使ってわかるCopilot+ PC

第2回

「Copilot+ PC」に搭載されたCPU「Snapdragon X」は、EliteとPlusのどっちを選ぶべき?

「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」(左)と「Surface Pro(第11世代)」(右)

「Copilot+ PC」に搭載されている現在唯一のCPU「Snapdragon X」

 本稿を執筆している2024年7月現在、「Copilot+ PC」に搭載されているCPUは、Qualcomm製「Snapdragon X」シリーズのみとなっている。40TOPS以上の性能を持つNPUが搭載されていることが条件となっているためで、45TOPSのNPUが搭載されている「Snapdragon X」シリーズが唯一の選択肢となっているためだ。

 その「Snapdragon X」シリーズには、「Snapdragon X Elite」と「Snapdragon X Plus」という2つのラインナップが存在する。この2つの違いはざっくり言うとCPUコア数の違いで、「Snapdragon X Elite」は12コア、「Snapdragon X Plus」は10コアとなる。つまり「Snapdragon X Elite」が上位の製品だ。

 今回はマイクロソフト製の「Copilot+ PC」から、「Snapdragon X Elite」を搭載した「Surface Pro(第11世代)」と、「Snapdragon X Plus」を搭載した「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」の2台を用意し、性能を比べてみた。同じ筐体ではないので冷却性能の差はあるはずで、性能に影響しうるという点は考慮すべきだが、あくまで1つのデータとしてご覧いただければと思う。

 なお「Snapdragon X Elite」には複数のSKU(モデル)が用意されており、それぞれ性能が異なる。ただし「Surface Pro(第11世代)」ではどのSKUが搭載されているのか、スペックシートには書かれていない。ここも製品選びの際の注意点ではあるが、ひとまず性能比較をしていこう。

CPUの違いを確認

 まずはそれぞれのCPUがどんなスペックなのか、CPU情報を表示できるソフト「CPU-Z」で確認してみる。「CPU-Z」にはArm64版が用意されているので、そちらを利用する。

 1台目は「Surface Pro(第11世代)」。「Snapdragon X Elite」を搭載している。メモリが8,448MT/sと高速なのも目を引く。

CPUは4+8コア。GPUは「Adreno GPU X1E80100」と記載されている
メモリはLPDDR5x(「CPU-Z」ではLPDDR5との記載だが、スペックシートにLPDDR5xと書かれている)で、8,448MT/sと非常に高速

 2台目は「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」。「CPU-Z」では「Snapdragon X Elite」と表示されているが、CPUは4+6コアで、「Snapdragon X Plus」のスペックであることが確認できる。GPUの型番は「Snapdragon X Elite」とは違うのが確認できる。

CPUは4+6コア。GPUは「Adreno GPU X1E64100」と記載されている
メモリは8,448MT/sのLPDDR5xで同等だ

NPUは差がないはず

 性能を比較する上で最も知りたいのは、やはりNPUの性能だろう。これについては残念ながら、性能を調べるベンチマークテストはおろか、NPUを使用するアプリもまだ少ない状態で、厳密な比較をするのが難しい。

 ひとまず最低限の比較をすべく、「ペイント」アプリで使用できる「Cocreator」でAIによる画像生成を試してみた。応答時で比較してみたところ、体感できる範囲では違いは感じられなかった。またNPUの使用状況も大きな差があるとは言えない。

 スペック上では、「Snapdragon X」は全て45TOPSの性能とされているので、NPUを使う処理に関してはほぼ差が出ないのは正しい。NPUを活用したAI体験に関しては、「Snapdragon X Plus」でも不都合はなさそうだ。

「Surface Pro(第11世代)」で「Cocreator」を使用。画像生成時にCPUを使用しているのが確認できる
同じく「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」でのテスト。NPUの使用状況に明確な差はない

NPU以外の性能も比較

 続いてNPU以外の性能の違いも見ていく。まずはCPUから。ベンチマークソフト「CINEBENCH 2024」にArm64版が用意されているので、こちらを利用する。

【表1】「CINEBENCH 2024」スコア
「Surface Pro(第11世代)」「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」
マルチコア818pts748pts
シングルコア106pts108pts
MP Ratio7.696.90

