週末ゲーム
第553回
自由な育成が魅力のシミュレーションRPG「トリーシャと契約の英雄王!」
装備品なし、ステータスはお金で買う!自分好みの部隊を作ろう
(2014/3/14 11:52)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、シミュレーションRPG「トリーシャと契約の英雄王!」をご紹介する。
本作は同人ゲームとして頒布されており、執筆時現在はダウンロード販売サイトや委託販売店で購入可能。作者サイトでは体験版も公開されている。
基本は王道のファンタジー系シミュレーションRPG
「トリーシャと契約の英雄王!」は、ファンタジー世界を舞台にしたシミュレーションRPG。主人公の冒険大好き少女トリーシャが、ある国の王女ルーンを偶然助けたことから、2つの国の争いに傭兵として巻き込まれていく。
システムの基本はオーソドックスなターン制シミュレーションで、主人公を含む6人の味方ユニットを操作し、武器や魔法で敵を攻撃して倒していく。特定の敵を倒す、特定の位置までユニットを移動させるなど、各ステージに設定された条件を達成すればステージクリアだ。ユニットは戦闘で敵に倒されても次のステージでは復活。倒されたことによるペナルティもさほど大きくはないので、あまり神経質にならず気楽に進められる。
ステージの開始前とクリア後にはシナリオパートもあり、物語が進んでいく。ステージをクリアするごとに、キャラクターの強化などを行うギルドパートに戻り、キャラクターを強化したら次のステージへ進む……というのがゲームの流れだ。
ストーリーの序盤は柔らかいタッチで描かれたキャラクターに似合うコメディテイストが多く、随所に笑えるネタが散りばめられている。その後は二国の戦争とその裏にある陰謀、そしてルーンとの友情を描くシリアスなストーリーへと繋がっていく。
シンプルながら自由で多彩なキャラクター育成
本作の最大の特徴は、キャラクター育成の自由度の高さだ。最初に6人のジョブをファイター、アーチャー、ナイト、シーフ、マジシャン、プリーストの6つの中から選択する。これにより初期にもつスキルが決定されるが、ジョブチェンジはギルドパートで何度でも自由に行うことが可能。
装備品の概念はなく、キャラクターの成長はステータスとジョブ能力の強化により行う仕組み。ステータスはHPやMP、STRやDEXなどがあり、ステージ攻略で得たお金を支払うことで好きな値を強化できる。回避力に特化したキャラクターを作りたければAGI、魔法を強くしたいならMAG、移動できるマス数を伸ばしたければMOVと、お金がある限り自由にキャラクターを育成でき、あえて1キャラクターだけを強くすることも可能だ。
お金は戦闘中に使える特技と魔法の購入にも使う。特技や魔法はお金があれば覚えられるが、ジョブが合わないと使用はできない。また覚えられる数に制限があるので、何でもできるキャラクターを作るのは難しい。
もう1つの成長要素となるのが、ステージ攻略で得られるAP。各キャラクターのジョブごとに与えられる経験値のようなもので、ステージクリアでもらえる基本値に加え、戦闘で多くの敵を倒すなどして貢献したキャラクターにはボーナスが与えられる。攻略中に敵に倒されたユニットは、戦闘で得たボーナスAPが消失するものの、基本値は得られる。
APは特技・魔法の強化と、各ジョブに設定されたパッシブスキルの強化に使う。キャラクターやジョブのレベルの概念はないので、お金と同様に消費するポイントという扱いだ。特技・魔法はAPを消費してレベルを上げ、効果を強化できる。ただし魔法はレベルが上がると消費MPが増えるものもあるので注意が必要だ。
パッシブスキルは、恒常的に発動して能力を底上げするスキル。ファイターなら物理攻撃アップ、シーフなら物理回避力アップといったように、ジョブの特徴を出す。APを消費することで最大でレベル10まで強化でき、レベル3以上にするとそのパッシブスキルを他のジョブでもセットできるようになる。たとえばファイターとシーフのパッシブスキルを強化すれば、物理攻撃と物理回避が得意なキャラクターを作成可能だ。
