レビュー

IMEで変換できる漢字を小学校の指定した学年で習う範囲内に限定「キッズIMEスイッチ」

筆記障害を抱える学生の受験機会を広げる“合理的配慮”のためのツール

「キッズIMEスイッチ」v1.0

 「キッズIMEスイッチ」は、日本語入力システムで変換できる漢字を、指定した学年までに修得する漢字のみに制限できるソフト。Windows 8/8.1に対応するフリーソフトで、“DO-IT Japan”のWebサイトからダウンロードできる。なお、ダウンロードの際はメールアドレスなどの入力が必要。

 障害を抱えた生徒のなかには、PCに頼らなければ普段の勉強ができない生徒が少なくない。たとえば肢体不自由で鉛筆で文字を書くのが困難な場合、キーボードで入力が可能なPCは筆記具として必要不可欠だ。

 しかし、普段の勉強でPCを利用することは認められていても、定期試験や入学試験となると『PCで不正ができてしまうのではないか』という懸念から受け入れられにくいのが現状なのだという。そうした問題を解決する一助としてリリースされたのが、「キッズIMEスイッチ」だ。

 「キッズIMEスイッチ」は、Microsoftの協力のもと、東京大学先端科学技術研究センターで開発されたツール。タスクトレイアイコンのメニューで学年を指定すると、それまでに習う漢字のみが「Microsoft IME 2012」の変換候補に現れるようになる。学年は小学校第1学年から第6学年までが選択可能。

無効にして変換した場合
“1年生”にして変換した場合。小学生向けに習っていない漢字を除いたドキュメントを作成する場合にも使えそうだ

 「キッズIMEスイッチ」の目的は、日本語入力システムの機能を制限することで、鉛筆で受験する一般の生徒と受験でPCを利用する生徒との不公平を改善し、受験でPCを筆記用具として利用することへの理解を得ること。「キッズIMEスイッチ」を導入するだけで公平な受験が実現されるわけではないが、『PCで不正ができてしまうのではないか』という疑念の一端を解消する効果はあるのではないだろうか。

 そもそも試験とは知力・学力を計るのが目的であり、鉛筆で字が書けるかどうかは本質的な問題ではない。であれば、鉛筆で字が書けない生徒には、鉛筆以外の筆記手段が用意されてもよいだろう。そういった無理のない範囲で障害者への配慮を行うことを“合理的配慮(Reasonable Accommodation)”と呼ぶが、“DO-IT Japan”では「キッズIMEスイッチ」のそのほかにも、同様の目的をもつツールとして「Lime (ライム)」をリリースし、筆記をPCに頼らざるを得ない生徒たちに対する“合理的配慮”の実現をバックアップしている。

ソフトウェア情報

「キッズIMEスイッチ」
【著作権者】
Barrier-free Research、RCAST、the Univ of Tokyo、DO-IT Japan
【対応OS】
Windows 8/8.1
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.0

(樽井 秀人)