石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

第13・14世代Coreプロセッサーは故障回避のためBIOS(UEFI)アップデートが必須

BIOS更新の手順と注意点を解説

第13・14世代Coreに関する不具合対応の情報を記したWebサイト

Intel製デスクトップ向けCPUが故障する問題に対応

 Intel製CPUである第13・14世代Coreプロセッサーにて、CPUの動作に不具合が出たり、CPU自体が故障したりする問題について、同社が根本原因を発見し、問題に対応するアップデートを提供している。

 これは結構大きな問題なのだが、気にせずPCを使い続けることも可能なので、放置してしまう人も多いと思う。しかし放置した場合には故障するリスクが残り続けるため、対象となるCPUを利用している場合は、可能な限り対応しておく方がいい。どうすればいいのか、筆者の事例を交えて説明しよう。

「0x12B」マイクロコードの適用が肝

 不具合に関する詳しい内容は、同社のホームページに書かれている。この内容を全て理解する必要はないが、1つだけ把握しておくべき箇所がある。

For all Intel Core 13th/14th Gen desktop processor users: the 0x12B microcode update must be loaded via BIOS update and has been distributed to system and motherboard manufacturers to incorporate into their BIOS. Intel is working with its partners to encourage timely validation and rollout of the BIOS update for systems currently in service. This process may take several weeks.

Intel Core 13th and 14th Gen Desktop Instability Root Cause Updateから引用

 日本語で簡単に説明すると、デスクトップ向け第13・14世代Coreプロセッサーを搭載した全てのPCは、「0x12B」マイクロコードを適用したBIOSにアップデートする必要がある、ということだ。

 当初はゲームプレイ時などの高負荷でPCが不安定になるという話だったが、アイドル時など低負荷時に電圧の不具合が起きてCPUがダメージを受けることで故障するというのが根本原因らしく、用途を問わず全てのユーザーが対象になる。

 また対象となるのは一部の高性能な製品だけという話もあったのだが、この案内を見る限り、全てのデスクトップ向け第13・14世代Coreプロセッサーが対象とされている。なおモバイル向けCPUや、25日に発売予定のArrow Lakeファミリー(Intel Core Ultra 200Sシリーズ)の製品に影響はないとしている。

 アップデートはマザーボードのBIOS(UEFI)として提供されるため、Intelがマザーボードメーカーへ情報を提供し、メーカー各社が最新のBIOSを公開して、それをユーザーが製品に適用するという手順になる。今回の対応の発表は9月25日だが、対象製品へのBIOSアップデートが提供されるのはそろそろかなというタイミングだ。

 なお最近のPCでは、BIOSはUEFIに置き換わっているため、アップデートするのはBIOSではなくUEFIだ。ただこういう説明では慣例的にUEFIもBIOSと呼ばれているし、先のIntelの説明でもBIOSと書かれているので、本稿でもUEFIを含む形でBIOSと呼称させていただく。

実際のアップデート手順を確認

 次は実際の作業の話に移る。もし使用しているデスクトップPCがメーカー製の完成品であれば、各社が提供するメンテナンス用アプリでアップデートできる可能性がある。BIOSだけでなく、アプリやドライバも一括してアップデートできるものが多いので、まずはそちらを実行してみるといい。

 もしそういったアプリがないPCや、自作PCなどでサポートがない場合は、自力でBIOSをアップデートすることになる。これについても、マザーボードメーカーがWindows上でドライバ類を含めて一括管理できるアプリを用意していることが多いので、そちらを利用するのも手だ。これは製品によるので、製品のWebサイトで確認していただきたい。

 今回はなるべく応用の効く形で説明したいので、もう少し原始的なやり方で進める。筆者がいつもやっている方法で、BIOS画面からBIOSのアップデートを行う。もっと前はフロッピーディスクやUSBメモリを起動ディスクにしてBIOSアップデートを行っていた。これが最も安全な手順とも言えるのだが、さすがに面倒なので今回は割愛する。

 筆者が使用しているPCは、CPUにCore i5-13600Kが搭載されており、今回の問題の対象となる。自作PCで、マザーボードはGIGABYTE製「Z690 UD」。GIGABYTEのWebサイトから、本製品の製品ページを開く。

筆者が所有しているマザーボード、GIGABYTE製「Z690 UD」のWebサイト

 続いてサイト内の「サポート」の項目へ移動。メーカーによっては「ダウンロード」などと表記されている場合もあるが、とにかくBIOSなどのデータが提供されている場所を探そう。BIOSのダウンロード場所が見つかったら、最新のBIOSの情報を確認する。

