使ってわかるCopilot+ PC

第42回

「ペイント」のAI画像生成が実用レベルに? 本当かどうか試してみた

「ペイント」の画面

「Co-creator」のAIが進化

 先日、「Copilot+ PC」に今後実装されるAI機能についての発表があった。目玉機能とされながらも改修に時間がかかっていた「リコール」が実装され、晴れて次のステップを明かせるといったところだろうか。

 今回の発表の中に、『「ペイント」や「フォト」に使われている拡散ベースのモデルを、より高速で優れた品質に改良』という内容があった。これは既に実装済みだそうで、筆者の環境でもMicrosoft Storeからのアップデートが確認できた。

 「ペイント」に搭載されたAI機能「Co-creator(コクリエイター)」は、本連載でも「Copilot+ PC」の発売当初に試している。ただ、お世辞にもクオリティが高いとは言えず、遊び程度に試すならともかく、実用性を求めるのは難しかった。これが改善されたのならば、試してみるしかない。

「ペイント」の生成AIがより実用的になってきた

 早速、アップデートされた「ペイント」を起動。適当な棒人間を描いてから、テキストで指示を加える。するとAIが棒人間の下絵をベースに、新たな画像を生成する。この流れは以前と同じだ。

 試しに『海で泳ぐ若い女性の写真』と入れてみたところ、以前よりも細部にこだわった感じの絵が出力された。何度か試してみても、いずれも破綻が少なく、そこそこまともな絵が出るようになったという印象だ。

雑な下絵から、指示通りの絵がすぐ出てくる

 今度は同じ下絵で、『外を歩いている子供』と指示してみると、こちらも人物、背景ともにぐっと自然な感じの絵が出てくる。特に、右下にある[スタイル]を変更すると、それぞれに異なる絵が次々と作られていく。

下絵を変えずに「外を歩いている子供」にすると、それっぽい絵に変わる
[スタイル]を[アニメ]にすると、確かにアニメっぽい絵になる
少し下絵をいじって[ピクセル アート]。なかなかうまく再現している
ついでにテキストを『海辺に立つ巨大ロボ』にしてみると、きちんとイメージが追従する

 今度は写真で試してみよう。筆者が米国で撮影した写真に対し、『江戸時代の街並みにたたずむ私』と書いてみると、背景が日本家屋になった。電線らしきものが見えたりもするが、街の人々が時代劇風の服装になっていたりして、写真をベースにアレンジしているのがよくわかる。以前よりもよく指示に従い、かつ自然な絵が出てくる。

日本風の写真にアレンジされた。以前よりはかなり破綻が少なく、自然な絵になった

 いろいろ試していくと、デフォルメするような表現が上手になっていると感じる。今後実装予定のデジタルステッカーを作成する機能を想定しているのかなと思う。テキストを変えたりして試していくと、割と実用的なキャラクターが出てくるようになった。

筆者撮影の猫の写真を縮小したものをベースに[ピクセル アート]で指示。このサイズの画像も上手に処理してくれる

 またアプリのアップデートに合わせて、同じ設定で別の絵を生成できる[もう一度試す]ボタンが追加されている。AI画像生成は同じ設定で何度も試していいものをピックアップしたいので、このボタンができたおかげで格段に使いやすくなった。

「フォト」の「Image Creator」は無料で使える

 ちなみに「ペイント」の「Copilot」アイコンをクリックすると、「Co-creator」のほか、テキストの指示だけで画像を1から生成する「Image Creator(イメージクリエイター)」も選べるようになっている。ただしこちらはMicrosoft 365サブスクリプションに含まれているAIクレジットが必要との表示で、有料プランが案内される。

「ペイント」の「Image Creator」は有料という表示

 「Image Creator」は「フォト」アプリでは無料で使用できたはず……と「フォト」アプリを起動してみると、こちらでは以前と変わらず無料で利用できた。こちらのモデルも改善されたそうだが、元々クオリティが高かったので違いがわかりづらい。

 かなり精細な画像が2秒程度で出力されていくので、『これは本当にローカルで動作しているのか?』と気になって「タスク マネージャー」を開いてみると、確かにNPUをフルに使用していたので、ローカル動作しているようだ。

「フォト」の「Image Creator」で画像生成。質のいい画像がかなりハイペースに生成される
NPUをフル活用しているのを確認。確かにローカルで動作しているようだ

 「Co-creator」と「Image Creator」は似て非なる機能なので、両方をうまく使えば資料作成などで活用できそうなレベルになってきた。ローカルで動作する安心感と、手軽に導入できるという点で、なかなか優秀な機能に育ってきたと感じられる。今後の進化にも期待したい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/