クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
許可を取れば利用できるのだけど
~第4章:無断で利用できる著作物を教えて!~
2016年8月3日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“ファンサブって何だろう”の続きとして、今回は“許可を取れば利用できるのだけど”というテーマを解説する。
許可を取れば利用できるのだけど
ここまでの話をちょっと復習してみますね。
創作的に表現された著作物には、お金を生む権利や人格を守る権利が自然発生する。
著作者は、それがどのように利用されるかを決定できる。
で、よかったでしょうか?
はい、そうでしたね。
じゃあ先生、他人の著作物を利用したい場合は、どうすればいいんです?
一番間違いないのは、著作者の許可を取ることです。
デスヨネー。
著作権法63条(著作物の利用の許諾)
著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。
2 前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができる。
(※3~5項は省略)
許可があるなら、堂々と二次利用できますからね。
ただし気をつけなければいけないのは、著作者が著作権(財産権)を持っていない場合があることです。
えーっと確か、著作者人格権は譲渡できないんでしたっけ。
ということは逆に、著作権(財産権)は譲渡できる?
その通り。著作権(財産権)を持っている人のことを『著作権者』といいます。
著作物が生み出された直後は著作者イコール著作権者ですが、著作権(財産権)をすべて譲渡したり相続したりすると、著作者だけど著作権者ではない、という状態になります。
なんだかややこしいなあ。
著作権(財産権)は権利の束なので、一部だけを譲渡できるところがさらにややこしい。
複製権があるからコピーはできるけど、公衆送信権がないからインターネットにはアップロードできない、みたいな状況が起こり得ます。
うわあ……それって、個々の著作物がどういう状況なのかは、それぞれ異なるってことですよね?
もちろん。他にも、著作物を生み出した人が著作者にならない例外もあります。
会社員が業務で著作物を生み出し、会社名義で公表などすると、会社が著作者になります。これを『職務著作』といいます。
著作権法15条(職務上作成する著作物の著作者)
法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
2 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
なるほど、会社が著作者かつ著作権者になる場合もあるんですね。
ちなみに、著作物を会社の外へ業務委託で発注した場合は、職務著作になりにくいので注意が必要です。
あくまで、社員が業務で創作した場合ってことですか。
そう。著作者が複数いる場合もあります。
2人以上の方が共同で創作し、分離して個別に利用できない著作物は、共同著作物になります。
利用には著作者全員の許諾が必要です。
著作権法2条12項(定義)
共同著作物 2人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。
分離して個別に利用できない場合……例えば?
例えば対談です。質問に答え、答えを受けて話が発展し、という会話のキャッチボールであれば、分離するのは難しいですよね。
こういう場合は、会話に参加している全員の共同著作物となります。
会話のキャッチボール、大切ですよね。
映画の著作物は例外で、製作に関わる方が大勢いる場合が多いので、全員が著作者というわけではなく、監督や演出など、全体形成に創作的に寄与した者が著作者になります。
著作権法16条(映画の著作物の著作者)
映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。
また映画だけの例外ですか。
映画の製作には多額の資金が必要でリスクも大きいので、著作権は最初から『映画製作者』に属することになっています。
映画会社や製作委員会のように、お金を出しているところが権利を持つ形です。
著作権法2条10項(定義)
映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。
著作権法29条(映画の著作物の著作権の帰属)
映画の著作物の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。
(※括弧書きと2、3項は省略)
ああ、そういえばアニメの話なんですけど、最近、なんとか製作委員会ってクレジットが入っているの、多いですね。
小説や漫画の原作をアニメや映画にする場合、出版社、映画会社、テレビ局、製作会社、広告代理店など、さまざまな関係企業がお金を出し合い、リスクを分散して製作することが多くなっていますね。
先生、これってもしかして……。
はい、製作委員会に参加している企業すべてが著作権を持っているので、二次利用しようと思ったら参加企業すべての許諾が必要になります。結構大変ですよ。
ぐぬぬ……。
次回予告
今回の続きとして次回は“勝手に利用していいと書いてある”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!