NEWS(12/02/09 16:46)
東大先端研・日本マイクロソフト、障害児の入学試験支援ソフト「Lime」を無償公開
高校や大学の入学試験における“合理的配慮”の第一歩
東京大学先端科学技術研究センター(RCAST、以下、東大先端研)および日本マイクロソフト(株)は9日、障害児の入学試験を支援するソフト「Lime」を無償公開した。
学力があるにもかかわらず、障害のために試験でそれを発揮できない場合は、障害への配慮を行った上で能力を評価するべきだろう。こうした考え方を“合理的配慮(Reasonable Accommodation)”と呼ぶ。国連で採択された“障害者の権利に関する条約”(2006年)でも謳われているほか、日本でも2011年の改正障害者基本法にこの考えが盛り込まれている。
たとえば、肢体の不自由や書字の学習障害などにより、高校や大学の入学試験などで一般の筆記用具を使用することが困難な場合、パソコンなどの代替となる入力手段が用意されるべきだろう。
しかし、障害者にパソコンの利用を許すと、ほかの受験生との公平性の点で問題がある。たとえば、漢字の書き取りが出題された場合、パソコンならば日本語入力システム(IME)で正解となる漢字を検索するといった不正が行われる可能性がある。そのため、高校・大学側に“合理的配慮”への理解があっても、試験でのパソコンの利用を認めるわけにはいかないという実態がある。
そこで開発されたのが、「Lime(ライム)」だ。本ソフトはタスクトレイ常駐型になっており、「Microsoft IME」「Microsoft Office IME 2010」で行った日本語変換作業を、表示された変換候補を含めてすべて記録し、ログとして保存する。あとでそのログを分析すれば、学校側が受験者に不正がなかったかどうかチェックできるというわけだ。本ソフトの導入が進めば、入学試験の際にパソコンを入力ツールとして利用する際の難題を、ひとつ解決できる。
東大先端研と日本マイクロソフトは、これまでも障害のある学生のための大学・社会体験プログラム“DO-IT Japan”プログラムで協業してきたが、今回新たに“学習における合理的配慮研究アライアンス”を立ち上げ、「Lime」の利用促進と入学試験における“合理的配慮”の啓蒙・普及を進めていくという。また、書き取り問題に出題される漢字など、任意の漢字が変換候補に現れないようにするといった「Lime」の機能改善を進めていくとのこと。
「Lime」は、Windows XP/Vista/7および64bit版のVista/7に対応しており、現在“学習における合理的配慮研究アライアンス”のWebサイトからダウンロードできる。なお、ダウンロードの際はメールアドレスなどの登録が必要。
- 【著作権者】
- 東京大学 先端科学技術研究センター、DO-IT Japan 事務局、日本マイクロソフト(株)
- 【対応OS】
- Windows XP/Vista/7/Vista x64/7 x64
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.0.0(12/02/09)