使ってわかるCopilot+ PC
第49回
686gで安価でも性能は十分か? 「Surface Pro 12インチ」を実機検証
Windowsの電源設定でパフォーマンスの最適化も
2025年6月27日 14:37
よりモバイルに適した小型筐体
「Surface Pro 12インチ」が6月10日に発売された。従来モデルは「Surface Pro 13インチ」なので、1インチ小さくなる。本体重量は686gで、別売りの着脱式キーボードを合わせると1,026g、約1kgとなる。
12インチはノートPCとしてはかなり小型だが、タブレットPCとしてはほどよいサイズ。「Surface」シリーズ伝統のアルミ削り出しの堅牢なボディは、比較的重くなるのがネックだが、このサイズになればモバイル用途にも困らない。
ただ、PCとして見た場合に、性能面に心配が残る。小型軽量にした分、排熱処理は難しくなり、性能を落とすのが最も手っ取り早い対応だからだ。実際のところどうなのか、実機をお借りして検証してみた。
8コアのSnapdragon X Plusを搭載
まずは本機の主なスペックを確認しよう。
スペック | |
CPU | Snapdragon X Plus(8コア) |
GPU | Qualcomm Adreno GPU(CPU内蔵) |
NPU | Qualcomm Hexagon(45TOPS、CPU内蔵) |
メモリ | 16GB LPDDR5x |
ストレージ | 512GB(UFS) |
ディスプレイ | 12型光沢液晶(2,196×1,464ドット/10点マルチタッチ) |
OS | Windows 11 Home |
汎用ポート | USB 3.2 Type-C×2 |
カードスロット | なし |
映像出力 | USB 3.2 Type-C×2 |
無線機能 | Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4 |
有線LAN | なし |
電源 | 別売り(USB PD) |
その他 | フルHDフロントカメラ(Windows Hello対応)、1,000万画素リアカメラ、デュアルマイクなど |
本体サイズ | 約274×190×7.8mm |
重量 | 約686g |
価格 | 164,780円 |
本機はストレージにUFSを採用しており、サイズが256GBか512GBかで選択できる以外、スペックは共通。256GBモデルは149,380円となっており、価格の面でも魅力的だ。
CPUは8コアのSnapdragon X Plusとされており、「Snapdragon X」シリーズの中ではエントリーモデルとなる。それでも8コアを搭載しており、エントリークラスと呼ぶにはぜいたくな構成だ。
充電は45W以上のUSB PDで高速充電が可能としており、別売りの推奨充電器も45W出力となっている。画面の明るさを最大にして、CPUをフルに使用しても45Wで収まるという意味なので、PCとしてはかなりエコだ。
OSの電力設定で性能が大きく変わる
ではベンチマークテストを試してみよう。使用したのは「3DMark v2.31.8385」、「CINEBENCH 2024」(ARM64版)。
Score | 228 |
Score | 6,009 |
Score | 1,064 |
Graphics score | 932 |
CPU score | 5,504 |
Score | 3,628 |
Graphics score | 3,771 |
Physics score | 13,286 |
Combined score | 1,607 |
Score | 11,472 |
Score | 16,497 |
Graphics score | 16,739 |
CPU score | 15,252 |
Max threads | 4,358 |
16-threads | 4,366 |
8-threads | 3,994 |
4-threads | 2,423 |
2-threads | 1,546 |
1-thread | 823 |
CPU(Multi Core) | 485pts |
CPU(Single Core) | 109pts |
MP Ratio | 4.47 |
CPU周りの結果を見ると、12インチサイズのコンパクトなタブレットPCとしてはかなり高い性能を持っていると言える。グラフィックス周りはややスコアが低めだが、これは「Snapdragon X」の下位モデルではGPU性能が削減されているため。とはいえ3Dゲームをプレイするわけでもない限り、実用上で気になることはないはずだ。
ただし注意点が1つ。今回の計測では、Windows 11の設定で[電力モード]を[最適なパフォーマンス]に変更している。初期状態では電源接続時にも[最適な電力効率]が選択されており、この状態でベンチマークテストを実施すると、CPUのマルチスレッド処理で2~3割程度の性能低下がある。
バッテリ駆動時は[最適な電力効率]、電源接続時は[最適なパフォーマンス]にしておくのがおすすめ。特にキーボードを外してタブレットとして使用する際には、高負荷が続くと本体裏がかなり温かくなるので、発熱を抑えるためにもパフォーマンスを上げ過ぎない方が実用的だ。
軽さとAI性能を重視するなら良い選択
昨年発売されている「Surface Pro 13インチ」と、「Surface Laptop 13.8インチ」のデータを比較してみると、CPUのパフォーマンスはマルチスレッド時に4割ほど低くなっている。これはCPUコアの数が少ないというスペック上の差もあるが、マルチスレッド処理時の排熱対策が難しいことも影響していると思われる。
とはいえ絶対値としてみれば、性能が低いというほどではない。昨今のモバイルPCとの比較では決して遅くはなく、オフィスユース程度の負荷なら不満が出ることはないだろう。小さく省電力なPCなので、そもそもパフォーマンスを求めていない方が多いとは思うが、これで十分かどうかはユーザー各々が判断していただければいい。
1つ大事なことは、CPU性能が下がっても、NPUの性能は変わらないということ。「Snapdragon X」シリーズは共通のNPUを搭載しており、45TOPSの性能も変わらない。「Copilot+ PC」の規定はしっかり満たしている。
軽量コンパクトで比較的安価なタブレットPCが欲しいとなった時には、性能面を考慮しても十分に価値ある製品と言える。堅牢なボディは見た目も素晴らしい。外観や使用感については次回改めてお伝えしたい。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/