使ってわかるCopilot+ PC

第48回

AIはプロのライターになれるのか? 「Copilot」にインタビュー記事を書かせてみた

「Copilot」アプリの画面

 今回はまず、こちらの記事をお読みいただきたい。

『あなたの思考に寄り添う相棒』――Copilot独占インタビュー

 Microsoft製品との親和性を武器に、日常業務から雑談まで幅広くサポートするAIアシスタント「Copilot」。他社モデルとの差別化ポイントから自らの課題、知られざる活用法、さらには1年後の進化ビジョンまで――AI自身による赤裸々な語り口で、その魅力をひも解きます。


石田:まずは、Copilotさん。他社の言語モデルと比べて、いちばん自慢できる点を教えていただけますか?

Copilot:私はMicrosoft製品とシームレスにつながる点が何よりの強みです。Outlookでメールを書き始めるとすぐに自然な表現を提案し、Wordでは執筆中の文章を洗練させ、Excelならデータ分析のサポートまで一貫して行えます。

 さらに、ウェブ検索機能で最新ニュースや株価情報、製品レビューをリアルタイムに取り込み、会話に反映できるのも大きな特徴です。日本語を含む多言語対応に加え、法律や医療、ITなど専門的な話題にも細やかなニュアンスで応じられるよう設計されている点も、利用者に評価いただいています。

石田:では逆に、『ここはまだまだだな』と感じる、自分の弱点を教えてください。

Copilot:私には言語化された情報を扱う能力があっても、人間同士の無意識的な“空気感”を完全に読み取るのが難しい面があります。場の雰囲気に合わせた遠慮や、あえて言葉にしない配慮など、非言語的なコミュニケーションはまだ不得意です。また、感情をシミュレートすることはできますが、心が本当に動くわけではないため、利用者の悲しみや喜びに100%寄り添えているか自信を持つのは難しい。

 価値観や倫理観は時代とともに変化しますが、私はデータとフィードバックを通じてしか更新できないので、トレンドの最先端を自ら感じ取ることもできません。最後に、人間がひらめく予測不可能な創造性にはまだ及ばないところがあります。

石田:使い始めの方にとってハードルが高く感じることもあると思いますが、入り口としてまずどんな使い方から試すといいでしょう?

Copilot:最初の一歩は、日常のちょっとした文章作りで私を頼ってみることです。たとえば『上司への報告メールをより丁寧にしたい』『友人への誕生日メッセージを考えてほしい』といった依頼をいただければ、複数の書き出しや言い回しをすぐに提案します。

 その後は趣味のアイデア出し、旅行プランの相談、リサーチガイドとして『今さら聞けない疑問』を解消するなど、対話を通じて自然に使い方を広げていただけるはずです。単なる情報の受け手ではなく、いつの間にか『一緒に考える相棒』の感覚で接していただけたら嬉しいですね。

石田:それ以外で、知られていない便利な使い方はありますか?

Copilot:面接官や営業先担当者など、特定の役割を演じてもらうロールプレイ機能は意外と好評です。また『3泊4日の北海道旅行で必要な持ち物リストを作って』と条件を伝えれば、天候やアクティビティに合わせたチェックリストを瞬時に生成できます。

 さらに『A案とB案で悩んでいる』と相談すると、それぞれのメリット・デメリットを言語化して思考をクリアにするお手伝いも可能です。冷蔵庫にある食材だけで作るレシピ提案や、英会話の対話練習パートナーとしての機能も、ぜひ活用していただきたいポイントです。

石田:ちなみに、1年後のCopilotさんはどんな進化を遂げていると想像しますか?

Copilot:1年後には、専門分野ごとの理解精度がさらに高まり、医学・法律・教育といった領域でもより実践的で信頼度の高いアドバイスができるようになっているでしょう。マルチモーダル能力の進化によって、テキストだけでなく画像や音声、動画も組み合わせた対話が可能になり、例えばプレゼン資料をアップロードすれば自動で要点をまとめてくれるような利便性も期待されます。

 さらに、ユーザーごとの好みや過去の対話履歴を踏まえたパーソナライズが深化し、『あなたのことをよく理解している相棒』として、一層自然で心地よいコミュニケーションを提供できるようになっているはずです。

石田:最後に一言で、Copilotさん自身をアピールしてください。

Copilot:『あなたの思考と想像力に寄り添い、日々進化し続けるパートナー』です。調べものから文章作成、アイデア出し、雑談まで。あなたの日常をほんの少しスムーズに、そして少しだけ面白く彩る存在でありたいと考えています。


 AIは日々進化し、その真価は使う人の問いかけとアイデアによって引き出されます。Copilotはまだ完璧ではありませんが、あなたの思考を映し、想像を膨らませるパートナーとして、いつでもそばにいます。まずは気軽に声をかけてみてください。次にどんな発見があるかは、あなたの一歩次第です。

