使ってわかるCopilot+ PC

第57回

『画像のここだけ残したい/消したい』が超簡単! 「ペイント」の新AI機能「オブジェクト選択」

「ペイント」のAI機能に追加された「オブジェクト選択」

「ペイント」の新たなAI機能

 先日紹介した「Copilot+ PC」の「ペイント」アプリに搭載されたAI機能「ステッカージェネレーター」。「ペイント」にはこれ以外にもう1つ、新たなAI機能として「オブジェクト選択」が追加されている。

 「オブジェクト選択」という名前は素直すぎてAIの華々しさがない(笑)のだが、実用性はかなり高い便利な機能だ。早速見ていこう。

人物でも物でも簡単に範囲選択できる

 「ペイント」で適当な画像を開いた後、右上にある[Copilot]ボタンをクリック。ここからAI機能が選択できる。今回は[オブジェクト選択]を選ぶ。

 この状態でマウスカーソルを動かすと、カーソルが重なった部分の画像をAIが解析し、そのオブジェクトの範囲を自動認識する。実際の例を見ていただくと、写真中央にいる人物にカーソルを当てると、その人物の輪郭に沿った範囲にグレーのフィルタのような表示がなされる。

中央にいる人物にマウスカーソルを当てると、人物の輪郭を自動で捉えてくれる

 大きな人物だけでなく、後ろに小さく映った人物も正しく輪郭を取ってくれるし、街灯などのオブジェクトも認識できる。

左にいる人物もきちんと認識された
街灯も上から下まで判別されている

 さらに小さい画像に写った猫や、空だけを選択するといったことも可能。輪郭を1ドットも違わずぴったりと認識するまでには至らないが、カーソルを当てるだけでこの精度の自動認識ができるのだから十分に高性能だ。手作業でやるよりはるかに早いし、これを標準アプリの「ペイント」でできるのは大きい。

小さい画像の猫もしっかり認識
風景写真の空だけを選択もできる

AI処理と組み合わせてさらに便利に

 選択範囲が正しく設定できたら、その場で左クリック。するとAIが判定したとおりの範囲選択がなされた状態になる。そして選択範囲の下には[生成フィル]と[生成消去]のアイコンがあり、ここから直接AI加工ができる。

クリックすると範囲選択され、下にAI機能が表示される

 [生成消去]は、選択した範囲にあるものを消去しつつ、周囲になじむように背景を生成する機能。例の写真であれば、人物を消去しつつ、背景の道や建物をそれっぽく生成して、元からいなかったように見せる。

 範囲が大きかったり、背景の画像によっては不自然さが残ることはあるが、「オブジェクト選択」で対象を自動選択して狙った対象だけを消去できるという、AIの合わせ技がうまく効いた機能だ。

AI処理を示す虹色の枠が表示され、しばらく待つと……
中央の人物が消え、背景を埋めるように描画された

 [生成フィル]はさらに一歩進んだ機能。[生成消去]と同じく、選択した範囲にあるものを消去し、背景になじむよう生成しながらも、テキストで指示したオブジェクトを新たに生成する。

 例えば中央の人物を選択した上で[生成フィル]を選び、『赤い人型のロボット』と指定してみると、人物を消去して背景を埋めた上で、赤い色のロボットが歩道に立つように描画された。描画したものが写真の内容と合わないものの、背景にマッチングさせて描画しているのがわかる。

人物を消去した上、テキストの指示に合わせた画像を生成する

 範囲選択後にAI処理を使わず、普通に画像処理もできる。[Del]キーを押して削除すれば、人物だけが白抜きされた形になる。範囲を反転させれば人物だけを残すことも可能だ。

 「ペイント」の選択範囲の反転操作は、左上にある選択範囲のアイコンからプルダウンメニューを表示させ、[選択の切り替え]を選ぶ。

AI機能を使わず普通に消去
範囲を反転すれば人物だけ残せる。その他の操作ももちろん可能だ

 子供の思い出アルバムを作るのに、写真から子供だけをうまく切り出したい……というようなニーズはあるだろう。完璧な切り出しを求めるわけでないなら、「ペイント」だけで簡単にできてしまう本機能はかなり重宝する。「Copilot+ PC」を使うメリットの1つとして挙げられる便利な機能だ。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/