使ってわかるCopilot+ PC

第36回

11万円台のNPU搭載PCがこんな上質でいいの? 「Lenovo IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」を試す

「Lenovo IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」(ルナグレー)

安価な「Copilot+ PC」を探したら、ただ安価なだけではなかった

 「Copilot+ PC」の購入をためらう理由の1つに、価格があると思っている。最新のAI PCであるがゆえに高価なのは仕方がないのだが、豪華仕様のプレミアムノートPCという位置付けの製品も多いように思う。

 なるべく安価に入手できる製品はないかと調べてみたところ、「Lenovo IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」という製品を見つけた。14型のノートPCで、価格は119,790円と12万円を切る。しかもセール時には約1万円値下げして109,890円で販売されることもある。「Copilot+ PC」の中でも最安値の製品の1つだ。

 安いということは、仕様的にはベーシックな製品になるはずなのだが、本機はそうなっていないのが注目ポイント。筆者は本機について、ただ安いだけでなく、『何でこの豪華仕様でこの価格なの?』と驚いた。

 こちらの実機をお借りしたので、触り心地を含めてお伝えしていく。

下位製品でも8コアCPUの高性能を発揮

 まずはスペックの確認から。

【表1】
スペック
CPUSnapdragon X Plus X1P-42-100(8コア/16スレッド、最大3.4GHz)
GPUQualcomm Adreno GPU(CPU内蔵、1.7TFLOPS)
NPUQualcomm Hexagon(45TOPS)
メモリ16GB LPDDR5x
SSD512GB(M.2 NVMe)
ディスプレイ14型光沢有機EL(1,920×1,200ドット/10点マルチタッチ)
OSWindows 11 Home
汎用ポートUSB 3.2 Gen2 Type-C×2、USB 3.2 Gen1×2
カードスロットmicroSD
映像出力HDMI×1、USB 3.2 Gen2 Type-C×2
無線機能Wi-Fi 7、Blunetooth 5.3
有線LANなし
電源65W USB PD
バッテリ容量57Wh
その他1080pカメラ、ヘッドセット端子、加速度センサーなど
本体サイズ約313×227×17.5mm(最薄部)
重量約1.5kg
価格119,790円

 CPUは「Snapdragon X Plus X1P-42-100」。「Snapdragon X Plus」は「Snapdragon X」シリーズの中でミドルクラスに位置付けられるが、「X1P-42-100」は8コアで最も少なく、性能的には最下位モデルの「Snapdragon X(無印)」に近い。それも僅かにクロックが高いという違いだ。

 GPUの性能も低めで、上位モデルの半分程度となっている。実用上は気になることはないだろうが、ゲーム等で3Dグラフィックスを利用する際にはやや低めのパフォーマンスになる。

 NPU性能は45TOPSで、最上位の製品である「Snapdragon X Elite」と同等。もちろん「Copilot+ PC」の要件も満たしている。逆に言えば、上位の製品を選んでも「Copilot+ PC」としてのAI性能はほぼ同等ということになる。

 では実際の性能をベンチマークテストを用いて確認する。使用したソフトは、「3DMark v2.31.8385」と「Cinebench 2024」。参考として、以前計測した「Snapdragon X Plus(X1P-64-100)」を搭載した「Surface Laptop」のデータも掲載する(「3DMark v2.31.8372」で実施)。

【表2】ベンチマークスコア
IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9Surface Laptop
「3DMark v2.31.8385 - Steel Nomad」
Score233524
「3DMark v2.31.8385 - Time Spy」
Score1,037-
「3DMark v2.31.8385 - Fire Strike」
Score3,6165,536
Graphics score3,7005,662
Physics score13,71016,170
Combined score1,5912,573
「3DMark v2.31.8385 - Wild Life」
Score11,50116,423
「3DMark v2.31.8385 - Night Raid」
Score16,52324,382
Graphics score16,39026,390
CPU score17,32217,038
「3DMark v2.31.8385 - CPU Profile」
Max threads6,2036,810
16-threads6,0166,846
8-threads6,1286,392
4-threads3,1253,267
2-threads1,5661,632
1-thread823793
「CINEBENCH 2024」(10 minutes)
CPU(Multi Core)741pts807pts
CPU(Single Core)108pts105pts
MP Ratio6.857.66