残る成長要素が、クラスチェンジだ。基本の6系統のジョブには、それぞれ上位クラスが設定されており、少しゲームを進めるとクラスチェンジが可能になる。上位クラスを選ぶ際には2つの傾向を選択でき、それによってステータスの増減値が決定される。ほかには各ジョブ固有のジョブ特性(パッシブスキルと似ているが他ジョブでのセットはできない)が強化される。
また上位クラスには新たなパッシブスキルがあり、強化することで基本クラスにはない能力が得られる。ただし上位クラスにチェンジすると、下位クラスには戻れない。下位クラスで強化中のパッシブスキルは、クラスチェンジした時点で上げられなくなるので、有効なパッシブスキルは最高まで上げてからクラスチェンジするのがセオリーだ。
長い説明になってしまったが、要は稼いだお金とAPを使って好きなようにキャラクターを育成できる……という話だ。武器で悩むことも、使いやすいキャラクターほど先に成長して強さに波がある部隊ができたりという心配はなく、遊んでみると実にシンプルで理解しやすい。
クラスチェンジした後もジョブチェンジは自由にできる。ただし基本ステータスや特技・魔法はそのまま引き継がれるので、物理系と魔法系をいきなりスイッチするのは難しい。あとは複数のクラスを平均的に上げるのも、1つのクラスを集中的に上げるのも自由だ。何なら全員を魔法系にしてしまっても構わない。
ボリュームもたっぷりでやり込みも楽しい
戦闘パートで特徴的なのは攻撃の射程で、敵の中には近接武器なのに広範囲が攻撃できたり、異様なほどロングレンジの弓兵がいたりする。敵の移動範囲と攻撃範囲は敵をクリックすれば表示されるので、チェックしながら慎重に進んでいくとよい。
システム面では“覚醒”という要素がある。これはHPを25%消費することで、各ジョブに応じた特殊能力が次に敵と交戦するとき効果を発揮するというもの。初期クラスでは攻撃力や回避力がアップする限定的な効果だが、上位クラスでは絶対回避やMP消費なしといった強力なものが出てくる。リスクを上回るメリットがあるので、ここ一番の戦闘で活用すればぐっと楽になる。
ステージはメインが10章以上で各章ごとに2ステージほど。加えて、最上位クラスの開放や強力な魔法の入手ができるサブステージが20近くある。ゲーム全体での難易度は低めに抑えられている印象で、筆者はシミュレーションゲームが不得意(好きではある)なのだが、成長のコツを掴んでからはほぼ詰まることなく最後まで進めた。もし途中で行き詰まってもサブステージでお金やAPを稼げるので、時間をかければクリアはできるはずだ。
プレイ時間は筆者の場合、メインストーリーとサブステージを合計して約25時間。おそらくかなり遅い部類だが、早い人でも15時間程度はかかるのではないだろうか。なおクリア時にもデータをセーブし、引き続きキャラクターを育成できる。
基本のゲームシステムがシンプルで難易度も低めになっている分、自由度の高いキャラクター育成を存分に楽しめる。筆者は最初にHPを上げまくって死なないようにしつつ、攻撃力を上げてゴリ押しでクリアした。しかしAGIやDEXを上げると1戦闘で最大4回攻撃ができたりなど、戦闘に爽快感が出てくる。最終的には全クラスと全ステータスを最強まで上げたくなる、やり込み好きな人にはぴったりのゲームだ。
ソフトウェア情報
- 「トリーシャと契約の英雄王!」
- 【著作権者】
- Marinecat
- 【対応OS】
- Windows XP/7/8(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
- 【ソフト種別】
- ダウンロード販売 1,365円(税込み)など(体験版あり)
- 【バージョン】
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