週末ゲーム
第620回
ヘンテコ操作の機体を操るSFマウスアクションゲーム「プラネットハウル」
操作の異なる3つの機体に順応していくのが楽しい作品。宇宙が舞台の物語も魅力
(2015/12/11 12:45)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、宇宙を舞台にした全方位アクションシューティングゲーム「プラネットハウル」を紹介しよう。
3つの機体をマウスで操る全方位アクションシューティングゲーム
「プラネットハウル」は、マウス操作で機体を操りさまざまなミッションをこなしていく、ミッションクリア型の全方位アクションシューティングゲーム。全3章構成で、特筆すべきは章(Chapter)ごとに扱う機体の操作方法が全く異なること。それぞれの操作方法も独特で、“新たな操作性に順応していく感覚”がアクション面におけるキーポイントだ。
衛星軌道都市“アトラス”で暮らす主人公の獣人“未執行青少年13号”と、人類が絶滅したはずの地上から来たという人間の少女“スノウ”の出逢いから展開していくストーリーも見所。何故か獣人達の暮らす世界となっているアトラス、計画外で生まれた子供は成人までに“市民ポイント”を稼がなければ処分されてしまうという“未執行青少年制度”など、SFらしい世界観も目を惹くものとなっている。
とはいえハード一辺倒というわけではなく、さまざまなエピソードにより描かれる、キャラクター達のユーモアあふれる掛け合いも楽しい作品。フサフサの獣人達を中心としたイラストも愛らしく、物語を賑やかに演出する。プレイヤーの選択により物語が分岐するマルチシナリオも特徴だ。
『いやこれ無理』から気付けば自在に機体を扱えるように。“新しい乗り物の乗り方を覚える”感覚を堪能
本作に登場する3つの機体は設定上のさまざまな事情により、いずれも『なんでこんなに扱いにくいんだ!』と嘆きたくなるような独特の操作方式となっている。最初は機体を真っ直ぐ飛ばすのも苦労するが、丁寧なチュートリアルと段階を踏んで課題が増えていくミッションを通して、徐々に操作に習熟していける仕組みだ。
最初に乗ることになるChapter 1の機体は、“勝手にマウスカーソルの方向へ加速し続けるのを、ブレーキなどを駆使して制御する”というもの。Chapter 2の機体はマウスの左右ボタンが2つの後部スラスターに対応しており、片方を押すと旋回、両方同時押しで前進となる……と言葉で言うと簡単そうだが、実際は慣性が付く上にボタンへの反応が敏感で、少しバランスを崩しただけで機体がクルクルと回転してしまう。
とはいえいずれもピーキーなりに操作と機体の挙動が感覚的に結び付いていて、思い通りに操作できないもどかしさはあっても、慣れれば何とかなりそう、という感触もある。本格的に“ヤバい”のは最終章であるChapter 3で、操作方法は伏せるが筆者はチュートリアルですらまともに操作ができず、明後日の方向へ飛んでいく機体を眺めながら『脳トレかよこれ……』と頭を抱えたことをお伝えしておく。
だがそれすらもミッションを3つ4つクリアする頃には順応しており、むしろ『この程度のことが何故できなかったのか』というのを可笑しく感じてしまうほどだった。例えるならば“自転車に乗れるようになると、これまで何故乗れずに自転車を倒してしまっていたのかわからなくなる”という感覚が近いだろうか。そんな“新しい乗り物の乗り方を覚える”感覚を、1章ごとのプレイ時間1~2時間程度という比較的短いスパンで、次々に味わえるのが本作の醍醐味だ。
実際の所、どの機体が扱いやすいかなどは個人差もあるためあくまで筆者の主観込みでの紹介となるが、ざっくりとしたイメージが伝われば幸いだ。そして機体の操作に慣れた頃には、デブリ迎撃や民間人救出、ドローンを倒しつつ施設制圧など、宇宙SFらしいミッションの数々が待ち受けている。さまざまな武装やレーダーを駆使して全方位から迫り来る敵を撃退する戦闘も、いかにも宇宙戦という趣でテンションが上がる。
苦手な操作をフォローする段階的な機体カスタマイズが充実。マニア向けの“ハードモード”も
操作の難しい機体を操るのが楽しいゲームではあるが、プレイヤーの腕前に応じたサポート機能も充実している。ミッション開始前には機体のカスタマイズができ、ここでは武装の変更のほか、移動用のパーツを変更したり、性能補助パーツを追加することが可能。たとえばChapter 1の機体なら、ブレーキを効きやすくしたり、旋回性能を上げることでマウスカーソルのある方向へ向きを変更しやすくなる。苦手な部分からフォローする、段階的なカスタマイズが可能というわけだ。
