石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

Intel製CPUの不具合対応BIOSアップデートについてQ&A形式でお答え

「影響のあるCPUは?」、「放置するとどうなる?」など

BIOSアップデートの画面

第13・14世代CoreプロセッサーのBIOSアップデートについて補足

 先週、第13・14世代CoreプロセッサーのBIOSアップデートに関する記事を掲載したところ、想像以上に多くの反響をいただいた。その中には不安な声も少なからずあったので、いくつかの疑問点についてQ&Aの形でお答えしていこうと思う。

 なお先週お伝えしたとおり、BIOSアップデートを行うべきであるという結論は変わらない。先週の記事と合わせてご覧いただき、BIOSアップデートの手続きを進めていただきたい。

影響を受けるCPUは一部と聞いていたけど?

 先週の記事で紹介したIntelの情報では、第13・14世代Coreプロセッサー全てが対象とされているのだが、実際のところは違うのではないかと筆者も思っている。

 先にPC Watchが報じた情報でも、対象とされるCPUは一部製品に限られている。Core i3などの下位製品は対象外で、Core i5でも13600Kや14600Kより下位の製品は対象外だ。

 これでピンと来た方はPCに詳しい方に違いない。対象外となる製品の境目にあたるCore i5-13500やCore i5-14500は、上位製品に比べてキャッシュメモリが少なかったり、対応メモリ速度が遅かったりする違いがある。実際には第12世代Coreプロセッサーと同じ、Alder Lakeアーキテクチャーを採用していると見られている。

 つまり対象となるのは、Raptor Lakeアーキテクチャーを採用した製品であり、たとえ第13・14世代Coreプロセッサーであっても対象外の製品はある、という判断ができる。

 ただ、自分が使っているPCに何というCPUが使われていて、そのCPUのアーキテクチャーが何であるかを把握できる人、というのはそう多くはない。だったらIntelとしては『第13・14世代Coreプロセッサーは全部対応してくれ』と言う方が間違いない。やることはBIOSのアップデートだけであり、たとえ対象外のCPUでもBIOSをアップデートすることは悪いことではない。

 また対象となるCPUではなかったとして、本当に問題がないという保証もない。Intelは今回の対応で、原因を見つけるまでに時間がかかり、暫定対応となるマイクロコードをいくつも用意した経緯がある。その辺りも含め、本当に安全なのかを詳しく調べるくらいなら、さっさとBIOSをアップデートしてしまう方がいいだろう。

 Intelとしても、対応を遅らせる人が多くなればなるほど、故障するCPUはどんどん増えていくことになる。また不具合対象ではないCPUだからとBIOSアップデートを行わなかったマザーボードで、不具合対象のCPUに交換してしまうことも起こり得る。総合的に考えて、『第13・14世代Coreプロセッサーを使っている人は全員BIOSをアップデートしてくれ』というメッセージを出す方が間違いない。

既に故障していないかを確認する方法は?

 過去には特定のインストールプログラムを繰り返し実行することで、問題の有無を確認できるという話もあったが、今回のトラブルに対するチェックツールは提供されていないようだ。

 その代わりというわけではないが、「インテル プロセッサー診断ツール」というものが用意されている。CPUの機能を検証するプログラムで、負荷テストなどを含む複数のテストが自動で実行される。

 このツールはIntelのWebサイトからダウンロードできる。インストール後、ツールを起動するとテストが始まり、数分かけて結果が表示される。

こちらは筆者のPCでのテスト結果。問題の対策なしに2年ほど使用しているPCだが、無事にテストをパスできた

 このテストをパスできれば、ひとまず大きな問題はないと考えていいだろう。とはいえ、これが絶対的な安心を与えてくれるものとも言い切れない。

 故障するというと、CPUが一切動作しなくなるというイメージを持つと思うが、今回の問題はそうとは限らない。CPUに異常な電圧がかかって徐々にダメージを受けるというもので、一部のプログラムを実行している時など、特定の条件下で動作が不安定になるなどの問題が出ることがあるという。『だいたい動くが、時々不安定』という壊れ方があり得る。

 「0x12B」マイクロコードでは、根本原因の対策に加えて、『CPUを不安定にする特定の条件』を発生させないようにする設定も組み込まれていると考えられる。そのため、BIOSをアップデートすることでPCの安定性が回復したという話も聞く。

 これで安定動作するなら問題ないとも言えるし、BIOSアップデート前にダメージを受けていることが明らかなのだから問題だ、とも言える。CPUではイメージがわきにくいと思うが、『寿命が縮まった状態』とも言えるわけで、結局のところ、対象となるCPUのユーザーがスッキリする回答は今のところない。

 『Intelは全製品をリコールしろ!』という声も上がりそうだが、仮に交換対応が可能だとしても、自作PCであればCPUを外して返送、メーカー製PCならPC丸ごと返送という手続きになるはず。現状何も問題が起きていないなら、そこまで手間をかけたくないという人も多いだろう。

保証対応は?