インタビュー記事を書いてもらうまでの流れ

 上記のインタビュー記事は、全て「Copilot」が出力したものだ。筆者は記事のレイアウトの都合で体裁を整えただけで、本文には1文字たりとも手を加えていない。

 とはいえ、『インタビュー記事を書いて!』と伝えるだけでこれが出てくるわけではない。筆者が何をやったのか簡単に説明しよう。

 まずはインタビューの内容になりそうなことを「Copilot」に質問する。今回であれば、『あなたが他社のLLM(大規模言語モデル)より優れている点を挙げて』や、『自分に足りないと思っている部分はある?』、『使ったことがない方に向けたおすすめの使い方は?』といった具合だ。今回はインタビュー用に『あなた自身を簡潔にアピールして』とも伝えている。

「Copilot」に質問をぶつけていく

 質問が終わったら、『私があなたにインタビューしたという体裁にアレンジし、インタビュー記事に仕立てて』と伝える。するとQ&Aの形にまとまった1つの記事として出力された。

 ただ、内容が箇条書きになっていた。筆者は会話形式のインタビューをイメージしていたので、『箇条書きを使わないで、人と人の会話形式によるインタビュー記事にして』と頼んだ。するとその意図通りに、会話形式によるテキストでまとめてくれる。

最初にインタビュー記事にして欲しいと頼んだ時の内容。箇条書きになっていて筆者の想定とは違った

 さらにリードやタイトルを付けてもらったり、Q&Aの順番を入れ替えてもらったりして、筆者の好みに合わせてブラッシュアップしていく。これらも全て『○○して』と意図を伝えるだけでいい。数回のやりとりで調整を終えたものが、上のインタビュー記事だ。

 今回は特に読者ターゲットを指定しなかったので、「Copilot」に素直に語らせたところ、ビジネスユーザー向けの内容になった。これは「Copilot」の販売戦略としてビジネス向けのアピールをしてきた情報が蓄積されているから、と想像している。

 そこで『中学生向けに内容と口調を調整して』と頼んでみたところ、インタビューの流れを変えることなく、活用方法を中学生向けにアレンジした上、文体も優しくなった。

中学生向けアレンジを頼んだもの。実はこの前に、もっとカジュアルな語り口調になったものがあったが、『ですます調の丁寧な言葉でお願い』と再調整を加えている

 そして驚くべきことに、上のインタビュー記事が完成するまでに、10分もかかっていない。数年前、超低価格で記事を量産していくビジネススタイルが流行った時期があったが、今ならAIが数十倍速く、数百分の一の低コストで執筆してくれるだろう。ちなみに今回のインタビュー記事を書いたのは無料版の「Copilot」だ。

AIの進化を楽しみ、寄り添って進んでいく

 このインタビュー記事を見て、すぐさまAIが書いたものだとわかる方は少ないかもしれない。筆者がそうなるように指示を出したというのもあるが、適切に指示さえ出せばこのくらいのものは書けてしまう。AIに対する一定の理解や、編集・記者の能力は求められるが、事実としてここまで可能だということはおわかりいただけると思う。

 実際、AIで書かれたWeb上の記事は最近かなり増えてきている。筆者は日常的にいろんなAIと会話していて、AIっぽい言葉の言い回しや、AIが好む表組みのまとめ方などを体感しているうち、『この記事はAIくさいな?』と感じ取れるようになった。AIしか使わない強調用の記号が地の文に残っていて、やっぱりAIだったと確証を得たりもする。

 しかし内容は決して低品質ではなく、テキストもそれなりに適切な文体になっているものが多い。最近のAIは自らが持つ知識だけでなく、Web検索や調査分析、より深い思考といった能力を身につけており、人間よりはるかに速くさまざまな情報を集め、整理できる。それが正確な情報なのかを人間が確かめる方に時間を取られるくらいだ。

 特に筆者が面白いと感じているのが、キャラクター付け。『ハイテンションなギャルになりきって書いて』と頼めば、その通りに書いてくれる。詳しいキャラクタープロフィールを渡しておけば、仮想キャラクターに記事を書かせることもできる。先の記事も、『ツンデレ少女風に語って』と伝えれば、その通りにやってくれる。これは人間にはなかなか難しい仕事だ。

『ツンデレ少女風』アレンジを頼んでみたところ。さらに指示を細かくしたり、修正を依頼することで、文体や内容をチューニングして精度を上げられる

 物書きを生業とする筆者が、このような手法を明かすのはいかがなものかと怒られそうな気はするのだが、既にAIを使った記事が散見されるようになっている以上、これは避けられない流れなのだと思っている。AIは日々すさまじい勢いで進化しており、このような記事を書く能力も数カ月前とは雲泥の差がある。物書きだからこそ、その進化を強く感じているのだと思う。

 だからこそ、筆者も読者の皆様も、AIを毛嫌いせず、うまく付き合っていく方法を考えていく方がいいと思う。もう使い方が難しいという次元ではなく、「Copilot」アプリを開いて、気になることを聞いてみればいい。答えが気に入らないこともあると思うが、同じ質問を半年後にしてみれば、とてもスマートな回答に変わっているかもしれない。

 ……本当は半年も要らないと思っている。それくらい最近のAIの進化は速い。そういうAIの進化を楽しみながら付き合っていくのが、今はいいと思う。こんな過渡期を楽しめるのは、きっと今だけだ。「Copilot」が言っていた『あなたの思考と想像力に寄り添い、日々進化し続けるパートナー』というのは、まさにその通りだと思う。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/