週末ゲーム

第545回

第五回“WOLF RPGエディター コンテスト”お勧め作品ピックアップ(後編)

シミュレーション、シューティング、ノベルゲームを計5本紹介

 フリーのRPG制作ソフト「WOLF RPGエディター」で制作したゲームのコンテスト“WOLF RPGエディターコンテスト(ウディコン)”の参加作品から、“週末ゲーム”担当者がピックアップした作品を紹介する本特集。RPGを紹介した前編に引き続き、後編はシミュレーションゲームとシューティングゲーム、ノベルゲームを計5本紹介する。

シミュレーションゲーム

冒険者ギルド経営シミュレーション「スポンサーガ」

「スポンサーガ」

 さまざまな依頼に冒険者を派遣し、お金を稼いで商売を広げながら物語を進めていく経営シミュレーションゲーム。伝承と世界の謎にまつわる、骨太のダークファンタジーが展開されるシナリオも見所だ。

 主人公は、20年前に予言者の託宣により“邪竜シュレーダー”を倒す勇者として立ち上がったが、挫折して商人となった初老の男、ヴィンセント。裏切り者と誹られ、自分の代わりに邪竜を倒したかつての仲間達とも疎遠になっていたが、“魔王ヒエロニムス”によって世界が再び危機に陥ったことを知り、冒険者派遣業“ヴィンセント商会”を立ち上げる。英雄でなくても世界に貢献できると、自分の生涯に意味はあったと証明するために……。

 ゲームの基本的な流れは、商会に在席する冒険者から最大3名のパーティを組んでさまざまなクエスト(依頼)に派遣し、達成することで報酬を得るという繰り返し。1つのクエストは、たとえば遺跡調査なら探索、罠解除、調査と複数のイベント(行程)があり、その達成の度合いが数字で示される。冒険者を派遣すると1日ごとにこの数字が上がっていき、すべてのイベントをクリアすればクエスト達成だ。

 冒険者は戦士、旅人、学者、悪漢などの職業と1から5までのレベルがあり、最初は限られた冒険者しか雇えないが、クエストをこなして実績を積むことで雇える冒険者が増えていく。冒険者の派遣にかかる料金は職業とレベルごとに変わるほか、職業によってイベントへの向き不向きがあるため、クエストの報酬に対して派遣料で赤字にならないよう、イベントの内容から適切な職業を予想したり、まずは1日だけ派遣して様子を見たりと、パーティ編成を工夫するのが攻略のポイントだ。

派遣する冒険者と日数を決めて送り出す。日数経過後はクエストの達成状況が報告される

 最初は簡単なクエストばかりだが、じきに達成まで期間のかかるクエストが複数同時発生するようになるほか、危険なイベントで冒険者がダメージを受けて回復するまで再派遣できなくなるといった要素も加わり、やりくりに忙しくなるのが悩ましくも楽しい。ランダムに商会を訪れる商人から、クエストクリア時の報酬が倍増するアイテムや、ダメージを受けなくなるアイテムなどを買うこともできる。さらに、投資によって1日のダメージ回復量など、商会の運営力も強化されていく。

 また本作では、特定のクエストをクリアすることでシナリオが進行。哀愁漂う男の物語が落ち着いた筆致で淡々と綴られていく。邪竜を倒した力で他国への侵略を進めるかつての友や、権威が地に落ちて今は貧民街で暮らしている予言者など、さまざまな思惑をもつ人物や勢力が登場するほか、邪竜や魔王という存在に隠された世界の真実に迫っていく展開も興味深い。

裏切られたと感じている者、今度こそ共に約束を果たそうとする者。かつての仲間との微妙な関係も孕みつつ、ヴィンセントは商人として自分の戦いを進めていく

 ゲーム終盤は日数制限がある状態で特定アイテムが実質必須のイベントが続くため、前半のうちに敢えてシナリオを進めず商人を待つ必要があるなど、ゲームバランスの面でやや調整不足も感じるが(筆者は5時間プレイして詰んだため一度最初からやり直している)、それでもハマってしまうくらい経営、物語ともに熱中度は高い。世界創世の謎にまで迫っていく内容は“サーガ”と称するにふさわしく、一人の男と世界の行く末を存分に堪能できる作品だ。

