週末ゲーム

第621回:大河ドラマのように重厚な物語が描かれるSRPG「グレイメルカ」

第621回:大河ドラマのように重厚な物語が描かれるSRPG「グレイメルカ」

キャラクターごとの固有の能力や武器の相性など、戦闘面も非常に充実

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、ゲーム投稿イベント“ニコニコ自作ゲームフェス5”にて“窓の杜賞”に選出したシミュレーションRPG「グレイメルカ」を紹介しよう。

 ゲームクリアまでのプレイ時間は40~50時間程度、仲間ユニットは総勢40人ほどにもなる大作だが、ゲーム開始時に難易度を3つから選択できる点や、戦闘中における豊富な補助情報の表示、また作中の固有名をいつでも振り返ることができるシステムなど、幅広いプレイヤーが楽しめるようプレイアビリティにも気を遣われている作品となっている。

歴史の中における“一つの時代”を体験する大作SRPG

ゲームのタイトルにも冠されるグレイメルカを使用した戦争。この戦争が、後世に歪んだ影響を残すことになる
ゲーム本編は、フバーライン出身のとある二人の物語から始まる

 本作「グレイメルカ」は、大河ドラマのように、歴史の中における一つの時期に起こった一連の戦乱や出来事にフォーカスした物語が特徴的なSRPGだ。

 物語の舞台となる大陸中央に位置する“ロマテア帝国”の皇帝“ウォレア”は、ある時、隣国“フバーライン”への侵攻“ロマテア・フバーライン戦争”を開始する。当初はロマテア有利で進んでいた戦争ではあるが、奇襲によりロマテア軍は壊滅的な打撃を受けてしまう。その敗走に激怒したウォレアは、戦争における禁忌ともいえる作戦を発動してしまう。

 その作戦とは“グレイメルカ”と呼ばれる毒をフバーラインに面する川一帯に流し、フバーライン軍のみならず、無関係な国民に対しても無差別的な攻撃を加える非道な作戦であった。これによる混乱に乗じて、戦争はロマテアが勝利。以降、ウォレアは大陸における恐怖の存在として語られていく。しかし、この作戦は後世に繋がる強い遺恨も大陸に残してしまう。

 ゲーム本編の物語は、ウォレアの次代皇帝である“レシウル”の治世から開始となる。グレイメルカにより汚染されたフバーラインで生まれた“クナタ”と“カタリ”は、ロマテア帝国への復讐のため、ウォレアの跡継ぎである皇帝レシウル暗殺を目論み帝国に侵入する。しかし、そこで期せずしてレシウルの長男であるロマテアの王子“サーシン”を助けたことをきっかけとして、彼らの思いや、そして運命さえも動かされていくことになる……。

帝国に侵入したフバーライン人であるクナタ(画面上部)とカタリ(画面下部)は、山賊に囚われたロマテアの王子サーシンを偶然見つける
サーシンとの出会いが、彼らの運命を大きく揺り動かすことになる……

随所にプレイアビリティへの配慮が伺えるゲームシステム

 ゲームシステムとしては、マス目で作られたマップを攻略していく形式だ。基本的な戦闘のルールは、武器や魔法の相性を考慮しつつ敵を倒していくものとなる。たとえば近接攻撃の武器は、“剣”、“斧”、“槍”という3すくみとなっており、相手の装備している武器によって命中率が大きく変動する。相手の持つ武器に対して有利な武器で攻撃することがセオリーとなるのだ。

戦闘は仲間たちを操作し、マス目で区切られたマップを攻略していく形式だ
キャラクターが攻撃や、宙返りをしてのアクロバティックな回避などで動き回る戦闘画面も見ていて楽しいものになっている

 また、関係の深い仲間が3マス以内にいると発生する能力上昇効果である“支援”や、仲間ごとに持つ固有の“スキル”を活用することで戦いを有利に進めることができる。たとえば料理人である“カンツラ”のスキル“料理”は、料理を食べさせたキャラクターの次の攻撃が必ず必殺攻撃になるというスキル。また、弓使いである“カピン”の“ヤケ撃ち”は、敵の一人をランダムに選び、相手がどこにいても射撃するというもの。これら個性豊かなスキルを上手く組み合わせることで効果的に攻略を行なうことが可能だ。

ほとんどの仲間に固有のスキルが用意されている。さまざまなスキルを組み合わせて有利に戦おう
単独では役に立たないように思えるスキルでも、仲間同士のスキルの組み合わせによっては意外な効果を生むことも……

 本作の特徴としては、こういったゲームシステムを基盤としつつ、その上でプレイアビリティに配慮した機能が随所に見られるところだろう。たとえば戦闘マップにおけるステータス情報の表示については、キャラクターを選択した後、移動範囲内にいる敵と戦闘した場合に与える予想ダメージが表示されるなど、戦闘判断に役立つ情報が一見で分かるようになっている。

