、手を叩いたり、環境音を反響させて視界を確保しつつ進んでいくという仕組みになっている。

ゲーム開始時。左クリックかゲームパッドのLボタンで手を叩くことができる
手を叩くと、音が視界を確保してくれる

 このゲームでは手を叩きながら先に進んでいくことになる。手がかりのメモはダンジョンの中に散らばっているので探していこう。

屋外に出ると雨が降っている
庭のような場所では、音の反響が連鎖して一気に視界が開ける

 探索自体は10~15分で終わる非常に短い体験だが、このゲームは他の“目”で楽しむゲームと異なり、“耳”で楽しむゲームという印象を受けた。古めかしいダンジョンの中で、周りが見えるのは音が響いている間だけ。周囲を包む闇という根源的に恐ろしいものを追い払えるのは音だけなのだ。そうなると必然的に聴覚が研ぎ澄まされる。水滴の落ちる音、柵の向こう側から聞こえてくる唸り声、ひとつひとつの音にビクビクしてしまう。

 目で見える情報は闇か、ゲームの舞台となる風景のみで恐怖を感じる要素はない。しかし音がキーになることで、『もし今ここで手を叩いたら、何が姿を現すのだろう』という不安を掻き立てられる。それがVRという360度を闇で囲まれた中での出来事なのだから、その不安は非常に大きい。目だけではなく耳でも没入感を体験ができるゲームだ。

(もぐらゲームス:すんくぼ)