使ってわかるCopilot+ PC

第26回

「Copilot+ PC」がもっと安くなる? 最新のNPU搭載CPU関連情報まとめ

「Snapdragon X」搭載PCは10万円以下に。ゲーミング機能強化の「Ryzen AI Max」も登場

MicrosoftのWebサイト

CPUの新製品が各社から登場

 毎年1月初頭にラスベガスで開催されるCESでは、PCに関するさまざまな発表が行われる。今年もこのタイミングに合わせて、各社から多くの発表があった。

 CESにおいて「Copilot+ PC」そのものに関する大きな発表があったわけではないが、関連する製品ではいくつかの発表があった。これに関してはMicrosoftが情報をまとめたWebサイトを用意しているが、「Copilot+ PC」以外の情報も混じっているので、より厳選した情報を日本語でまとめていきたい。

10万円を切る「Copilot+ PC」を実現する「Snapdragon X」

 まずは新たに発表されたCPUから。最初の「Copilot+ PC」対応CPUとして登場したQualcommの「Snapdragon X」シリーズには、より安価な「Snapdragon X」が投入される。

「Snapdragon X」

 ちょっとわかりにくいのだが、「Snapdragon X」シリーズにはこれまで、上位モデルの「Snapdragon X Elite」と、下位モデルの「Snapdragon X Plus」がラインナップされており、その中にもそれぞれスペックの異なる複数の製品があった。

 今回投入されたのは、「Snapdragon X」シリーズの最下位モデルとなる、無印の「Snapdragon X」。具体的には、「Snapdragon X Plus」の中で最下位だった「Snapdragon X Plus 8-core(X1P-42-100)」から、さらに動作クロックを落としたのが「Snapdragon X(X1-26-100)」となる。

 ただしNPUの性能はシリーズ全て共通の45TOPSとなっており、「Copilot+ PC」に対応する。

 「Snapdragon X」を搭載したPCは600ドル以下を実現可能としている。単純計算すれば、日本円でも10万円を切る価格設定となる。「Copilot+ PC」を安価に入手したいという方には朗報と言える。

AMDも「Copilot+ PC」対応製品を拡充

 AMDは「Copilot+ PC」の要件を満たすCPUとして「Ryzen AI 300」シリーズを展開しており、今回は従来より下位のモデルとなる「Ryzen AI 7 350」および「Ryzen AI 5 340」が追加された。

「Ryzen AI 300」シリーズ

 従来の「Ryzen AI 9 HX 370」や「Ryzen AI 9 365」に比べ、CPUコアやGPUコアの数が減っている。しかしNPUの性能は50TOPSを維持しており、「Copilot+ PC」の要件は満たしている。こちらもQualcommと同じく、従来より安価な「Copilot+ PC」を展開できるようになるだろう。

 なお同時に発表された「Ryzen 200」シリーズは、設計が異なる別の製品。NPUは搭載しているが、性能は16TOPSとされ、「Copilot+ PC」の要件を満たさない。

 同社はさらに、特にグラフィックス機能を強化した「Ryzen AI Max」シリーズも発表。「Ryzen AI Max+ 395」、「Ryzen AI Max 390」、「Ryzen AI Max 385」、「Ryzen AI Max PRO 380」というラインナップだ。

「Ryzen AI Max」シリーズ

 数字の大きいモデルほど、CPUとGPUのコア数が増えて性能が高くなる。ただNPU単体の性能は「Ryzen AI 300」から据え置きの50TOPS。もちろん「Copilot+ PC」の要件を満たしている。コンパクトなゲーミングノートPCのために採用されそうな製品だ。

MSIのポータブルゲーミングPCが「Copilot+ PC」になる

「Claw 7 AI+」のWebサイト

 Intelも新たな製品を発表しているのだが、既に発売されている「Core Ultra 200V」のほかに「Copilot+ PC」の要件を満たす製品はなかった。

 Intel製CPU絡みで面白い話題としては、MSIのポータブルゲーミングPC「Claw」シリーズ。同社は今回、7型の「Claw 7 AI+」と、8型の「Claw 8 AI+」という2製品を発表した。

 ポータブルゲーミングPCに採用されているCPUは、ほとんどがAMD製。その中でMSIは、Intel製の「Core Ultra」シリーズを採用しているのが特徴だ。従来機種では初代「Core Ultra」シリーズを採用していたが、新モデルでは世代が進んで「Core Ultra 200V」シリーズを採用した。

 これによりゲームのパフォーマンス向上が図られているが、同時にNPUの能力も向上し、「Copilot+ PC」の要件を満たした。本機の製品情報サイトには、「Copilot+ PC」のロゴが大きく飾られている。

 ポータブルゲーミングPCが「Copilot+ PC」になったことによるメリットとしては、NPUを活用してゲームのフレームレートを高めるAI機能「自動スーパー解像度」がある。見た目上の処理能力向上だけでなく、バッテリーの持ち時間向上も期待できる。ポータブルゲーミングPCにも「Copilot+ PC」になる意義はあるし、今後もさまざまなAI機能が開発されていくだろう。

「Copilot+ PC」がさらに入手しやすくなる

 今回の「Copilot+ PC」の情報をざっくりまとめると、対応PCが以前より安価に入手可能になっていくとともに、一般的なノートPC以外での採用も増えていくのがわかる。今までよりもぐっと手に入れやすくなっていくのは間違いない。

 PCにおけるAI、特にNPUの利用はまだまだ過渡期にあるのは確かだが、2年、3年と経てば事情は変わるはず。数年先を見据えてPCを選ぶのなら、「Copilot+ PC」かどうかを1つの基準としておくのは、決して悪い選択肢ではないはずだ。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/