#モリトーク
第64話
Operaユーザーの憂鬱
(2013/7/9 10:25)
「Opera 15」の正式版がリリースされた先週2日、Opera劇場の新たな幕も切って落とされた。本コラムの第59話・第60話でも述べたように、筆者は「Opera 15」の登場を好意的に捉えている。ただしそれは、非メインユーザーの筆者が客観的に「Opera 15」を見ているからであり、長期間にわたって「Opera」を愛用してきたユーザーは心穏やかではないかもしれない。
「Opera 15」では、Webレンダリングエンジンが“Presto”から“Blink”に変更されただけでなく、それまで利用できた機能の多くが非搭載となり、完全に別のWebブラウザーへと生まれ変わった。つまり、「Opera 12」から「Opera 15」へのアップデートは、「Opera」の既存ユーザーにとってWebブラウザーの乗り換えに等しく、気楽にアップデートするというわけにもいかないだろう。
Opera社はそのことを考慮し、「Opera 15」へのアップデートを強制せず、「Opera 12」の提供も継続することを発表している。「Opera 12」にセキュリティ上の脆弱性が発見された場合、「Opera 15」とは別路線のアップデートが実施される見込みだ。実際、「Opera 15」の公開から2日後に、「Opera 12」シリーズのv12.16がリリースされている。
また、「Opera 12」から「Opera 15」へアップデートする場合には、ユーザープロファイルのほとんどが自動で引き継がれる仕組みになっているほか、分離されたメールソフト「Opera Mail」をインストールすれば、「Opera 12」のメールデータが自動でインポートされる。その上、「Opera 15」をインストールしても「Opera 12」が残るため、両バージョンを併用することも可能だ。ちなみに、開発版である「Opera Next」も併用できる。
既報の通り、「Opera 15」以降のアップデート計画には、「Opera 12」に欠かせなかった機能の再登載が盛り込まれている。そのため、しばらくは「Opera 12」をメインに「Opera 15」と併用しつつ、納得できる段階になったら本格的に移行するといった使い方がベストであろう。高速リリースサイクルにより、「Opera 15」以降のバージョンアップは数週間おきに実施されるため、移行のタイミングも多い。
Webブラウザーの基本中の基本であるブックマーク機能が存在しないことについては、Opera社内でも議題になっているようで、Opera開発者の一人が個人用のウィッシュリストにブックマークを挙げているという。またOpera社は、ブックマークが必要なユーザーのために、「Bookmarks Manager extension」と呼ばれる拡張機能を「Opera 15」の正式リリースに合わせて公開している。
その一方で同社は、他社のWebブラウザーはもちろん、自社の「Opera 12」を模造することもないとしているので、今後の「Opera」が旧バージョンに近づくことは期待せず、新作のWebブラウザーとして、その価値を見出していく必要があるだろう。そして、その答えのひとつがブックマークを統合した“スピードダイヤル”機能ということだ。