クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
ファンサブって何だろう
~第3章:著作権について詳しく教えて!~
2016年8月2日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“インターネットに流す権利”の続きとして、今回は“ファンサブって何だろう”というテーマを解説する。
ファンサブって何だろう
無許諾動画の話で避けて通れないのが、いわゆるクールジャパンとの関係です。
日本のアニメが海外で広く愛されるようになった要因は、無許諾動画の存在も大きいと言われています。
あ、ネットで知り合ったイタリア人の友だちで、日本のアニメにめちゃくちゃ詳しいやつがいます。
日本語もうまい。
あいつ、間違いなく僕よりたくさんアニメ観てますよ。
ファンサブやスキャンレーションを観て、日本語を覚えたのでしょうね。
ファンサブ? スキャンレーション?
ファンサブは、ファンによるサブタイトルという意味の造語です。
本来は海外のアニメファンが自国語の字幕をつけてネット配信する行為ですね。
スキャンレーションは、漫画をスキャンして翻訳(トランスレイト)するという意味の造語で、海賊版の一種です。
どちらも無許可でやっていることですから、公衆送信権や『翻訳権』などの侵害です。
著作権法27条(翻訳権、翻案権等)
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
あ、無断で翻訳するのもダメなんですか。
そういえば以前、中国語の字幕がついたアニメを観たことあります。
録画を忘れていて見逃したのでつい……これって逮捕されちゃいます?
ストリーミング再生だけなら一時保存とみなされるので、ギリギリ大丈夫です。
よかった……でも後ろめたいから、なるべく公式配信を観るようにします。
ちなみに、海外向けに日本アニメや漫画の公式ネット配信を行っている『クランチロール(Crunchroll)』は、元はファンサブの投稿サイトだったそうです。
日本のアニメ会社やテレビ局と交渉して、非公式映像の検出と削除を行う代わりに公式映像の配信ライセンスを手に入れて、ファンサブからオフィシャルサブへ転換したのです。
へえ! そんな事例もあるんですか。
クランチロールでの公式配信が始まってから、海賊版のダウンロード数は激減したそうです。
ファンサブは翻訳が間違っている場合もあるので、正式版があるならそちらの方がいい、ということなのでしょうね。
そりゃ海賊版より、本物の方が良いでしょうね。
だから、経済産業省の呼びかけで発足した『マンガ・アニメ海賊版対策協議会』では、海賊版の削除活動だけではなく、正規版が配信されているサイトへの誘導も図っているのですよ。
漫画家の里中満智子さんは『漫画の海賊版は紙の漫画をスキャンしたものが多く、そういった意味ではデジタル化が進めば漫画の海賊版も減っていくのではないでしょうか』とおっしゃっていたそうですが、裏を返せば現状は正式版が手に入りづらいから、海賊版が出回ってしまうということなのでしょうね。
※出典:ITmedia eBook USER『海外マンガフェスタ2014 リポート:どうなる漫画の未来――海外のデジタル化への取り組み、その現状』
イタリアの友だちも、今は正規版を観ているのかなあ。
次回予告
今回の続きとして次回は“許可を取れば利用できるのだけど”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!