 その情報を踏まえて敵に攻撃を行なう時においても、戦闘相手にカーソルを合わせている時にマウスホイールを動かすことで武器の変更を行なうことができる。武器にはさまざまな特殊効果を持つものも多く、色々な武器に持ち替えて戦闘結果を見比べることもやりやすくなっている。

マップ上に表示されている“19×2”といった数字が、戦闘した場合の予想ダメージだ。この場合、攻撃が命中した場合に19ダメージを与える攻撃を2連続で繰り出せることがわかる
戦闘に入る前に武器の持ち替えを行なうことができる。攻撃や命中の値を見比べて、一番有効な攻撃を行なおう

 また、物語を楽しむという側面では、作品中に登場する多くの国家や人名の情報が随時更新されていき、それらをいつでも参照できる“情報”システムも特徴的だ。物語が進むごとに増えていく情報を振り返るために最適な機能となっている。

 加えて、キャラクター同士の会話文においては、台詞の表示を“吹き出し”と“フレーム”という2つのインタフェースから選ぶことができる。デフォルトは吹き出しとなっているので、プレイヤーの好みによって変更してみよう。

会話の途中で緑色で表示されている人物名や国の名前は、情報としてストック・更新されていき、情報システムを呼び出すことでいつでも参照することができる
フレームでの会話文章の場合、これまで掲載した画像の吹き出しとは異なった印象になる

長きに渡る戦乱の行く末を見届けよう

 本作は、長い歴史の中の一時期に起こった戦乱の流れを追っていく物語ではあるが、それと同時に、登場人物ひとりひとりの“生きる理由”といった部分もしっかりと描かれている。

 今回は、そんな物語の序盤である第一章から紹介していこう。第一章では、ロマテアへの報復から始まったクナタとカタリの物語、そして決断が描かれる。

かつてクナタとカタリの上官であったが、すぐに追い抜かされ二人の部下になった“スポポンド”。なんとも印象的な風貌だが、不思議と人を惹きつける誠実な性格だ

 ロマテアの王子サーシンを助けたクナタとカタリは、彼の心に何かを感じたことから、いますぐ帝国に報復することではなく、まずは皇帝レシウルに仕え内部から様子を見ることを選んだ。その能力から異例の抜擢を受けた二人は、ついには将軍にまで上り詰めることになる。

 そこに迫るのは、砂漠の魔法王国“ドルテ”。その王である“バルナク”が率いる精鋭の魔導師部隊“デト・マギ”の大軍。急遽、国境の砦に救援に向かった二人だが、彼らには、レシウルにも話していないある秘密があった……。

ドルテ王のバルナク(画面下部)と、その息子であるロフォス(画面上部)。彼らが率いる精鋭の魔導師部隊がクナタとカタリに襲い掛かる
レシウルからの信頼を受け将軍となったクナタとカタリは、ロマテアとドルテの激戦に向かうが……

 第二章以降は登場人物や国家も増えていき、さまざまな策謀が交錯していく。強国としての地位を築いたロマテアだが、周辺諸国との諍いが絶えないものとなっており、常に先が気になる物語に仕上がっている。

 第二章以降の主人公は、レシウルによって皇族と同じ優遇で育てられたフバーライン人“ハルカ”。ハルカの親友でありレシウルの次男である王子“デミライト”との関係から始まる物語は、次第に大きなものになっていく。

第二章序盤では、ロマテア国内の治安維持を行なうハルカとデミライトの戦いが描かれる
とある作戦中に村人を虐殺したことにより、帝国軍から追放されていた騎士“フェクテン”。この不気味な男は、ハルカとデミライトに何をもたらすのか
没落した王室“デト家”を復興するべく帝国に服従する“ファテナ”(画面上部)。バルナクと並び称される優れた魔導師だ
雪に覆われた小国コートマの名将“クレンフゥ”(画面上部)。エキセントリックな性格だが、金の鎧で覆われた歩兵軍団“ゴールドロード”を率い、帝国に対して一歩も退かない戦いを展開する

 このゲームは、大河ドラマのようなゲームシナリオだけではなく、戦場を彩る数々の音楽や、キャラクターたちのグラフィック、バトルエフェクト、そして重要な場面のイベントイラスト……などなど、すべてが制作チームによる自作のものとなっていることも特徴的な部分だろう。

 本作の物語は、グレイメルカの残した爪跡と、その“復讐”もひとつのテーマとして描かれている。変えることのできない過去の歴史を前にして、今を生きる人々はいかなる決断をするのか。歴史上のある時期に起こった一連の出来事と、そこで生きた人々の思いが描かれる大作SRPGを、ぜひプレイしてほしい。

ソフトウェア情報

「グレイメルカ」
【著作権者】
シニカルとレトリック
【対応OS】
Windows 98/2000/Me/XP/7
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.0(15/11/28)

(もぐらゲームス:poroLogue)