 「Surface Laptop」が搭載するCPUは「Snapdragon X Plus X1P-64-100」で、同じ「Snapdragon X Plus」の名前ではあるが、CPUコアが10コア、GPU性能が3.8TFLOPSと大きく差がある。テスト結果でも、グラフィックス周りでは6割程度の差が見られる。

 CPUに関してはそこまで大きな差はなく、マルチスレッドでも1割程度。8コア搭載のCPUの処理能力は十分に高く、オフィスユース程度では不足を感じることはないだろう。「Copilot+ PC」としてはエントリークラスの製品ではあるが、「Snapdragon X」シリーズの性能の高さをきちんと発揮できている。

「CINEBENCH 2024」の結果。8コアCPUはノートPCとしては十分な性能だ

有機ELにタブレットモード搭載。各所の上質さが本機の魅力

天面にはLenovoのロゴが入っているが、さほど目立たない

 価格の割にはなかなかの性能を発揮しているが、本機で注目して欲しいポイントは、実は別のところにある。

 まずは筐体。シルバーグレーの落ち着いたデザインで、天面中央のLenovoのロゴがささやかに自己主張する。触ってみると、ボディは金属製で、特にディスプレイのある天面部はしっかりしている。押してもほとんどへこみが出ず、頑強な手触りだ。MIL-STD 810Hにも適合しているという。

 ディスプレイは有機ELを搭載。10点タッチにも対応している。発色、視野角とも優秀で、高級なノートPCと見比べても遜色ない。ここだけでも値段以上の価値を感じられる。

有機ELディスプレイはとても美しい

 さらに本機は製品名に「2-in-1」とあるとおり、タブレットスタイルでの利用が可能。ディスプレイを開いていくと、ほぼ360度動いて、背面側にディスプレイが裏返しになる。

ディスプレイを360度回転させてタブレットスタイルに

 タブレットスタイルの時には、背面になるキーボードやタッチパッドは入力を受け付けないので、誤入力の心配もなく、純粋にタブレットとして使用できる。また本体を回転させると、ディスプレイの表示も追従して縦横自在に回転する。ちなみにディスプレイを戻して一般的なノートPCスタイルにしている時は、ディスプレイの回転機能はオフになる。

 これに加えて、本機には標準でデジタルペンが付属する。タブレットスタイルを含めて、ペンを使った入力が可能だ。

ペンも付属する

 キーボードはオーソドックスなレイアウト。右側が若干詰まっているが、配置に余裕がないほど形を変えたキーはほぼない。キーボードバックライトも搭載している。電源ボタンはキーボード上ではなく、本体右側面に配置されている。

キーボードは奇をてらわず、余裕のあるレイアウト

 USB端子も充実しており、Type-CとType-Aが各2基搭載されている。充電は65WのUSB PDとなっており、スマートフォンなど他の機器との使いまわしも可能だ。

本体左側面にはUSB Type-CやHDMI、ヘッドセット端子を搭載
右側面にはUSB Type-AとmicroSDカードスロットが。電源ボタンもこちらにある

 スピーカーはキーボードの左右に配置。ユーザーに近い位置にあるため、音がストレートに聞こえる。音質はやや軽めではあるが、音量はしっかりあって聴きやすい。

 セキュリティ面も万全。キーボード右下には指紋センサーを搭載。ディスプレイ上部のカメラには物理シャッターが用意されている。

物理シャッターでカメラを閉じられる

 本機の欠点を挙げるとすると、本体重量が約1.5kgと、14型ノートPCとしてはやや重いところ。日常的に持ち歩くならもう少し軽い方がいいが、ちょっとした持ち出しに苦労するほどではない。薄型でしっかりした筐体なので、ホールド感も良好だ。

 全体として、スペックに現れない部分での使用感がとてもよく、高級機に劣らない上質さを持っている。目立つ機能はなくとも、不満を感じさせる部分はきっちり対応されており、日常的に使っていて快適だろうと想像できる。

 これが11万円台で手に入るというのは、実際に触った後だとさらに驚きが増す。ただ安い「Copilot+ PC」を探していたつもりが、こんなに上質な製品が当たるとは思わなかった。とりあえず「Copilot+ PC」が欲しいという方には、本機を買っておけば間違いないと言える。

価格の割には手抜かりがなく、高級機のたたずまい
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/