使ってわかるCopilot+ PC

第50回

12インチでも手抜きなし。新型「Surface Pro」は上質な仕上がり

13インチモデルとの違いは意外と多い

「Surface Pro 12インチ」

12インチになった価値はどこにある?

 先週に引き続き、「Surface Pro 12インチ」の話をしていく。先週は性能面にフォーカスしたので、今回はそれ以外の部分についてお話ししたい。

 本機の最大の魅力は686gという軽さの本体であることは間違いない。それでいて高性能やロングバッテリーで、モバイル用途に適した端末になっているが、そういったスペックから見える部分、また見えない部分も含めて、実機で検証していく。

13インチとスペックを比較

 本機について語る上で、先に登場している「Surface Pro 13インチ」についても触れておく必要があるだろう。13インチでも十分コンパクトだし、仕様を見ると意外と違う部分が多いので、どちらが自分に適しているのか考えておく方がいい。

 スペックを比較してみよう。

Surface Pro 12インチSurface Pro 13インチ
CPUSnapdragon X Plus(8コア)Snapdragon X Elite(12コア)/Snapdragon X Plus(10コア)
GPUQualcomm Adreno GPU(CPU内蔵)Qualcomm Adreno GPU(CPU内蔵)
NPUQualcomm Hexagon(45TOPS)Qualcomm Hexagon(45TOPS)
メモリ16GB LPDDR5x16GB/32GB/64GB LPDDR5x
ストレージ256GB/512GB UFS256GB/512GB/1TB SSD(PCIe Gen4)
ディスプレイ12型光沢液晶(2,196×1,464ドット/90Hz/10点マルチタッチ)13型有機EL(2,880×1,920ドット/120Hz/10点マルチタッチ)
OSWindows 11 HomeWindows 11 Home
汎用ポートUSB 3.2 Type-C×2USB 4×2
無線機能Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4(5G対応モデルあり)
電源USB PD(別売)Surface Connect(付属)、USB PD(別売)
その他フルHDフロントカメラ(Windows Hello対応)、1,000万画素リアカメラ、デュアルマイクなどQHDフロントカメラ(Windows Hello対応)、1,000万画素リアカメラ、デュアルマイクなど
本体サイズ約274×190×7.8mm約287×209×9.3mm
重量約686g約895g
価格149,380円~166,750円~

 サイズを見てみると、「Surface Pro 13インチ」はほぼA4サイズ(297×210mm)だが、「Surface Pro 12インチ」は縦横2cmほど小さい。厚みがあるとはいえ、A4のノートが入る隙間には本機を楽に入れられると思っていい。鞄のポケットなどにも入れやすいし、小さい鞄にも収められるので、大学生が書籍と一緒に持ち運ぶにはとても相性が良さそうだ。

 AI性能の指標となるNPUは、どちらも45TOPSのQualcomm Hexagonで共通している。「Copilot+ PC」のAI性能を純粋に見てみたいということなら、どちらを選んでも差はないということになる。

 違いが大きいのはディスプレイ。「Surface Pro 13インチ」は有機ELパネル、「Surface Pro 12インチ」は液晶パネルで、仕組みから違う。解像度やリフレッシュレートにも差があり、事実上「Surface Pro 13インチ」の方がハイグレードと言える。ただ有機ELと液晶は見え方の違いもあり好みが分かれるし、液晶だからダメという話でもない。実機を見て確かめていただくのがいいだろう。

 それ以外の部分については、やはりサイズが小さい分だけ不利になるところが多い。CPUは前回の説明どおり性能が下がる。GPUは同じAdreno GPUとなっているが、性能は「Surface Pro 12インチ」の方が半減している。グラフィックス周りを含め、高負荷になる処理を考えているなら「Surface Pro 13インチ」を選ぶ方がいい。

 電源は「Surface Pro 13インチ」にあったSurface Connectが、「Surface Pro 12インチ」では省略されている。これは小型化による影響というより、充電規格をUSB Type-Cに統一せよというEUの指令に合わせたものと考えられる。充電器も標準で同梱されなくなり、その分だけ「Surface Pro 13インチ」との価格差は縮まるとも言える。

専用キーボードとペンの組み合わせで使い勝手はどうなる?

