余裕がないときの心の整え方 特別出張版
イライラしてつい食べすぎる ~食べる瞑想【禅マインドフルネス】
心と身体が健やかになる「あるある」
2016年12月19日 06:20
この集中連載では、医師であり禅僧の川野泰周氏がストレス社会の「あるある」問題の向き合い方について教えてくれる著書『「あるある」で学ぶ 余裕がないときの心の整え方(できるビジネス)』から抜粋した“心が折れるその前に、あなたの心を整える方法”を、心がざわつく年末に、短期集中連載というかたちで忙しいビジネスパーソンの皆さま、家庭を支える主婦の皆さま、将来を模索している学生の皆さまにお届けします。
イライラしてつい食べすぎる
食べすぎは現代病
過食症とは、何らかの精神的ストレスの「はけ口」として食べすぎてしまうことです。食欲コントロールをつかさどる脳機能が破綻し、過食を続けてしまう心の病を言います。一言で過食と言っても、食べすぎを後悔し、自己嫌悪をつのらせた挙句、食べた後に自ら吐くという「過食嘔吐」タイプに移行する人も多いので、太っているか痩せているかで過食症の有無を判断することはできません。
しかし自分には関係ないと思われる人も、食べすぎてはいけないと知りつつ、食欲をコントロールできないと感じた経験は少なからずあるのではないでしょうか?
食行動というのは元来、私たちが生命を維持するために必須の機能ですが、同時に心のバランスを保つための大きな役割を担っています。ですからストレスが蓄積したときの対処法として、「やけ食い」など適正量を超えて食べる行動が選択されやすいのです。
また食文化が豊かな現代では、グルメは私たちにとって重要な趣味の一つともなっています。おのずと増加する摂取カロリーや脂質などが過量になり、メタボリック症候群など生活習慣病と隣り合わせの危険な状況にさらされているのもまた事実です。
ヨーガから学ぶ食べ方
ヨーガを実践している人たちは、性別に関わらず均整の取れた体形をしています。しかし、普通のヨーガは多くのカロリーを消費するものではありません。ただ痩せるだけならプロボクサーのようにひたすら走り込みや、食事を制限したほうが効果的なはずです。
ではなぜヨーガをしている人たちは美しいプロポーションを維持できるのでしょうか? 私は、彼らが「マインドフルに食べる」ことを実践しているからだと考えています。
「マインドフルに食べる」とは、言い換えるなら「全身全霊で食べる」ということです。目の前の食べ物にすべての注意を向けて、一口一口を味わい、大切にいただくのです。そこにはもちろん、食べ物とそれを料理してくれた人、さらにはその原料を生産した人、そしてそれを育んだ大自然への感謝と慈悲の心が存在します。
少ない食事量でも満足
米ブラウン大学の最新の研究では、マインドフルネス実践者はそうでない人に比べ、血糖値を正常にコントロールしやすいという大変注目すべき効力を報告しています。
ストレスがつのって思い切り食べてしまいたいときほど、目の前にある一膳の炊き立てのご飯を、お箸にいつもの量の半分ぐらい取りながら、ゆっくりと噛みしめて、時間をかけて大切に食べてみてください。
その体験はきっと、単に食事量をコントロールすること以上の心の恩恵を、あなたに授けてくれるはずです。
【POINT!】 |
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・一口一口味わいながら食べる |
・少ない食事量でも満足感を得られる |
・血糖値を正常にコントロールできる |
〔実践〕食べる瞑想
忙しい皆さまは、ついつい「早食い」や「ながら食い」になっていませんか? 食べるときも、「今この瞬間」に集中してみましょう。
ここまでに紹介したマインドフルネス瞑想は自分自身に向いていましたが、外部に注意を向ける瞑想もあります。
「マインドフルネス・ストレス低減法」のプログラムでは最初に、レーズン(干し葡萄)をマインドフルに食べることを実践します。私も講演会などで、レーズンをゆっくり観察し、丁寧に味わって食べる「食べる瞑想」(マインドフル・イーティング)をしばしば参加者の皆さんに体験してもらっています。
ただゆっくり食べるだけだと思われるかもしれませんが、多くの人がこれまでに感じたことのない味を知ったり、レーズンのおいしさにはじめて気づいたりといった体験をされています。
注意を向ける対象はレーズンに限らず、たとえば仕事の合間に食べるコンビニのおにぎりで食べる瞑想をしてもかまいません。
3 口に入れてゆっくり味わう
ゆっくりと唇に触れてから口の中へ入れます。舌の上で転がしながら形状や味を口の中のすべての場所で感じ取ります。満を持してゆっくりと噛みしめ、しみ出してくる味を十分に感じます。
4 レーズンを噛みしめる
何度も何度も噛んでから、ようやく飲み下します。そのときの喉を通って胃に落ちてゆく様子までをも感じ取りましょう。