#モリトーク

第65話

新生Operaのブックマーク不要論

 新Webレンダリングエンジン“Blink”の採用で生まれ変わった「Opera 15」には、一般的なブックマーク機能が存在しない。これは、Webブラウザーの新たな形を模索するOpera社が打ち出した、ひとつの答えかと思われた。ところが一転、同社は7月10日付のブログ記事にて、ブックマーク機能の復活をユーザーに向けて約束したのだ。また同時に、ブックマーク機能を搭載しなかった理由も語られている。

 10万人以上の「Opera」ユーザーを対象としたOpera社の独自調査によれば、ブックマークの利用に関して特定の傾向が見られ、多くのユーザーがお気に入りのWebサイトを常に開いたまま、それらをセッションとして一元管理するという。また、“スピードダイヤル”機能の利用率も高いとのことだ。つまりOpera社は、ブックマーク機能がそれほど使われていないと分析している。

 この傾向は「Opera」特有のものかもしれない。「Opera 12」以前の旧シリーズには、セッションを管理する機能が標準で搭載されており、その保存と復元が容易になっている。他社製Webブラウザーの場合、直前のセッションを復元させることは可能なものの、柔軟なセッション管理を望むなら拡張機能が必要になる。ちなみに、同じくBlinkを採用する「Sleipnir」には、複数のタブをグループで管理する機能が搭載され、その用途は旧「Opera」のセッション管理機能に通じるものがある。

 「Opera 15」には今のところ、旧シリーズに相当するセッション管理機能が搭載されていないため、Opera社の主張とは矛盾する部分もあるが、現在開いている全タブをスピードダイヤル内にグループ化することはできる。もちろん、本格的なセッション管理機能が今後のバージョンアップで追加される可能性もあるだろう。

「Opera 12」のセッション管理機能
グループ化に対応する「Opera 15」のスピードダイヤル機能

 ブックマーク機能は、お気に入りのWebサイトを登録する目的だけでなく、Webページを後で読むためのメモとして活用する場合も多い。Opera社の調査にもその傾向が現れているようで、[Ctrl]+[D]キーによってブックマークをルートフォルダへ登録するパターンが多いという。そこで「Opera 15」には、それ専用の“スタッシュ”機能が用意された。

 このように理屈上では、ブックマークがなくてもそれほど困らない。Web検索への依存度が高まっていることを考えれば、なおさらブックマークは不要なのかもしれない。ただし、スピードダイヤル機能の特性上、ブックマークレットだけは対応できない。Opera社は開発ブログにて、ブックマークレットを「Chromium」互換の拡張機能へ変換してくれるWebサービスを紹介することで、それも解決可能だとしている。

 最後に、新スピードダイヤルのコンセプトを確認しておきたい。それは、複数の機能がアドレスバーへ統合されたように、そのほかの操作・結果もWebレンダリング領域に集約させたいというものであり、その発想は理にかなっていると言える。しかし、ブックマークを非搭載としたことのインパクトが強すぎたためか、ユーザーに受け入れてもらう段階にさえも至らなかったのだろう。

 Opera社の発表によれば、ブックマーク機能が「Opera」に復活する時期はまだ確定していないとのこと。その上で、「Opera 12」を模造しないことも再び強調しており、「Opera 12」のそれとは違った形でブックマーク機能を実装するために、それなりの開発期間が必要なのかもしれない。これまでのOpera社は数々の先進的な機能を実現させてきただけに、ブックマーク機能が復活する日まで想像を膨らませて待つとしよう。

(中井 浩晶)