年末企画

編集部員の“今年のお気に入り”

今年1年間で各編集部員がもっとも気に入ったソフトを紹介

 オンラインソフトの情報を、毎日お届けしている窓の杜。編集部では世界中で公開されるさまざまなオンラインソフトの情報を求めて、日夜ネットを徘徊している。そうして見つけたオンラインソフトを紹介し、読者のみなさんと感動を共有できるのが何よりの喜びだ。ここでは、今年窓の杜で取り上げたオンラインソフトのなかで、各編集部員やライターがもっとも気に入った“今年のお気に入り”ソフトをご紹介していこう。

フォルダーを開いていきなりタイプでファイル検索「ExpIncr」

「ExpIncr」

 PCを長く使っているといつの間にか大量のファイルがたまってしまい、いざ必要になった際に目的のファイルを探すのが困難になっていく。過去、この問題を解決するために、古くはGREPソフト、その後「Google デスクトップ」が登場し、現在はOSに全文検索機能が組み込まれている。しかし、進化したファイル検索はいつの間にか筆者にとってオーバースペックになってしまっていた。

 保存しているフォルダーはわかっている。ファイル名も自分独自のルールで命名しているので、だいたい予想は付く。こうなると全文検索は必要ないが、大量のファイルからファイル名の部分一致で検索を行いたい。それもとにかく面倒な操作なしに。

 「ExpIncr」は、これまで出会った中でもっともシンプルな検索ソフトだ。もはやユーザーインターフェイスはない。エクスプローラー上でローマ字をタイプするだけでフォーカスが該当するファイルへジャンプしてくれる。目的のファイルでなければショートカットキーで次の該当ファイルへジャンプ。“Migemo”を利用しているので日本語ファイル名も検索できる。

 「ExpIncr」を常駐させてから、ファイル検索のストレスは大幅に軽減された。全文検索は最後の手段。普段の検索は極力シンプルに行いたい筆者に究極のシンプルさを提供してくれた「ExpIncr」には感謝している。

(長谷川 正太郎)

顔を突き合わせて遊ぶ楽しさを再認識させてくれるアクションゲーム「3P」

「3P」

 ここのところ、ゲームの楽しみ方はざっくり大きく分けると2通りあると感じることが多い。ひとつは、作り手が提示するハードルを乗り越えるために試行錯誤する楽しみ方。もうひとつは、何人かで集まって盛り上がるためのツールとしての楽しみ方だ。

 筆者が長年楽しんでいるアナログゲームは、両方の楽しみかたを同時に堪能できる作品が多い。複数人で同時に遊ぶアナログゲームの場合、前者に偏るとゲームについていけなくなる人が増え、後者に偏ると物足りなく感じる人が増える、といった傾向になるので、ちょうどよいバランスになった作品=面白い作品になるように思われる。

 「3P」は、そんなアナログゲームの傑作を彷彿させるような盛り上がりを作り出せる作品だ。内容は、3人のプレイヤーがそれぞれ別のキャラクターを操作し、協力してステージ上の仕掛けを操作しつつゴールを目指すパズルアクションゲームとなっている。

 最大の特徴は、ローカルプレイのみで遊べるので実際に3人集まる必要があること。実際に顔を突き合わせながら遊ぶと、各人の反応をすぐに直接感じられるので、すばやい応答が成されて思わぬ形で場が盛り上がる機会が格段に増える。

 本作の場合は、3人が相談しながら協力して進めていかないとクリアはおぼつかないバランスなので、自然とコミュニケーションが活発になる。その結果、単に複数人でゲームを遊ぶ場合と比べると盛り上がりやすい仕組みになっているのだ。

 筆者が20年以上アナログゲームで遊んでいる理由の半分は友人たちとワイワイ盛り上がる楽しさを味わうためなのだが、本作でも同じくらい濃密な時間が過ごせるはず。正月などに気の合う仲間と集まって遊んでみてほしい。

(橋本 崇史)

質・量ともに驚くべきクオリティのオープンソースフォント「Source Han Sans」

「Source Han Sans」

 自分は今年一年専らAdobeがGoogleらと手がけたオープンソースフォント「Source Han Sans」に夢中だった。「Source Han Sans」は日本・中国・韓国で使われている文字のみならずラテン文字やギリシャ文字などもOpenType規格の限界まで収録、更に環境・用途ごとに利用しやすく分類されたパッケージを擁する未曾有のオープンソースフォントだ。これだけの規模で統一されたデザインのフォントが一挙に提供されるのは、有償のフォントでもなかなかないだろう。

