レビュー

ヒロインの顔が“落描き”!? 絆を深めることで“本当の顏”が見えてくる学園恋愛サイコノベル「chaos pastel orange」

人の顏がクレヨンの似顔絵に見える少年を主人公に、幼馴染みとの恋や不可解な事件を描く

「chaos pastel orange」

 「chaos pastel orange」は、人の顔が落描きに見える少年を主人公としたノベルゲーム。本作は掲示板“製作速報VIP(クリエイター)@VIPサービス”にてスタッフが募られ2013年に初版がリリースされた作品で、現在はv1.1を“ふりーむ!”からダウンロードできる。

 本作の主人公は、17歳の少年“高西和樹”。ある事故をきっかけに中学校入学の頃より前の記憶を失っているが、面倒見のいい幼馴染みの少女“橙ヶ先色葉”や友人達に囲まれ、賑やかな日々を送っている。しかし彼はもう1つ、人の顏があるべき場所に“幼稚園児がクレヨンで描いたような、いびつな似顔絵”が貼り付いて見えるという症状を抱えていた。

 表情が見えないことから人との距離感を掴みにくいというコンプレックスを抱えつつも、学園祭の準備を手伝ったりと日常を過ごしていく和樹。しかし下駄箱に入れられていた“おまえの罪を思い出せ”という警告文を皮切りに周囲で不可解な現象が起き始め、徐々に大きな事件へと発展していく……。

ことさら異様な色彩で顔が描かれる少女“水城葵”。和樹と過去に因縁があるようだが……
和樹の周囲で、徐々に不可解な現象が起き始める
顔が見えないという設定を活かした、印象的な構図のイベント絵が多いのも本作ならでは

 奇抜な設定とインパクトのあるビジュアルがまず目を惹くが、お互いに負い目があり一歩を踏み出せない幼馴染み同士の微妙な距離感を描く恋愛ものとしても、事件の謎を追いつつ自らの心の奥に潜む真実に迫っていくサイコサスペンスとしても読み応えのある作品。相手と絆を深め、記憶を取り戻すことにより文字通り“本当の顔”が見えてくるという仕掛けも、主人公とプレイヤーの同調を高め、物語を読み進めるモチベーションへと繋がっている印象だ。

 ストーリーは基本的に一本道だが、混乱した記憶を整理するシーンなどでは選択肢が連続で表示。正しい選択肢を選び続けることで真相に近付いていく。ショッキングで血なまぐさいシーンもある作品だが、とはいえシリアス一辺倒ではなく、日常シーンの軽妙な掛け合いも見どころ。ちょっとした会話が伏線になっていたりとシナリオも練られている。独特の設定と物語が密接に絡み合い、キャラクター達の因縁と共に解きほぐされていくカタルシスを堪能できるノベルゲームだ。

記憶を整理し、自らの過去に向き合うことで事件の真相に迫っていく

ソフトウェア情報

「chaos pastel orange」
【著作権者】
studio えんじゅ
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.1(14/03/14)