 シングルコアは誤差の範囲だが、マルチコアでは10%近くの差が付いている。これはCPUコアの数などのスペックの差が出たものと考えていいだろう。

「Surface Pro(第11世代)」ではMP Ratioが7.69と高い
「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」のMP Ratioは6.90。CPUコアが少ないことの影響が見える

 次はゲーム系のテスト。「3DMark」ではArm版CPUにも推奨されるテストがいくつかある。これらのデータを比較してみよう。

【表2】「3DMark」スコア
「Surface Pro(第11世代)」「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」
Steel Nomad505508
Steel Nomad Light2,0622,030
Wild Life Extreme6,1806,060
Night Raid(Score)23,91923,479
Night Raid(Graphics score)25,72725,156
Night Raid(CPU score)17,10017,044

 2台のスコアはかなり拮抗しており、大きくても数%程度の差しかない。「Surface Pro(第11世代)」の方が高速なのは確かだが、差はわずかだ。

「Surface Pro(第11世代)」のスコア
「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」ではスコアが少し落ちるが、ほとんど差はない

 ゲーム系ではもう1つ、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」も試した。こちらはベンチマークテストだけでなく、ゲーム本編も動作確認している(長時間のプレイや高負荷な状況は不明)。

【表3】「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」スコア
「Surface Pro(第11世代)」「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」
1,920×1,080ドット/最高品質3,1553,121
1,920×1,080ドット/標準品質(ノートPC)5,7655,189
2,880×1,920ドット/標準品質(ノートPC)3,573-
2,304×1,536ドット/標準品質(ノートPC)-4,728

 こちらは画質を標準品質(ノートPC)にした際にやや差が大きくなったが、最高品質だと差はわずかになった。1,920×1,080ドット/標準品質(ノートPC)の設定ではどちらも「普通」の評価で、1,920×1,080ドット/最高品質では「設定変更を推奨」とされた。動作するにしてもギリギリのラインである。

 なお異なる解像度のデータは、それぞれのディスプレイ解像度に合わせてフルスクリーン表示した状態で実行したもの。「Surface Pro(第11世代)」の方が解像度が高いため、ベンチマークスコアは下がっている。

「Surface Pro(第11世代)」では1,920×1,080ドット/標準品質(ノートPC)で「普通」の評価
「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」でもスコアは落ちるものの「普通」で留まる

マルチスレッドの処理性能が欲しければ「Snapdragon X Elite」

 「Surface Pro(第11世代)」と「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」の性能を比較してきたが、大きな違いはマルチスレッド処理時の性能と考えていい。CPUコアが増えた分、10%程度は性能に差があるようだ。

 GPUやNPUに関してはそれほど大きな差は見られない。「Snapdragon X」のSKU一覧でデータを見ると、「Surface Pro(第11世代)」に搭載されているのは「X1E-80-100」のようで、Adreno GPUの性能は3.8TFLOPsとされている。これは「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」に搭載されている「X1P-64-100」と同性能。データ上でもGPUとNPUに性能差はない。

 ただし「Snapdragon X Elite」の中でも、より高性能な「X1E-84-100」では、Adreno GPUの性能が4,6TFLOPsに上がる。こうなるとゲーム系ベンチマークテストでは差が大きくなるはずだ。

 より高性能なCPUやGPUが欲しい場合は、「Snapdragon X Elite」の中でも、どのSKUを採用しているかを確認しておくといい。製品によってはスペックシートに書かれていないものもあるが、「3DMark」や「CPU-Z」を実行すれば、GPUのデータとして確認が可能なので、これを手掛かりに調べてみるといい。

 総合的な答えとしては、CPUのマルチスレッド性能が高い方が良ければ「Snapdragon X Elite」。さらに「Snapdragon X Elite」のSKUにはGPU性能が高いものもあるので、必要ならばどのSKUを採用しているか確認するのがベター。「Copilot+ PC」のNPUによるAI処理に価値を感じるなら「Snapdragon X Plus」でも十分ということになる。

 ただし、今回比較した2台のPCを見てもわかるように、CPU以外にも違う部分は数多くある。「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」はクラムシェル型のノートPCだが、「Surface Pro(第11世代)」はキーボードが分離するタブレット型だ。諸々確認した上で、各社から発売されている製品の中から最適なものを選んでいただきたい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/