 「Source Han Sans」は、それ単体で極めて高いレベルにある素晴らしいフォントであり、筆者も日常的に利用させて頂いている。個人的にはディスプレイ上での表現以上に、印刷物へ大きなサイズで出力した際、画線の均質さによる読みやすさと、均整かつ美しいデザインとが両立されていることに感動させられる。このようなフォントが柔軟性の高いライセンスを採用し、オープンに提供されていることにはただただ驚くばかりだ。

 窓の杜でも既に「Source Han Sans」をベースにしたフォントを多数紹介しているが、いまだ取り扱えていないものや海外で公開されているものを数えるだけで「Source Han Sans」がフォントを制作されている方々に与えた影響の大きさが窺われる。そうしたフォント制作活動への影響はもちろんのこと、DTPからデジタルデバイスに至るまで、フォント、それも特に多言語化への要求が強い分野において、本フォントが持つ可能性は極めて大きい。

 このフォントは、海外製のデジタルデバイスを購入したら漢字の表示がおかしい、複数の言語が混在する文書を目にした時におかしなグリフが混ざっている、そんな経験を過去のものへと変えてしまうかもしれない。

(市川 祐吉)

太っ腹!? 「Professional」相当機能がタダになった「Visual Studio Community 2013」

「Visual Studio Community 2013」

 オンラインソフト作家にとって今年一番のニュースは、「Visual Studio Community 2013」の無償提供ではないだろうか。「Visual Studio 2013 Professional」相当の機能がタダで利用できるようになったのだから驚きだ。

 正直なところ、「Visual Studio 2010」で「Standard」がなくなってから、泣きながら自腹で「Professional」を購入していた筆者にとっては少し複雑なニュースだったが、次にリリースされる「Visual Studio 2015」でも「Community」の提供が予定されているとのことなので素直に喜びたい。

 これまで無償版の「Visual Studio Express 2013」で我慢していた開発者にとってのメリットとしては、まず開発ターゲットごとに「for Desktop」だの「for Windows」だの「for Web」だのと個別に開発環境をインストールしなくて済むということが挙げられる。デスクトップアプリも、モバイルアプリも、Webアプリも、これからは「Community」1本で済む。

 さらに、これまで利用できなかった拡張機能が利用できるようになるのも魅力だ。これらを活用すれば、「Visual Studio」の生産性をこれまで以上に高められるだけでなく、「Visual Studio」を自分好みにカスタマイズして、楽しく利用できるようになる。窓の杜でも「Visual Studio」用の拡張機能は過去にいくつか扱っているので、興味があれば検索してみてほしい。

 「Visual Studio Community 2013」は、業務利用でこそライセンス上いくつか留意すべき点があるものの、趣味でオンラインソフトを作るだけならば、それが有償アプリであろうと無償アプリであろうとまったく問題なく利用できる。まだ触っていない開発者は、正月休みにでもぜひ試してほしい。

(樽井 秀人)

外的要因によって価値が高まった「TweetDeck」

 Twitter APIの仕様が改訂されたのは2012年8月。それはサードパーティ製Twitterクライアントにとって厳しい内容であり、将来を不安視した開発者が撤退する例も少なくなかった。そして今年1月頃、その不安は現実のものとなり、「Janetter」をはじめとする定番のサードパーティ製Twitterクライアントが次々に規定のユーザー枠を使い果たす。

「TweetDeck」

 筆者は「Janetter」のユーザーだったため、それ以降、公式クライアントである「TweetDeck」を保険として併用することにした。「TweetDeck」は「Janetter」と比べて機能的に優れている部分もあれば劣る部分もあり、未読関連の機能やフォントの設定では「Janetter」が勝っている。

 その後、「Google Chrome」が“DirectWrite”に対応したことをきっかけに、同アプリ版の「TweetDeck」をメインで使うようになった。フォントの描画品質が大幅に改善したからだ。ちなみに、それまでは「Janetter」に「MacType」を組み合わせて利用。

 このように、それ自体に惹かれて使い始めたわけではないものの、結果的に公式クライアントに落ち着いた。しかし、サードパーティ製クライアントが終息しつつあることに寂しさも感じるので、落ち着いてしまったと表現したほうがよいかもしれない。

(中井 浩晶)