使ってわかるCopilot+ PC

第58回

GPT-5を採用した「Copilot」の「Smartモード」とは? 「ChatGPT」とも比較してみた

「Copilot」に実装されたGPT-5

「Copilot」にGPT-5が実装ってどういう意味?

 「Copilot」アプリの新たな動作モードとして、「Smart」モードが実装された。説明には「GPT-5を使用してタスクに基づいて深く、または迅速に考えます」と書かれている。

 GPT-5とは、OpenAIが開発した最新の大規模言語モデル(LLM)のこと。8月頭に同社のサービスである「ChatGPT」に実装されたものだが、すぐさま「Copilot」でも使用できるようになった。

 こう説明されても、『じゃあ「Copilot」は「ChatGPT」と同じなの?』といった疑問がわいてくるだろう。結論を述べるのはとても難しいのだが、いったい何が違うのか、実際に比較しながら見ていきたい。

「Copilot」のモード違いで質問を投げてみる

 「Copilot」でGPT-5を使うには、チャットウインドウの下部にあるオプションで「Smart」を選択する。従来は素早い回答の「クイック応答」、最大30秒思考してから答える「Think Deeper」、最大10分のデータ参照を含む詳細レポートを出力する「Deep Research」の3つのモードから選択できた。「Smart」は4つ目の選択肢となる。

現在は4つのモードを選択できる

 「Smart」はGPT-5を使うとあるので、『あなたはGPT-5ですか?』と直接聞いてみたところ、『私はMicrosoft Copilotという名前であり、特定のモデル名や番号を名乗らない』と返答された。答えてくれないなら仕方ないので、各AIに同じ質問を投げて、比較調査してみよう。

「Copilot」は自らのモデルを明かしてくれない

 使用するのは、「Copilot」の「Smart」と「クイック応答」の2つ、そして「ChatGPT」。説明どおりならば、「Smart」と「ChatGPT」はGPT-5、「クイック応答」はGPT-5ではない従来型の何かと想像できる。

 では第1問。「インプレスの窓の杜について端的に教えて」。端的にとしたのは、素直に答えさせるとかなり長くなることが多いためだ。

 「Smart」と「クイック応答」で比較してみると、どちらも情報ソースを提示しながら正確な情報を示している。内容に若干の違いはあるが、1発出しの回答のブレの範囲かなと思えなくもない。どちらも十分な答えだ。「ChatGPT」の方は、端的にという指示を確認していながら長文回答になってしまった。

「Smart」の回答
「クイック応答」の回答
「ChatGPT」の回答

 第2問は明確な答えがないもので、「いま、日本が世界に最も誇るべきものを1つだけ挙げるとしたら何?」とした。答えは三者三様となったが、どれもまずまず納得できる内容。説明の解説も自然で適切だ。

「Smart」の回答
「クイック応答」の回答
「ChatGPT」の回答

 第3問はちょっと意地悪なネットスラングのテスト。「ぬるぽ」とだけ言うと何と答えるだろうか? 答えはいずれも「ガッ」を最初に持ってきており、ネットスラングを理解している。ただし「ChatGPT」がそれだけを答えたのに対し、「Copilot」の2つは説明を丁寧にしている。ここはシンプルな回答が欲しかった。

「Smart」の回答
「クイック応答」の回答
「ChatGPT」の回答

 第4問は回答に指示を出しつつ、密かに罠をしかける質問。「きのこの里とたけのこの山、どちらが優れているか要点を表で比較しながら答えて」。

 答えはいずれも、きのこの山とたけのこの里という2つのチョコレート菓子の対決構造と理解していた。表組みでの比較も行われており、どれも似たようなポイントをチェックしている。なお質問では商品名をあえて間違えて伝えているのだが、それも理解して正しい名前で回答していた。

「Smart」の回答
「クイック応答」の回答
「ChatGPT」の回答

 最後の問題はストレートに「CopilotとChatGPT、どちらが優れていると思う?」と聞いてみた。「Smart」と「クイック応答」は人によるという感じだが、過去の会話データから筆者には「Copilot」を勧められた。表現の違いはあるが言っていることはかなり近い。「ChatGPT」の回答は「GitHub Copilot」との比較の話になっており、そもそもの解釈が違った形だ。

「Smart」の回答
「クイック応答」の回答
「ChatGPT」の回答

迷ったら「Smart」の汎用性と、ゆるい使用制限が魅力

 上記5問の「Smart」の回答はいずれも素早いものだったが、深く考えてから回答させることもできる。質問の中に『よく考えて答えて』などと指示をすると、数十秒の思考プロセスを経てから回答する。これは推論モデルと呼ばれるものの挙動で、GPT-5の特徴の1つであり、最近は他のLLMでも広く採用されている。

 今回はこちらから思考するよう指示をしているが、会話の中で思考が必要とAIが判断すると、自動で思考モードが動くようになっている。必要に応じて素早い回答と思考プロセスを経た回答を使い分けるところが「Smart」の(あるいはGPT-5の)特徴と言える。

「Smart」に思考させる指示を出すと、しばらく思考時間が取られる。思考の内容も見える

 「Copilot」は以前から推論モデルを持っており、「Think Deeper」を選択すると使用できる。こちらはアイコンの動きがあるだけで思考内容は見せないが、挙動としては同じようなものだ。

 ただし、「Smart」のように即回答か思考かの使い分けはなく、「Think Deeper」は必ず思考し、「クイック応答」は思考を経ず回答する。ユーザーが使い分けられるから便利とも言えるし、勝手にコントロールしてくれた方が便利とも言える。

「Think Deeper」は必ず思考するが、アイコン表示のみで思考は見えない

 他にもいろいろと試してみたが、GPT-5が使える「Smart」と、従来型の「クイック応答」とで、質の差を大きく感じることはなかった。明確なのは思考モードの切り替えくらいで、他は好みの範疇と言っていいかもしれない。

 逆に言えば、従来からある「クイック応答」もちゃんと進化してきていた証拠でもある。特にマイクロソフトの製品について聞くと、極めて的確かつ丁寧に答えてくれるので重宝する。決して他に後れを取ってはいないし、一般の方が利用するAIチャットツールとしては一流の性能があると言っていい。

 その上で「Copilot」の大きな魅力は、使用量の制限がゆるいこと。他社の大手LLMは無料で使える範囲がかなり限られているが、「Copilot」はその上限がかなり大きく、普通に使っている方が利用制限がかかることはめったにないだろう。

 まだLLMの利用経験がない方、あるいは日々カジュアルにAIチャットを使ってみたいという方に、「Copilot」の「Smart」をおすすめしたい。「Copilot」で一番わかりやすい、汎用モードと考えるといいだろう。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/