使ってわかるCopilot+ PC

第30回

新CPU「Snapdragon X(無印)」は高性能なのか? 話題の軽量ノートPC「Zenbook SORA」で試す

「Snapdragon X」搭載の「Zenbook SORA」(ザブリスキーベージュ)

「Snapdragon X」シリーズ最下位モデルが登場

 Qualcommが「Copilot+ PC」対応製品として展開しているCPU「Snapdragon X」シリーズに、最下位モデル「Snapdragon X(X1-26-100)」が新たに投入された。シリーズ製品としては、最上位の「Snapdragon X Elite」、「Snapdragon X Plus」、そして「Snapdragon X」となる。最下位モデルは名前の最後に何も付かない。

 この「Snapdragon X」を搭載したノートPCとして、ASUSの「Zenbook SORA」が発売された。製品についての情報は、PC Watchでインタビュー記事なども含めて数本掲載されているので、そちらをご覧いただきたい。

 最下位のCPUが投入されたということは、今ある「Copilot+ PC」より安価な製品が投入される可能性がある。ただし「Zenbook SORA」に関しては、899gという軽さやバッテリ持ちなどにこだわった製品のため、価格は17万9,800円とそこまで安くはない。

 今回は「Zenbook SORA」をお借りして、最下位モデルの「Snapdragon X」の性能がどのくらいのものかを見ていきたい。筆者は本シリーズの製品を使ってきて、とても高性能だと感じている。ならば「Snapdragon X」も高性能で、かつ安くなるのではという期待がある。

「Zenbook SORA」でベンチマークテスト

 「Snapdragon X」の性能について、まずはスペックから見ていこう。「Copilot+ PC」の代表格である、マイクロソフトの「Surface Laptop」に搭載されたCPUと比較してみる。

【表1】CPUスペック比較
製品名搭載CPUCPUコア数キャッシュマルチコア時最大クロックブースト時最大クロックGPU性能NPU性能
Surface Laptop(上位モデル)Snapdragon X Elite(X1E-80-100)1242MB3.4GHz4GHz(デュアルコア)3.8TFLOPS45TOPS
Surface Laptop(下位モデル)Snapdragon X Plus(X1P-64-100)1042MB3.4GHz-3.8TFLOPS45TOPS
Zenbook SORASnapdragon X(X1-26-100)830MB3GHz-1.7TFLOPS45TOPS

 先行していた上位モデルと違う部分は、CPUコア数が8つ、キャッシュは30MB、最大クロックは3GHz、GPU性能が1.7TFLOPSと、それぞれ抑えられている点だ。

 最下位モデルなので、スペックが下げられるのは当然のこと。ただ下げ幅はそれほど大きくない。「Surface Laptop」の下位モデルに比べて、CPUコアは2つ減ったがまだ8コアもある。最下位モデルの割にはパワフルで、エントリーモデルと呼ぶのがもったいないくらいだ。

 またNPU性能は45TOPSで変わっていない。「Copilot+ PC」としてのAI性能は同等ということになる。「Copilot+ PC」が欲しいという目的ならば、より安価な「Snapdragon X」に魅力を感じるだろう。

 では実際の性能を確認する。「Zenbook SORA」と「Snapdragon X Plus(X1P-64-100)」を搭載した「Surface Laptop」で、それぞれベンチマークテストを実施した。使用したソフトは、「3DMark v2.31.8372」と「Cinebench 2024」。

【表2】ベンチマークスコア
Zenbook SORASurface Laptop
「3DMark v2.31.8372 - Steel Nomad」
Score234524
「3DMark v2.31.8372 - Solar Bay」
Score5,97210,098
「3DMark v2.31.8372 - Fire Strike」
Score3,6295,536
Graphics score3,7215,662
Physics score12,55016,170
Combined score1,6122,573
「3DMark v2.31.8372 - Wild Life」
Score11,60216,423
「3DMark v2.31.8372 - Night Raid」
Score16,79424,382
Graphics score16,96526,390
CPU score15,89017,038
「3DMark v2.31.8372 - CPU Profile」
Max threads5,6946,810
16-threads5,5406,846
8-threads5,4816,392
4-threads2,7853,267
2-threads1,3941,632
1-thread690793
「CINEBENCH 2024」(10 minutes)
CPU(Multi Core)704pts807pts
CPU(Single Core)96pts105pts
MP Ratio7.327.66

 まず注目したいのは、「3DMark」の「CPU Profile」と「CINEBENCH 2024」。この2つは純粋にCPU処理能力を調べるものだ。シングルスレッドで1割強、マルチスレッドで2割程度の差といったところだ。

 コア数が10から8に減り、動作クロックが3.4GHzから3GHzに落とされたため、この差になったと思われる。概ねスペック通りの差という印象ながら、「Zenbook SORA」は軽量筐体ながらマルチスレッドでも性能をフルに発揮しているのは優秀だ。

シングルスレッド性能はやや低めに見えるが、他社の最新製品と比べて特に見劣りするわけではない

 「3DMark」のグラフィックス系のテストでは、2倍近い差が付いているものもある。これはGPU性能が半減しているためで、これもスペック通りの結果と言える。もし3Dゲームをプレイしたいなら上位の製品を選ぶ方がいいが、そうでなければ実用上気になることはないだろう。

 結論としては、「Snapdragon X」でも最新PCとして満足のいく性能を維持していると言いたい。オフィスユースを想定するなら十分な性能を維持できている。むしろ最下位モデルで上のモデルと1~2割しか差がないというのは、かなり優秀と言っていい。

 本連載をご覧になった方からは、そろそろ「Copilot+ PC」を買おうかなという声もちらほらと聞こえている。一番いいのが欲しいというならそれで構わないが、とりあえず試せるものが欲しいのであれば「Snapdragon X」搭載機でも十分に満足できるし、むしろ『最下位なのにこんなに高性能なの?』と驚くことだろう。ぜひお試しいただきたい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/