「スポンサーガ」
【著作権者】
ブー太 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.02(13/08/11)

シューティングゲーム

パワーショットで敵を一掃!スコア稼ぎがアツいシューティング「ライブラスフィア」

「ライブラスフィア」

 多くの敵をまとめて倒せる“パワーショット”が特徴の縦スクロールシューティングゲーム。世界観はファンタジー風で、拡散攻撃タイプの“リッカ”と正面集中タイプの“アンバー”からキャラクターを選び、奪われた魔導書を取り戻すため全5ステージのクリアを目指す。

 パワーショットは時間経過やアイテム取得で溜まるゲージがフルになると撃てる強力な攻撃で、リッカは大きな円形のショットがゆっくり前方へ進み、アンバーは一定時間極太のレーザーを発射とそれぞれ特徴的。リッカは敵の密集地帯を狙うことで、アンバーは移動しながら撃つことで、多くの敵を巻き込んで一掃できるのが爽快だ。

 さらに、パワーショットにより複数の敵を同時に倒すことで、獲得スコアが最大16倍までアップする。本作は一定スコアでライフ(残機)が1つ増えるので、クリアのためにもスコアは重要だ。プレイを重ねることで効率よく敵を巻き込めるポイントを見つけて、どんどんスコアを伸ばしていくのが楽しい作品となっている。

リッカとアンバー、それぞれ特徴的なパワーショットでザコを掃討するのが楽しい

 1プレイは15分程度とコンパクトながら、妖精やゴーレム、剣で攻撃してくるボスなど、ファンタジーをモチーフにしたバラエティに富んだ敵とステージを楽しめる。難易度自体は程々だが、ボムなどの緊急回避手段がないためしっかり敵を倒していく必要があり、なかなかの手応えだ。物足りないプレイヤー向けにはHARDモードも用意されているほか、逆に無限コンティニューも可能なので、シューティング初心者からマニアまで幅広く楽しめる作品と言える。

「ライブラスフィア」
【著作権者】
ud 氏
【対応OS】
Windows 2000/XP/Vista/7
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.20(13/11/25)

カスって無敵時間を稼ぎ、ピンチを切り抜けるサバイバル弾幕シューティング「R;STSEY」

「R;STSEY」
“凄いHard”モード

 スコアアタック型の縦スクロール弾幕シューティングゲーム。エンドレスでランダムに登場する敵を倒しながら、ゲームオーバーになるまでのスコアを競う。宇宙空間を舞台に赤、青、緑色の敵が放つ同色の弾幕はイルミネーションのようで、見た目にも華やかな作品だ。

 ショットは標準で自動発射になっており、そのほか低速移動とボムがあるのは弾幕シューティングとして定番の作り。ポイントはボムの効果で、敵弾にカスることで溜まるボムゲージを消費して発動でき、発動時のゲージ量に応じて一定時間無敵となる。カスりでゲージを溜めてボムでピンチを切り抜けるという繰り返しにより少しでも長く生き延びるのがアツく、結果的にスコア向上にも繋がる。

 また、自機のショットや移動速度をカスタマイズできるのも特徴。通常時、低速移動時それぞれについて、ショットの発射速度や拡散度合いなどを自由に変更できる。1画面に同時に出現可能な自弾の最大数は決まっているので、その範囲内で自分のスタイルに合ったカスタマイズが可能というわけだ。

 ゲームの難易度は、Normal、Hard、そして“凄いHard”の3種類。“凄いHard”は高密度の弾幕が画面中を埋め尽くす一見“無理ゲー”だが、その分ボムゲージも一瞬で溜まるため、意外と長く生き延びられるのが面白い。難易度ごとのネットランキングも用意されており、サバイバルとスコア稼ぎに熱中できる作品だ。