こうした便利なパーツや一部の強力な武装を装備すると、ミッションクリア時に記録される“機体評価”にマイナスが付く。とはいえ機体評価によりストーリーが分岐するようなことは一切ない。また、ミッションに失敗した際のリトライ時にはミッションの難易度自体を下げることも可能。こちらも記録には残るがメインシナリオの分岐に関わることはなく、ストーリーをメインに楽しみたい人でも安心だ。
一方、より歯応えを求める場合は“ハードモード”でプレイすることも可能。戦闘ミッションなら敵の数が増える、資源回収なら流れてくる資源の速度が上がるなど、ミッションごとにさまざまな形で難易度が上昇する。
ちなみに、Chapter 1の開始時から装備しているブレーキは機体評価を下げるパーツとなっており、高い機体評価を目指すならいずれは“卒業”すべきパーツだ。ブレーキを外した時は一時的に急加速するブースターや逆噴射するバックブースターを駆使して機体を制御することになるのだが、一部ミッションのハードモードではこれすらも使用不能に。止まることも進むことも自由にできない機体を方向転換だけで操るという、別次元の難しさと達成感を味わうことができるだろう。
そのほかのチャレンジ要素としては、各種裏設定などを読むことができる“ライブラリ”も搭載。ほとんどは普通にプレイを進めることで内容が解放されるが、一部はミッション中に特定条件を満たすことで解放される。見なくてもメインストーリーの理解に支障はないが、SF的な設定やキャラクターの掘り下げ、クスリと笑えるちょっとした小咄などが詰まっており、いわゆる実績機能のような形でやり込みを楽しめるようになっている。
物語、アクションの両面で『あの時ああしていれば』を叶えるタイムシフト機能
本作のストーリーはミッション中の会話のほか、さまざまなエピソードの積み重ねで進行。エピソードは各ミッションの下にある“イベント”欄から閲覧でき、過去のミッションのイベントもいつでも回想できる。ミッションとイベントがタイムラインとして並ぶメイン画面は機能的でわかりやすい。
そして、このタイムラインを利用した便利な仕組みが“タイムシフト”だ。プレイ中いつでも、タイムラインの上端にある“Day ○○”の表示をクリックすることで、その時点に時間を巻き戻すことができる。
セーブデータを細かく分けて保存したりしなくても、タイムライン上に表示されるシナリオの概要を見つつ、ストーリーが分岐する場面へ戻って選択をやり直すといったことが容易にできるわけだ。また、『今ならもっと高評価を狙えそうなので前のミッションからやり直したい』というときにも利用できる。
さらにはオートセーブにも対応しているため、セーブ・ロードをあまり細かく意識せずプレイすることが可能。シナリオの高速スキップやバックログ表示にも対応しており、物語をストレスなく存分に楽しめる環境が整っている。
選択によって大きく分岐する物語。マウスアクションゲーム好きはもちろんSFファンにもお勧め
スノウから“ウォー”という名前を貰い、彼女を助けることを決意する主人公。だが非正規市民の存在が認められないアトラスにおいて、それは自らをも危険に晒すことを意味していた。市民ポイントの獲得に固執する未執行青少年の“4号”、とある計画を進めるアトラス市長などさまざまなキャラクターの思惑にウォー達は翻弄されていく。
そしてChapter 1の終盤以降は物語が大きく展開。アトラスとその足元にある大地――氷に閉ざされた惑星ハウルの真実に迫っていく。ときにはプレイヤーが重大な決断を迫られることになり、これによってウォーとスノウ、そしてアトラスとハウルの行く末は大きく分岐する。ちなみに本記事では便宜上このように紹介したが、実の所“スノウと出逢わない物語”すら用意されているのだ。
SFマインドに満ちた物語に、宇宙ものならではのミッションの数々、そして使いこなすことが楽しさに繋がる機体など、世界観とアクションが噛み合ってワクワクする体験を生み出している「プラネットハウル」。『マウス操作のアクションゲームが好き』『SFが好き』あるいは『獣人キャラが好き』……このあたりのいずれかでもピンと来る方なら、ぜひ触れてみてほしい作品だ。
ソフトウェア情報
- 「プラネットハウル」
- 【著作権者】
- SmokingWOLF 氏、PERYKARN 氏
- 【対応OS】
- Windows XP/Vista/7/8/10
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.23(15/12/10)