 ではもし今後、何らかの理由でCPUの動作に異常が出た時にはどうするのか。当然、保証対応を受けることになる。Intel製CPUには、通常で3年の保証期間が設けられている。そして今回の問題の対象とされるCPUには、保証期間が2年延長されている。

 対象となるCPUで最も古い13世代Coreプロセッサでも、発売から約2年なので、あと3年ほどは保証期間があるということだ。壊れないに越したことはないわけだが、もしもの時には保証期間が延長されていることを覚えておくといい。

Intelが公開した、保証を2年延長するCPUのリスト

BIOSアップデートをせずに放置すると壊れる?

 放置したからといって壊れるとは限らない。実際、筆者も2年間ほぼ毎日、対象となるCPUを搭載したPCを使用してきたが、特に目立ったトラブルは起きていない(2年のうちには何度かブルースクリーンを目にはしたが、これが原因かどうかはわからない)。

 ただ、問題がアイドル時などの低負荷時に起こるものである以上、「0x12B」マイクロコードが適用されたBIOSにアップデートをせずに放置すればするほど、CPUへのダメージは蓄積していく。それで壊れるのが明日なのか、保証が切れる3年後以降なのか、最後まで壊れないのかは、誰にもわからない。

 確実に故障リスクがあり、原因と対策がわかっている以上、対応しておくべきであるのは間違いない。とはいえ、BIOSアップデートをしなかったから罰せられるわけでもないし、故障した時に保証が受けられなくなるわけでもない。そのリスクを理解し、許容するならば、放置すればいい。もちろん筆者はおすすめしない。

新しいBIOSが見つからないんだけど?

 「0x12B」マイクロコードを含むBIOSが、まだ提供されないという製品もあるだろう。これはIntelではなくマザーボードやPCメーカーの作業が発生するためで、各社が対応するBIOSを用意するまでは待つほかない。ただこれ以前にも暫定対応として用意されたマイクロコードがあるので、ひとまず最新のBIOSにしておく意味はある。

 またWindows上から実行できるBIOSアップデートツールでは、最新BIOSの有無をツールが確認するものもあるが、『Webサイトでは最新BIOSがあるのに、ツールでは拾ってこない』ということが時々ある。これには参照しているサーバーが違うとか、BTOメーカーのPCで実は個別のBIOSがあるとか、何かしら理由があると思われる。

 ツールから新たなBIOSが落とせるまで待つか、Webサイトからダウンロードしてきて別の方法でアップデートするかは、個人の判断で決めていただくしかない。もし自作PCなのであれば、前回記事のような手順でWebサイトから最新BIOSを見つけてきてインストールするのがおすすめだ。

筆者が使用しているGIGABYTE製マザーボードのアップデートツール。既にBIOSアップデート済みなので、新しい情報は見つからない

AMDのCPUはBIOSアップデートをすべき?

 今回の不具合はIntel製の第13・14世代Coreプロセッサーが対象なので、もちろんAMD製CPUへの影響はない。急ぎBIOSをアップデートする必要もない。

 ただ、BIOSのアップデートはAMD製CPUに向けても行われている。特にAM5プラットフォームでは、一部のゲームのパフォーマンスが向上するという内容もあるため、積極的にアップデートしておく方がいい。

BIOSアップデートにチャレンジしよう

 前回から繰り返しになるが、BIOSアップデートはそう難しい手続きではない。特にメーカー製のアップデートツールがある場合、インストールするBIOSを間違えることもなく(別製品のBIOSはインストールできないようになっているはずだ)、自分で探しに行く必要もないため、手軽に行える。

 ただ、ツール自体のダウンロードは必要な場合があるので、マニュアルや製品Webサイトを参照する努力はしていただきたい。今回は問題が大きいだけに、できればメーカー各社も、BIOSアップデートの手順を広く伝えていただければと思う。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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