「R;STSEY」
【著作権者】
ふし 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.01

ネコを大量発射して敵を打ち破れ!シュールな対戦シューティング「カルテトカーナ」

「カルテトカーナ」

 1対1の対戦を繰り返す全方位シューティングゲーム。主人公の少年“ジュスト”が登校途中に出会ったネコを高速で撃ち出して、同じく牛やヤギなどを使って戦う“デスカルテット”に立ち向かっていく……と、説明すると意味不明だが、実際プレイしても意味不明。さまざまな疑問点をうっちゃりながら何となくノリで話が進んでいく。

 対戦はマップ上で敵に話しかけるとスタート。操作は移動のみで、ネコは向いている方向へ自動連射されるので、これを敵に当ててHPを0にすれば勝利。敵が放つ動物はさまざまな動きをするが、こちらは当たると一発でゲームオーバーとなる。

 ゲームとしてはシンプルだが、大量ショットによる撃ち込み感を手軽に味わえるのが魅力。そして何よりとぼけた台詞回しや、悲壮感あふれるゲームオーバーから一瞬でケロっと蘇る演出、プレイ時間10分の割に無駄に壮大なストーリーなど、わかるようでわからない展開が不思議とクセになる。考えるより感じてほしい作品だ。

「カルテトカーナ」
【著作権者】
デブ太 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.02(13/08/16)

ノベルゲーム

陰謀渦巻く病院からの脱出劇を描いたノベルゲーム「君とサクラを」

「君とサクラを」

 閉鎖環境からの脱出劇を描いた、選択肢のないノベルゲーム。物語は主人公が病院で目覚める所から始まる。自分が不慮の事故により記憶喪失となった“一ノ宮宗助”であることを知らされた主人公は、入院しながら催眠治療を受けることになる。

 院長の大河原や看護師の佐倉麻耶、同じく入院患者の笹川などと交流しながら入院生活を送る“宗助”だが、麻耶にささやかれた『あと五日もしないうちに生死を彷徨うことになる』という言葉や、患者服のポケットに入っていた『この病院から脱出しない限り、君は必ず死ぬことになる』という手紙により、病院に対し疑問を感じることとなる。病院の探索を開始した“宗助”は、恋人を探す少女との出会いや常識では考えられない現象への遭遇などを経て、病院の謎に迫っていく。

看護師・佐倉麻耶の意味深な言動により“宗助”は病院に疑問を抱く
ときに考察し、ときに行動しつつ“宗助”は病院の謎に迫っていく

 そしてプレイを進めることで、プレイヤーはある“繰り返し”を経験することになるが、そのたびに“宗助”の性格が微妙に異なっていることに気付くだろう。病院で行われているおぞましい実験、そもそも“宗助”とは何者なのか。最後まで積み重なっていく謎と伏線が、終盤で一気に収束するさまは圧巻だ。状況が二転三転しつつ、絶妙なタイミングで少しずつ情報が開示されていくのもプレイヤーを飽きさせない。

 また、脱出を試みるうちに出会う病院関係者や患者は、みな濃い人物ばかり。誰が味方で誰が敵なのか、この人を信じてもいいのか……常に緊迫した状況で物語は進んでいく。繰り返される脱出劇の中で変化していく関係、極限状況で結ばれていく絆も本作の見所だ。

敵か味方か、さまざまな人物と関わりつつ物語は進んでいく

 病院を舞台に絶望的な状況を描いた本作は、展開上ショッキングなシーンも少なくない。また、突然シーンが飛んでしまうことがあるなど、システム上やや不安定な部分も見受けられるが(場面転換時、明らかに話が繋がっていない場合は少し前から読み直すとよい)、この手の話が好きなら、そこを押してでも読んでほしい作品だ。プレイ時間10時間ほどの長編だが、気になる方はまずは“一人目の宗助”の結末まで読んでみてはいかがだろうか。

「君とサクラを」
【著作権者】
水無月恵 氏
【対応OS】
Windows 7
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.1(13/08/05)

(中村 友次郎)