使ってわかるCopilot+ PC
第51回
Intel製CPU搭載の「Copilot+ PC」が見つけにくい! サインは「V」
同じ「Core Ultra シリーズ2」でも対応可否が分かれる
2025年7月11日 06:55
Intel製CPUの「Copilot+ PC」が欲しい?
『PCを買うなら安心のIntel製CPU!』と決めている方はとても多いと思う。Intel製CPUはWindows PCにおいては長年のデファクトスタンダードであり、動作の問題を極力避けたいならばIntelを選んでおけば間違いない。誰かに尋ねられれば、筆者もそう答える。
ではIntel製CPUを搭載した新たなPCを購入するとして、せっかくだから「Copilot+ PC」に対応したものを選ぼうとなった時、どれを買えばいいのかが、今は意外と難しい。新製品を買っておけばいいというわけではなく、CPUの型番をきちんと把握する必要がある。
「Core Ultra シリーズ2」を探すだけではダメ
最初に答えからお伝えしよう。Intel製CPUで「Copilot+ PC」に対応する製品は、『Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2』の Vシリーズ である。開発コードネーム「Lunar Lake」という名前でも知られている。
これで皆さんは迷うことはない……といいのだが、理解できた方はそう多くないと思う。「Core Ultra シリーズ2」を買えばいいのかと思われそうだが、これは間違い。順に説明していこう。
まず「Core Ultra シリーズ2」は、デスクトップPC向けとノートPC向けに分けられる。デスクトップPC向けの製品は「Core Ultra シリーズ2」の中でも「Core Ultra 200S」シリーズと呼ばれている。これは「Copilot+ PC」に対応していない。詳しくはIntelのWebサイトをご覧いただきたい。
よりわかりやすく言うと、本稿を執筆している2025年7月時点では、Intel製CPUでデスクトップPC向けの製品に、「Copilot+ PC」に対応したものは1つもない。よって「Copilot+ PC」が欲しいなら、基本的にノートPCの中から探すことになる。
次にノートPC向けの「Core Ultra シリーズ2」の話だが、こちらは本稿執筆時点でなんと4つの製品ラインがある。IntelのWebサイトIntelのWebサイトの情報から引用して説明する。
- Vシリーズ : 次世代のAIノートブックPC
- HXシリーズ : エンスージアスト・コンシューマーおよび商用ノートブックPC
- Hシリーズ : プレミアム・コンシューマーおよび商用ノートブックPC
- Uシリーズ : プレミアム薄型軽量コンシューマーおよび商用ノートブックPC
このうち「Copilot+ PC」に対応するのはVシリーズのみで、他は非対応となる。
次世代だ、プレミアムだという説明を読むほど混乱するので、ざっくり説明する。HXシリーズ、Hシリーズ、Uシリーズはそれぞれ消費電力が異なり、HXシリーズが最も消費電力が大きく、続いてHシリーズ、Uシリーズとなる。消費電力が大きいほど性能も高くなる、と思っておけばいい。
ではVシリーズは何かというと、他の3シリーズとはCPUの設計レベルから異なる製品となる。同じ「Core Ultra シリーズ2」でありながら、これだけが特殊な製品なのだ。その特殊な部分の1つが高性能なNPUを搭載していることで、それによって「Copilot+ PC」の要件を満たしている。
説明にある『次世代のAIノートブックPC』という表現は、既に今世代だろうと言いたくなる。Vシリーズだけは他の製品に先駆けてAI能力を強化していて、他の製品は次の世代で対応していくという姿勢の表れ、と理解すればいいのかもしれない。
他の3シリーズについては、性能や消費電力の違いはあれど、NPUの性能はいずれもVシリーズに劣り、「Copilot+ PC」の要件を満たしていない。なお前世代の製品となる「Core Ultra シリーズ1」についても、同じくNPUの性能が低いため「Copilot+ PC」には対応していない。
型番の最後の「V」を探そう
