#モリトーク

第42話

フリーソフトの使い方と楽しみ方

 ファイル暗号化ソフトの定番である「アタッシェケース」を紹介した先週の第41話では、定番フリーソフトの作者が抱える負担についても併せて取り上げた。とくに最近は、IPAやJPCERT/CCなどの国内機関がオンラインソフトの脆弱性を大々的に報告するようになったため、早急な対応が求められる場合もあり、個人作者の負担は以前よりも増しているだろう。

 また、セキュリティソフトの誤検知問題によって、全公開ソフトの更新を休止せざるをえなかったINASOFT・矢吹拓也氏のケースも、定番フリーソフトの開発を継続する上での負担を知る機会として、しっかりと受け止めたいところだ。

「アタッシェケース」

 そこで、フリーソフト作者の負担を減らす意味でも、ユーザーである私たちは今改めて極々当たり前のことを復習しておく必要がある。それは、フリーソフトは基本的に無保証であり、ユーザーサポートも提供されないということだ。もちろん、不具合や要望の報告を積極的に引き受けているフリーソフト作者も多く、そのやり取りがオンラインソフトの魅力でもあるが、それは作者の好意であり義務ではない。

 たとえば「アタッシェケース」の作者は、不具合や要望の報告に対してオープンなほうだと思われる。逆に言えば、オープンであるが故に軽率な内容の報告が増えてしまったのかもしれない。だからこそ、不具合や要望を報告することと、修正や改良を要求することは区別しなければならず、そのオープン性を活かすも潰すもユーザー次第だ。

 まずは、どうしてもサボりがちになってしまう、“Readme”などに書かれた利用規約を必ず読むことから始めてみてはどうだろうか。フリーソフトが当たり前のように存在するのであれば、ユーザーも当たり前のことをすべきであろう。本コラムの第16話でも取り上げたように、フリーフォントを利用する場合にはとくにそれが重要になってくる。窓の杜ではソフトやフォントを紹介するときに、注意しなければならない利用規約を記事内に書くようにしているので、ぜひそれも参考にしてほしい。

 最後に筆者個人の考えを述べておこう。フリーソフトとは、不具合や使用条件などがあることを前提に工夫しながら利用するものであり、それがフリーソフトの楽しみ方なのではないだろうか。不具合もなく、機能も充実し、使用条件も緩いソフトのほうがよいに決まっているが、完璧なものがないからこそ、理想に近いソフトを探すことも楽しみのひとつとなるはずだ。

(中井 浩晶)