「Z690 UD」の「サポート」の項目で、「BIOS」と書かれたところをクリック

 今回の問題に対応したBIOSアップデートが提供されているかどうかは、各製品のホームページで確認する必要がある。その際、アップデート内容に「0x12B」の文字が入っていれば、対応済みとわかる。ちなみに「0x129」や「0x125」というマイクロコードもあるが、これは少し前に行われた対応。「0x12B」に対応したBIOSが未提供の場合は、それをいったん入れるか「0x12B」を待つかは好みで選ぶといい。

 「Z690 UD」では、10月22日時点でバージョンF29が最新。詳細を見ると「microcode 0x12B」の文字があるので、対応済みのBIOSであることが確認できる。今回はこちらを利用するので、ファイルをダウンロードする。

最新のバージョンF29に「0x12B」の表記がある

 ちなみに他の製品では、「0x12B」のマイクロコードが適用された後、さらに別のBIOSアップデートが提供されている可能性がある。その場合はさらに古いBIOSデータの更新情報を確認し、「0x12B」のマイクロコードが適用済みかを確認する。もしあるなら、その後で提供されたBIOSにも適用済みのはずなので、その時点での最新版を利用して構わない。

 ダウンロードしたファイルは、大抵の場合はzipファイルになっている。こちらを解凍し、適当な場所に保存しておく。保存場所はメモするなりして覚えておくこと。

 ここまで用意できたら、PCを再起動する。PCが再起動した直後、BIOSを呼び出すキーを押すと、BIOSの画面に入れる。「Z690 UD」では[Del]キーだが、製品によって異なるので確認していただきたい。筆者はキーがわからない場合、再起動後に[Del]キーや[F2]キー、[F8]キーなどを適当に連打しておくが、あまりお行儀が良くないので、不慣れな方は素直にマニュアルなどを見て調べよう。

 このほか、Windows 11からBIOSへ移動する方法もある。[設定]から[システム]-[回復]と選び、[PCの起動をカスタマイズする]の項目にある[今すぐ再起動]をクリック。PCが再起動したら、[トラブルシューティング]、[詳細オプション]、[UEFIファームウェアの設定]と選んで[再起動]をクリックすると、再び再起動した後にBIOS画面が出せる。どうしても呼び出しキーがわからない時に使うといい。

[システム]-[回復]-[今すぐ再起動]と辿ってトラブルシューティングの画面を出せば、再起動時のキー入力なしでBIOSを呼び出すことも可能

 次はBIOSの更新。「Z690 UD」では「Q-Flash」という機能でBIOSをアップデートできる。さきほど解凍しておいたzipファイルの中身にBIOSのファイルが入っているので、それを選んで実行する。あとは勝手に再起動やアップデートが行われるので、数分経てば作業終了。1回やり方を覚えてしまえば、何も難しいことはない。

「Z690 UD」のBIOS画面。設定項目を細かく表示する[ADVANCED MODE]で、英語表記にしてある
BIOSから[Q-Flash]を呼び出す。アップデート前のBIOSバージョンはF27だった
先にダウンロードしておいたBIOSのダウンロードファイルを選択
BIOSをアップデートするか問われるので、[Yes]をクリック
[Press to Start]をクリックすると、再起動が入り、BIOSアップデートが始まる。あとは待つだけ
アップデート終了後のBIOS画面。BIOSバージョンは無事にF29になった

 この手順は製品やメーカーによって異なるが、概ね似たようなものだ。ちなみに筆者はBIOSの言語設定をあえて英語にしているが、日本語も用意されているので、よく見ればわかる部分も多いはず。対象となるCPUを使っている人にはほぼ必須の作業となるので、ぜひチャレンジしてみて欲しい。

 今回は不具合対応としてBIOSをアップデートしたが、これ以外の時にもBIOSをアップデートするメリットはある。例えばシステムの安定性や省電力性の向上、新しいCPUへの対応、相性問題が出やすいメモリの互換性の向上、さらには新機能の搭載など、かなり大きな変更が加えられることもある。

 以前はBIOS更新に失敗してPCが故障するという話もあったが、最近は対策が取られて壊れにくくなった上、BIOS更新作業自体もとても簡単になっているので、さほど恐れることはない。特に購入後、年単位でBIOSアップデートをしていない場合は、最新のBIOSがないか確認し、アップデートしてみることをおすすめする。

発売直後の製品だった場合、BIOSにさまざまな修正が加えられていることも多い。PCの安定性を高める意味でも、BIOSアップデートをしておくといいだろう
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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