Intel製CPUを搭載した「Copilot+ PC」が欲しければ、CPUに『Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2』の Vシリーズ を選ばねばならない、ということはご理解いただけただろうか。次は具体的に対応製品を探す方法だ。これは現在3つの方法がある。
1つ目は、「Copilot+ PC」対応をうたっている製品を選ぶこと。Intel製CPUで「Copilot+ PC」に対応できるのは、現時点ではVシリーズしかないので、間違いない。
2つ目は、CPUの型番を見ること。「Core Ultra シリーズ2」の製品は、いずれも「Core Ultra 2xx」という数字に続いて、アルファベットが付加される。Vシリーズは「Core Ultra 200Vシリーズ」とも呼ばれる。
実際の製品はグレードに応じて、「Core Ultra 9」、同「7」、同「5」と分かれる。最上位の製品は「Core Ultra 9 288V」で、最下位は「Core Ultra 5 226V」となる。「Copilot+ PC」に対応したCPUかどうかの見極めは、型番の最後に「V」が付いているかどうか。この1点だけで判断できる。
3つ目は、開発コードネームで調べる。「Lunar Lake」と呼ばれる製品は、「Core Ultra 200Vシリーズ」のみ展開している。つまり現状では「Lunar Lake」=「Core Ultra 200Vシリーズ」であり、「Copilot+ PC」の要件を満たしている。
以上3点の中から、どれか1つでも当たっていれば、「Copilot+ PC」の要件を満たした製品を探し出せる。ただし、「Core Ultra 200Vシリーズ」を搭載しているからといって「Copilot+ PC」に対応するとは限らないので、お目当てのPCが「Copilot+ PC」に対応しているかどうかは確認しておくといい(基本的には全て対応していると思われる)。
NPU搭載でも「Copilot+ PC」になれないCPUもある
ここまでわかっていれば、「Copilot+ PC」に対応しないPCをうっかり購入することはないはずだ。ただ「Core Ultra 200Vシリーズ」を搭載した製品を探し出すのはかなり手間がかかる。
インターネットで製品検索する際、「Core Ultra シリーズ2」とすると、HXシリーズを搭載したPCもヒットしてしまうし、「Core Ultra 200Vシリーズ」や「Lunar Lake」で検索しても、うまくヒットするとは限らない。新製品が出たら、どのCPUを搭載しているのか1つ1つ確認しながら探すしかない状態だ。
『AI処理のためのNPUを積んでいればいいのでは?』と思われるかもしれないが、これも間違い。「Copilot+ PC」には40TOPS以上の性能のNPUが必要という要件があり、Intel製CPUでこれを満たせるのが現時点では「Core Ultra 200Vシリーズ」しかない。Intel製CPUでもNPUを搭載している製品はかなり増えてきているが、それらではパワー不足なのだ。
最近は「Core Ultra シリーズ2」のHXシリーズやHシリーズの製品も増えてきている。これらにもNPUは搭載されているため、PCによってはAI対応をうたっているものもある。確かにNPUを使うAI機能は存在するが、「Copilot+ PC」とは別物だ。Intel製CPUを搭載した「Copilot+ PC」を求める方は、くれぐれも型番のチェックをお忘れなく。
なお、他社のCPUで「Copilot+ PC」に対応する製品はとても簡単に見分けられる。Qualcommは「Snapdragon X」シリーズが全て「Copilot+ PC」の要件を満たしており、製品名に「Snapdragon X」と入ったものを選べば大丈夫だ。
AMDは製品名に「Ryzen AI」と付いているものなら「Copilot+ PC」の要件を満たす。基本的にこれだけだが、AMDはNPUの呼称としても「Ryzen AI」という名前を使っているので、混同しないよう注意。あくまでCPUの製品名に「Ryzen AI」と入っているかどうかだけを見ればいい。
Intelも次世代CPUではもう少し見分けやすくなっていて欲しいところだ。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/