REVIEW(11/08/29)

被曝による健康へのリスクを推定「一般公衆を対象とした放射線量の推定・評価」

外部・内部被曝量や防護方法などさまざまデータを入力して年間被曝量を算出

「一般公衆を対象とした放射線量の推定・評価」v2.20「一般公衆を対象とした放射線量の推定・評価」v2.20

 「一般公衆を対象とした放射線量の推定・評価」は、外部・内部被曝などによる健康へのリスクを推定できるソフト。Windowsなどに対応する非営利目的に限り利用可能なフリーソフトで、編集部にてWindows Vistaで動作確認した。ベクターのライブラリページからダウンロードできる。

 作者によると、本ソフトは“原子力安全委員会指針集 第13版”などを参考に作成されているという。しかし、作者はソフトウェアの開発や放射線防護のプロではないため、間違いがある可能性もあるとのこと。計算結果はあくまでも参考程度に受け止めよう。

 空間放射線量や経口摂取した放射性物質の種類・量などを入力することで、自然放射線量などを考慮してミリシーベルト(mSv)単位の年間被曝量を計算し、ガンの発生リスクの増加量などを推定できる。また、放射性物質を含むプールや海などで泳いだ際などの水浴による実効線量を計算し年間被曝量などに反映することも可能。

 画面は、計算・推定結果を表示するエリア、外部被曝のデータを入力するエリア、内部被曝のデータを入力するエリア、放射性物質への防護環境を入力するエリア、水浴に関するデータを入力するエリアに分かれている。また、計算・推定結果を表示するエリアの“リスクバー表示”プルダウンリストで“ON”を選択すると計算した被曝量を生涯受けた場合の死亡リスクをほかの死因のリスクと比較できるグラフを表示可能。

 外部被曝のデータを入力するエリアでは、マイクロシーベルト単位の空間線量やその線量の場所に何日間いたか、その場所にいた際の屋外・屋内にいた割合、その場所の自然放射線量を入力する。空間線量は一定である場合のほか、最大値と最小値を入力して値が直線的に減少した場合や、指数関数的に減少した場合なども入力可能。

 内部被曝のデータを入力するエリアでは、摂取した放射性物質の種類をプルダウンメニューから選び、一度に摂取した量、食物や水などの摂取した方法、1年間に摂取した回数を入力する。また、摂取した人間の年齢を成人、4歳以下、1歳以下から選択する。

 放射性物質への防護環境を入力するエリアでは、被曝した際に口や鼻から放射性物質を吸い込まないように、布などで防護した場合の防護方法をプルダウンメニューで入力する。防護方法は、“濡れた女性用ハンカチーフ”“けばの長い浴用タオル”“木綿シャツ”などから選択可能。また、屋内に退避した場合の建物の種類も“木造家屋”“大きなコンクリート建物”などから選択できる。

 水浴に関するデータを入力するエリアでは、[計算フォーム表示]ボタンを押すと表示される別ダイアログで、プールや海などで泳いだ際の被曝量を入力する。別ダイアログでは水辺の空間線量や水に含まれる“ヨウ素131”“セシウム134”といった放射性物質の量のほか、水辺に滞在した時間と遊泳した時間、誤飲した水の量、水中でけがをした回数、年間の水浴回数を入力して[算定]ボタンを押せば、水浴での被曝量を計算可能。また、[エクスポート]ボタンを押すと全体の年間被曝量へ加算できる。なお、水浴による被曝量は子供を想定して計算され、成人の場合よりも安全を重視した算定結果が出力される。

 すべてのデータを入力してメインのダイアログにある[算定]ボタンを押すと、年間被曝量が計算され、ガンの発生リスクの増加量などが推定される。

お詫びと訂正:記事初出時、外部被曝のデータを入力するエリアにミリシーベルト単位で空間線量を入力するとお伝えしましたが、正しくはマイクロシーベルト単位でした。また、水浴に関するデータは成人が水浴した場合の数値ではないものの、成人も対象とした算定結果が得られます。お詫びして訂正いたします。

【著作権者】
やまぐち かずお 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows Vistaで動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト(非営利目的のみ)
【バージョン】
2.20

(長谷川 正太郎)