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「Centrino以来のモメンタム」Core Ultra(シリーズ2)の登場、PCの“常識”が変わるターニングポイント
AI PC時代にインテルの本気が垣間見えた「Intel Connection 2024」
2024年9月19日 12:00
インテル(株)は、9月3日~4日の2日間、東京ミッドタウンで同社のカンファレンスイベント「Intel Connection 2024」を開催した。
今回のIntel Connectionは、“技術とビジネスをつなぎ社会を前進させる”をテーマとしており、同社の製品やソリューションが、公共、教育、エネルギーなどの分野で、どのように効果をもたらすのかを紹介。インテル米国本社やパートナー企業などのビジネスパーソンが登壇する基調講演をはじめ、多岐に渡る分科会が開催された。
製品やソリューションのブース展示もあり、同社の取り組みを知ることができるイベントだが……。
「Core Ultra プロセッサー(シリーズ2)」正式発表。いよいよIntel版「Copilot+ PC」が登場へ
今回は、2日目の基調講演で、同社のモバイル向け新型CPU「Core Ultra 200Vプロセッサー」シリーズ(Core Ultra プロセッサー シリーズ2)が国内でも正式発表され、注目を浴びていた。
「Core Ultra 200Vプロセッサー」は、AI処理に特化したプロセッサー“NPU”を内蔵した「Core Ultra」シリーズの第2世代にあたるCPUで、第1世代に比べてパフォーマンスが格段に向上されているという。
基調講演の後半に登壇した同社の技術本部で部長を務める安生健一朗氏によると、「Core Ultra 200Vプロセッサー」は、第1世代の「Core Ultra」シリーズに比べ、電力効率が大幅に向上しているとのこと。
CPUの電力効率は最大2.29倍向上。GPUの場合は最大2倍を達成しており、Core Ultra 200Vの中で2番目の性能を有する「Core Ultra 7 268V」では、ライバルと目されるQualcommのCPU「Snapdragon X Elite(X1E-80-100)」の電力効率をも凌駕。x86アーキテクチャとしては破格の省電力性を備えている。
一方、気になるAIの処理性能は、NPUだけでも最大48TOPSの処理性能を実現。CPU・GPU・NPUを合わせたプラットフォーム全体では、最大120TOPSという驚異的な処理性能を誇る。これは、第1世代の約3倍ものAI処理性能を確保しているということになる。
AI処理性能が大幅に向上した「Core Ultra 200Vプロセッサー」は、Microsoftが推進するAI PC「Copilot+ PC」のハードウェア要件をクリアできる。待望のIntelプラットフォーム版「Copilot+ PC」が、11月より提供開始予定ということも発表された。満を持して投入される「Core Ultra 200Vプロセッサー」で、出遅れていたAI対応CPUプラットフォームの巻き返しを狙う。
「Centrino以来のモメンタム」パソコンの“常識”が変わるターニングポイント
基調講演に参加して気になったのは、同社の登壇者が「Core Ultra 200Vプロセッサー」の位置付けを説明する際に「Centrino(セントリーノ)」を引き合いに出していた点だ。
「Centrino」とは、インテルが2003年に発表したモバイルPC向けプラットフォームのブランドで、CPU、チップセット、通信デバイスをパッケージ化した製品のシリーズ。それまでは、CPU(プロセッサー)単体での提供が主流だったが、あらかじめ無線LANモジュールをセットにして提供するプラットフォーム化を推進し、ネット時代に最適なスタイルへノートパソコンの“常識”を書き換えた。現在では、デスクトップパソコンがWi-Fiを搭載していることも珍しいことではなく、パソコンの基本構成が変革するターニングポイントになったと言えるだろう。
そう仮定してみると、インテルの「意思」が見えてくる。
同社では、AI時代を迎えたいまを、パソコン変革のターニングポイントとして捉えており、NPUが組み込まれた「Core Ultra」シリーズは、AI時代に最適なパソコンにクラスチェンジさせるための必須アイテムにしたいというわけだ。「Core Ultra 200Vプロセッサー」が、処理性能を向上させつつ、消費電力を大幅に低減し、さらにAI処理性能を劇的にパワーアップ、と妥協のない仕様に仕上がっているのも頷ける。今後のパソコンは、Wi-Fiの搭載が普通のことであるように、NPU搭載が“当然”となっていくのだろう。
他社のプラットフォームを凌駕するほどの性能を誇る「Core Ultra 200Vプロセッサー」を引っ提げて、AI PCの市場に切り込む同社だが、その一方で「Core Ultra」シリーズのパフォーマンスを遺憾なく発揮してもらうための施策も抜かりない。
同社では、AI PC向けのアプリケーション開発ツール「OpenVINO ツールキット」を無償で提供しており、AIサービスなどの開発ノウハウを持っていないエンジニアでも、容易にAIモデルの開発が可能になる。また、AI PC向けのアプリケーションやサービスの開発者向けのコミュニティとして「インテルAI PC Garden」をDiscord上で運営しており、「Core Ultra」シリーズを採用したAI PCの普及を強力にバックアップ。同社の本気度が見て取れる。
「Intel Connection 2024」でも、2日目の分科会では、アプリケーションメーカーの開発者を招き、AI処理のデモを実施したり、導入事例を紹介したり、同社自らがAIアプリ・サービスの開発を推進していることをアピールしていた。
格段にパフォーマンスが向上した「Core Ultra 200Vプロセッサー」ばかりに目を奪われがちな「Intel Connection 2024」だったが、基調講演や分科会のセッションに目を向ければ、約20年の時を経てパソコンがターニングポイントを迎えていることがわかる。今後のパソコンの変革が楽しみになるイベントだった。