杜のVR部

第34回

VRで没入して体験する物語への挑戦「Colosse: A Story in Virtual Reality」

コンテストでも上位入賞したVRアニメの魅力

 ゲームや映画における物語の語り方にはさまざまな形がある。設定やイントロダクションなどを言葉で表す場合もあれば、言葉を一切使わずに表現されることもある。

 では、VRで言葉を使わずに物語を語るとどうなるのだろうか。VRで表現された世界の中に居るかのような没入感は各種VRヘッドマウントディスプレイですでにある程度実現しているが、コンテンツ側の工夫で“物語そのものへの没入”はどこまで実現できるだろうか。そんなテーマに挑戦しているコンテンツが今回紹介するVRアニメーション「Colosse: A Story in Virtual Reality」だ。

 本作品はOculus VR社が4月から6月にかけて開催したGear VR向けコンテンツのコンテスト“Oculus Mobile VR Jam”のノンゲーム部門で第2位の金賞に輝いている。その後、Oculus Rift版も公開されており、評価が高い作品だ。さっそく紹介していこう。

2Dと3Dの中間のような独特なアートワーク

 「Colosse: A Story in Virtual Reality」は、コントローラーなどの操作は一切必要としない。開始すると目の前には白と青のグラデーションが印象的な風景が広がる。現実に近い表現が模索されることが多いVRコンテンツの中では、このアートワークは非常に独特だ。一見2Dのような表現だが、立体感・遠近感がしっかりとあり、絵と3Dの中間を見ているような感覚になる。

白と青のグラデーションが美しい

 正面を見ると湖に狩人がおり、槍を構えてカニを捕まえようとしている。本作の主人公はこの狩人。プレイヤーは彼を第三者視点から眺めながら、物語を楽しむといった構図だ。言葉による説明は一切ないが、狩人の動きと表情を見ていれば、どのような物語が進行し、彼がどのような感情を抱いているのかは理解できる。

槍を構える狩人
カニを捕まえようとするが、影が一帯を覆う
ゆっくりと歩いて現れる巨人。かなり巨大に描かれており圧倒的なスケールだ

体験として描き出される物語

 本では文字によって、映画では視聴覚情報によって物語が描き出される。没入感のあるVRでは、リアルタイムな体験によって物語を描き出していく、ということが求められるようになる。

 「Colosse: A Story in Virtual Reality」では、プレイヤーの視点によってシームレスに物語が進んでいくようなデザインになっている。物語を前に進めるのはプレイヤーなのだ。もちろん没入感を損なわないために、ゲーム的な注視ポイントの表示といった物語とは関係のない要素は排除されている。狩人と巨人を目で追いかけていると自然と物語も進んでいく。

巨人から逃げる狩人。シーンの切り替えもプレイヤーの視点がトリガーになっている
隠れていると巨人が突っ込んでくる。胸のところに青く光っているものが気になる
「Colosse: A Story in Virtual Reality」ムービー
本作品のムービー。作品を体験している様子をほぼそのままに見ることができる

 今回紹介した「Colosse: A Story in Virtual Reality」はコンテスト用に制作された短編だが、今後VRで体験することで物語を楽しむことができる作品は増えてくるものと思われる。また、その手法も現在模索されているところだ。Oculus VR社自身も社内に映像体験を制作するチームOculus Story Studioを設け、アドベンチャー作品「Lost」やはりねずみのキャラクター“ヘンリー”を使った作品の制作に取り組んでいる。

 また、物語への関わり方として「Colosse: A Story in Virtual Reality」では、目線(実際には頭の向き)だけだったが、今後はその幅も広がってくる。Oculus VR社が開発しているハンド・トラッキングコントローラー“Oculus Touch”では手の動きやジェスチャーをVR内に伝えるとともに、振動によりVRからのフィードバックを得ることも可能になる。さらに、FOVE社が開発中のVRヘッドマウントディスプレイ“FOVE”では視線の追跡が可能となり、感情と密接に関わる眼球の動きを反映させたコンテンツが制作されることが期待される。

手の位置や指の動きをトラッキングできるリング型のコントローラー“Oculus Touch”
視線追跡により、より感情的なやり取りができるようになることを目指す“FOVE”

 読む・見る・聴く物語からVRに没入して体験する物語へ。今後どういった作品が登場するか楽しみだ。

ソフトウェア情報

「Colosse: A Story in Virtual Reality」
【著作権者】
Nelson Boles 氏、Joseph Chen 氏、Kevin Dart 氏、Alex Grigg 氏、Eran Hilleli 氏、David Kamp 氏、Jasmin Lai 氏、Nick Pittom 氏、Daniel Sproll 氏、Jason Storey 氏、Jasper Trenfield 氏
【対応OS】
Windowsなど
【対応ハードウェア】
Oculus Rift DK2
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
DK2-SDK6-V1a

Oculus Rift DK2版評価PCスペック(参考)

マウスコンピューター G-Tune NEXTGEAR-NOTE i790SA1
【CPU】
Core i7-4700MQ 2.40GHz
【メモリ】
16GB(増設)
【グラフィックボード】
GeForce GTX870M
【fps】
75fps
【ヘッドホン】
Creative Sound Blaster EVO Zx

(もぐらゲームス:すんくぼ)