#モリトーク

第39話

活動の場が生まれ、失われた2012年

 本コラムは基本的に、窓の杜で前週に掲載された記事を話の種として、記事では伝えられなかった情報を紹介している。またそれと同時に、注目度の高い記事を優先的にピックアップするようにしているので、本コラムが今年一年で取り上げた話題を振り返れば、あくまで筆者の目線ということになるが、2012年に起こったオンラインソフト界の出来事を整理することにつながるのではないだろうか。

“Windows ストアアプリ”の特長を活かしたペイントアプリ「Lazy Paint」

 2012年はオンラインソフトにとって新しい活動の場が生まれた年であり、活動の場が失われた年でもあった。その新しい活動の場とは、本コラムでも関連した話題を多く取り上げている、Windows 8の“Windows ストアアプリ”だ。Windows 8が発売されてから2カ月しか経っていないため、その数はまだ多くないものの、窓の杜では“Windows ストアアプリ”のレビュー記事などを順調に掲載している。

 “Windows ストアアプリ”が盛り上がるには、これまでのオンラインソフト文化がそうであったように個人作者の活躍が不可欠だと、筆者は考えている。油絵風の作品を描けるペイントアプリ「Lazy Paint」など、“Windows ストアアプリ”の特長を活かしたアプリも徐々に登場しているが、今のところ大手企業による有名ソフトのほうが目立つため、来年は“Windows ストアアプリ”にとって勝負の年となるにちがいない。

貴重な国産Twitterクライアントとして期待が集まる「Janetter」

 一方、活動の場を失うことになったのがTwitterクライアントだ。Twitter社が提供するAPIの仕様変更により、サードパーティがTwitterクライアントの開発へ新規参入するのは困難になった上、既存のTwitterクライアントも開発を終了したり、開発方針を変更したりと、縮小傾向にある。

 またダウンローダーも、活動の場を失ったソフトのひとつと言えるかもしれない。違法ダウンロードが刑事罰化されたことで、ダウンローダー自体は違法ではないものの、新規にダウンローダーを制作しようと思う人は減っているだろう。しかし、その需要は増している印象もあり、ユーザーのモラル次第では今後も健全なソフトとして残る可能性はある。

 Twitterクライアントとダウンローダーの例はそのルールや法律が変わったため、やむをえない面もあるが、不本意に活躍の場を失った例がほかにあったことを忘れてはいけない。「いじくるつくーる」や「すっきり!! デフラグ」でお馴染みのINASOFT・矢吹拓也氏は、セキュリティソフトの誤検知に幾度も悩まされた結果、全公開ソフトの更新休止を決断した。

 最後に筆者個人の話をすると、本コラムが始まった2012年は筆者にとって活動の場が生まれた年となった。今年3月に掲載した第1話では、本コラムのタイトルロゴにまつわる裏話を取り上げている。その裏話には続きがあり、いつも使用しているシンプルなタイトルロゴとは別に、スペシャルエディションも用意していた。それが今回使用しているタイトルロゴというわけで、タイトルロゴで始まった本コラムの2012年をタイトルロゴで締めくくりたい。

(中井 浩晶)