使ってわかるCopilot+ PC

第55回

写真の「明るさ調整」はAIで進化! 写真の中で照明を置きなおす「フォト」アプリの新機能を使ってみた

3つのライトと環境光を自在に操作、色味や明るさも自由に調整

「フォト」アプリの「リライト」機能の画面

写真の光を再調整

左上が元画像。右上は下から光をあて、左下は右から、右下はが左から光をあててみた。光源が新たに追加されているように見えると思う。

 「Copilot+ PC」の新たなAI機能として、「フォト」アプリに「リライト」機能が導入された。「リライト」というと書き直しの方の「Rewrite」を想像してしまうが、ライトをやり直す意味の「Relight」である。

 なお7月の実装時点ではQualcomm製CPU「Snapdragon X」搭載機のみ対応とされており、IntelやAMDのCPUを搭載した製品にも近日展開予定とされている。今回は「Snapdragon X」搭載機で本機能を試していく。

「リライト」で何ができる?

 本機能は、既に撮影された写真に対して、写真の中の世界に新たな光を当て直すAI機能だ。こう説明してもピンと来ない方が多いと思うので、実例を見ていただこう。

 まずは適当な画像を「フォト」アプリで開く。そして左上にある[編集]ボタンをクリックして編集モードを立ち上げ、画面上部に並ぶ機能リストから[リライト]をクリック。

「フォト」で写真を開いた後、左上の[編集]をクリック

 画面右側に「リライト」の機能が表示され、写真には[Softbox]という効果がかけられている。全体的に明るくなった感じだろうか。

 これが何をしているかというと、写真の空間に3つのライトを用意し、画面中央に設定された丸のマークに向けて光を照らしている。写真は実際には奥行きのある空間なので、その中にライトを配置できるわけではないのだが、AIが画像を解析して、いい感じに光を当てたように処理してくれる、という機能だ。

[リライト]を使用中の画面。これは無加工の写真

 よりわかりやすく、使用するライトを1つだけにして、ライトの明るさも初期値より明るくして、いろんな方向から光を照らしてみよう。ライトを下から当てると中央の人物が明るく映るが、周囲は暗めになる。

下から光を当てる

 続いて上から当てると、道路の路面にしっかりと光が当たり、周囲がぐっと明るくなった。上からの光だから地面にいっぱい光が当たるよね、というAIの判断だろう。

上から光を当てる

 次は左から。人物の左側だけが明るくなり、右側は陰になる。また背景の建物も、左向きの壁には光が強く当たり、右向きの壁は比較的暗い。左から光を当てたら、写真の中の建物はどう反射するか、AIが考えた結果の映像だ。

左から光を当てる

 これを応用すると、『写真の右上に太陽がある設定』として、右上の端に強い光を用意すると、写真全体に明暗がつき、右上から光が当たったような照らし方になる。これで「リライト」が何をしているかはイメージが掴めたと思う。

右上の端から光を当てる。右上に太陽があるような雰囲気になる

使いこなせば面白い効果が

 設定できるライトは3つで、それぞれ光の明るさと柔らかさ、色を設定できる。これを調整することで、ただ光の方向が違うだけでなく、夕方っぽい雰囲気にしたり、特定の場所を目立たせたりという効果を作れる。

 効果を簡単に体験できるよう、いくつかのプリセットも用意されている。夕方っぽい雰囲気にする[ゴールデン アワー]や、世界の色味をがらりと変える[サイバーパンク]など、今までにない感じで写真加工ができて面白い。

プリセットの[ゴールデン アワー]を適用
[サイバーパンク]はずいぶん雰囲気が変わる

 もちろんプリセットが万能な訳ではなく、元の写真との相性はある。淡い色味の風景写真だと、[クラシック ポートレート]はとても雰囲気が出るのだが、[サイバーパンク]は壊れたカメラで撮ったような違和感が出てしまう。

風景写真に[クラシック ポートレート]はうまくマッチする
[サイバーパンク]はそのままでは違和感が大きい

 あとは3つのライトのほかに、[アンビエント]という項目がある。これは写真全体に当てられる光で、環境光などと呼ばれるもの。明るさと色が指定できるので、この色と明るさを調整するだけで写真の雰囲気を簡単に変えられる。

[アンビエント]で赤い環境光を設定

 なかなか使いこなすのは難しいが、うまくやれば芸術的な写真加工もできて面白い。処理もかなり軽く、処理にかかる待ち時間はほとんどない。NPUを活用して高速化したおかげなのだろう。「Copilot+ PC」ならこの機能が追加料金なしで使えるというのは、なかなか贅沢だと思う。

アーティスティックな雰囲気の写真も作れそう
NPUもしっかり活用し、ローカル処理しているのがわかる
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/