 では「Surface Pro 12インチ」の使用感を見ていきたい。今回は専用のキーボードカバー「Surface Pro 12 インチ キーボード」と、「Surface Pro」シリーズ共通の「スリム ペン」も合わせて使用している。それぞれ27,280円、22,770円だが、44,800円のセットも用意されている

 本体の剛性は極めて高く、手に持った時のたわみは一切感じられない。見た目より頑丈な手ごたえのせいか、持った時の重量感が実際より重く感じられるのだが、それだけコンパクトなサイズにいろいろなものを詰め込んだマシンなのだと思う。

アルミ削り出しの筐体はとにかく頑丈

 液晶ディスプレイは12インチでもフルHDを超える解像度で、高精細。色味もしっかりしていて美しい。小さいからといって手を抜いているような印象はなく、ノートPCに採用する液晶の中ではかなり上質だ。

ディスプレイの色味はとても良く、12インチでフルHD以上の解像度なので高精細

 ペンは本体背面のくぼみにマグネットで接着できる。ペンの大半が表に出ている状態なので、何かの拍子に落としてしまわないかと不安になるが、かなりしっかりと吸着していて自然に落ちそうな様子は一切ない。試しに鞄に出し入れしてみたところ、ペンが外れそうな気配は全くなかった。接着状態ではペンの充電もされる。

ペンは背面にマグネットで貼りつく

 本機のキックスタンドを立ててデスクに置いた時、ペンは本体裏側の上部に貼りついている状態。直接見えない位置になるのだが、手を伸ばせばすぐ手が届き、指にひっかけて掴めば簡単に外れる。逆にペンを収める時も、本体裏側にペンを持っていくだけで勝手に向きを合わせて貼りついてくれる。

 あとは本体からペンは飛び出しているような形状をどう感じるかだけだ。見た目が面白いとも言えるし、格好悪いと感じるかもしれない。「Surface Pro 13インチ」ではキーボードカバーの内側に収納できたので、どちらがいいかは好みの範疇かなと思う。1つ言えることは、安全面や使い勝手は「Surface Pro 12インチ」でも何ら問題はない。

 ペンの文字入力は、キーボードのテキスト入力ができる場所ならどこでも使用できる。「メモ帳」アプリを開いてウインドウ内で手書きすれば、自動認識してテキストとして入力される。さらに検索ボックスなどに手書きもできる。文字の書き始めの文字が検索ボックス内なら、あとははみ出しても構わない。筆者が雑に書いた字もしっかり認識してくれる。

手書きでの文字入力に対応。認識精度が高く、雑に書いても正確に入力してくれる
検索ボックスへの手書きも可能。文字入力できる場所なら基本的にどこでも手書きできる

 キーボードの外側はアルカンターラという素材で、スエードのような起毛感のある柔らかい手触り。キーボードがある面はしっとりしたマット加工となっている。一般的なノートPCとは違い、キーボード下にCPUなどの発熱部品がないため、キーボードに熱が一切伝わらないのは快適だ。

 またキーボード自体も、アームレストのマットな手触りの快適さに加えて、キーストロークもノートPC並にあり、さらにしっかりしたクリック感がある。キーにはバックライトも搭載されており、このキーボードだけワイヤレス製品として欲しくなるくらいに完成度が高い。

キーボードはバックライトやタッチパッド付きでとても上質
裏面のカバー側も優しい手触り

 ただ一般的なノートPCとは違い、背面にあるキックスタンドを開いて立てるという構造になるため、平らなデスクに置いて使わないと設置が不安定になる。ノートPCを本当にラップトップで使う方はそう多くないとは思うが(筆者は取材時によくやる)、本機でやるとキーボードがしっかりしているので意外と何とかなる……が、落とした時が怖いのでおすすめはしない。

 キックスタンド自体は幅広で安定性が高く、角度の調整もしやすい。ノートPCスタイルで使う時だけでなく、タブレット単体で動画を見る時などにも重宝する。ディスプレイの左右にあるスピーカーは小さいながらも音のバランスがとても良く、高音の伸びやステレオ感の出し方がとても良い。気楽に映画を見るくらいなら十分に感じられる。

キックスタンドは無段階に角度調節が可能。最大で160度くらいまで開く

 本機をパッと見た時の印象は、12インチという小ささから、若干のオモチャっぽさもある。しかし1つ1つの機能や部位を触って確かめていくと、どれも上質に作られていて満足度が高い。使えば使うほど良さが見えてきて、所有する嬉しさが感じられる。どこにでも持ち出して、いつも手元に置いておきたくなる1台になりそうだ。

「Copilot+ PC」としてのAI機能ももちろん万全
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/