使ってわかるCopilot+ PC

第49回

686gで安価でも性能は十分か? 「Surface Pro 12インチ」を実機検証

Windowsの電源設定でパフォーマンスの最適化も

「Surface Pro 12インチ」

よりモバイルに適した小型筐体

 「Surface Pro 12インチ」が6月10日に発売された。従来モデルは「Surface Pro 13インチ」なので、1インチ小さくなる。本体重量は686gで、別売りの着脱式キーボードを合わせると1,026g、約1kgとなる。

 12インチはノートPCとしてはかなり小型だが、タブレットPCとしてはほどよいサイズ。「Surface」シリーズ伝統のアルミ削り出しの堅牢なボディは、比較的重くなるのがネックだが、このサイズになればモバイル用途にも困らない。

 ただ、PCとして見た場合に、性能面に心配が残る。小型軽量にした分、排熱処理は難しくなり、性能を落とすのが最も手っ取り早い対応だからだ。実際のところどうなのか、実機をお借りして検証してみた。

8コアのSnapdragon X Plusを搭載

 まずは本機の主なスペックを確認しよう。

スペック
CPUSnapdragon X Plus(8コア)
GPUQualcomm Adreno GPU(CPU内蔵)
NPUQualcomm Hexagon(45TOPS、CPU内蔵)
メモリ16GB LPDDR5x
ストレージ512GB(UFS)
ディスプレイ12型光沢液晶(2,196×1,464ドット/10点マルチタッチ)
OSWindows 11 Home
汎用ポートUSB 3.2 Type-C×2
カードスロットなし
映像出力USB 3.2 Type-C×2
無線機能Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4
有線LANなし
電源別売り(USB PD)
その他フルHDフロントカメラ(Windows Hello対応)、1,000万画素リアカメラ、デュアルマイクなど
本体サイズ約274×190×7.8mm
重量約686g
価格164,780円

 本機はストレージにUFSを採用しており、サイズが256GBか512GBかで選択できる以外、スペックは共通。256GBモデルは149,380円となっており、価格の面でも魅力的だ。

 CPUは8コアのSnapdragon X Plusとされており、「Snapdragon X」シリーズの中ではエントリーモデルとなる。それでも8コアを搭載しており、エントリークラスと呼ぶにはぜいたくな構成だ。

 充電は45W以上のUSB PDで高速充電が可能としており、別売りの推奨充電器も45W出力となっている。画面の明るさを最大にして、CPUをフルに使用しても45Wで収まるという意味なので、PCとしてはかなりエコだ。

別売りの充電器は確かに出力45Wになっている

OSの電力設定で性能が大きく変わる

 ではベンチマークテストを試してみよう。使用したのは「3DMark v2.31.8385」、「CINEBENCH 2024」(ARM64版)。

「3DMark v2.31.8385 - Steel Nomad」
Score228
「3DMark v2.31.8385 - Solar Bay」
Score6,009
「3DMark v2.31.8385 - Time Spy」
Score1,064
Graphics score932
CPU score5,504
「3DMark v2.31.8385 - Fire Strike」
Score3,628
Graphics score3,771
Physics score13,286
Combined score1,607
「3DMark v2.31.8385 - Wild Life」
Score11,472
「3DMark v2.31.8385 - Night Raid」
Score16,497
Graphics score16,739
CPU score15,252
「3DMark v2.31.8385 - CPU Profile」
Max threads4,358
16-threads4,366
8-threads3,994
4-threads2,423
2-threads1,546
1-thread823
「CINEBENCH 2024」(10 minutes)
CPU(Multi Core)485pts
CPU(Single Core)109pts
MP Ratio4.47

 CPU周りの結果を見ると、12インチサイズのコンパクトなタブレットPCとしてはかなり高い性能を持っていると言える。グラフィックス周りはややスコアが低めだが、これは「Snapdragon X」の下位モデルではGPU性能が削減されているため。とはいえ3Dゲームをプレイするわけでもない限り、実用上で気になることはないはずだ。

 ただし注意点が1つ。今回の計測では、Windows 11の設定で[電力モード]を[最適なパフォーマンス]に変更している。初期状態では電源接続時にも[最適な電力効率]が選択されており、この状態でベンチマークテストを実施すると、CPUのマルチスレッド処理で2~3割程度の性能低下がある。

 バッテリ駆動時は[最適な電力効率]、電源接続時は[最適なパフォーマンス]にしておくのがおすすめ。特にキーボードを外してタブレットとして使用する際には、高負荷が続くと本体裏がかなり温かくなるので、発熱を抑えるためにもパフォーマンスを上げ過ぎない方が実用的だ。

タブレットとして使用するなら、使用状況に合わせた電力設定を選ぶのがおすすめ

軽さとAI性能を重視するなら良い選択

 昨年発売されている「Surface Pro 13インチ」と、「Surface Laptop 13.8インチ」のデータを比較してみると、CPUのパフォーマンスはマルチスレッド時に4割ほど低くなっている。これはCPUコアの数が少ないというスペック上の差もあるが、マルチスレッド処理時の排熱対策が難しいことも影響していると思われる。

 とはいえ絶対値としてみれば、性能が低いというほどではない。昨今のモバイルPCとの比較では決して遅くはなく、オフィスユース程度の負荷なら不満が出ることはないだろう。小さく省電力なPCなので、そもそもパフォーマンスを求めていない方が多いとは思うが、これで十分かどうかはユーザー各々が判断していただければいい。

 1つ大事なことは、CPU性能が下がっても、NPUの性能は変わらないということ。「Snapdragon X」シリーズは共通のNPUを搭載しており、45TOPSの性能も変わらない。「Copilot+ PC」の規定はしっかり満たしている。

 軽量コンパクトで比較的安価なタブレットPCが欲しいとなった時には、性能面を考慮しても十分に価値ある製品と言える。堅牢なボディは見た目も素晴らしい。外観や使用感については次回改めてお伝えしたい。

キーボードやペンなどの専用機器も本機の魅力となっている
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/