山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
スマホサイズのE Ink端末にカラーモデルが登場。モノクロモデルとの違いは?
「BOOX Palma 2 Pro」vs「BOOX Palma 2」
2025年12月26日 16:45
BOOXから、スマホ型のカラーE Ink端末「BOOX Palma 2 Pro」が登場した。スマホ感覚で手軽に使えるBOOXの「Palma」シリーズは根強いファンを持つが、これまではモノクロモデルのみのラインナップだった。今回、新たにカラーモデルが追加されたことで、さらに幅広い用途に対応することが期待できる。
もっともE Inkは、カラーはモノクロに比べて解像度が低いなど、クオリティ面では課題も見受けられるため、本製品がどうなのかは気になるところ。またパネル以外の相違点の有無も気になるところだ。今回は国内代理店からカラーの「BOOX Palma 2 Pro」と、従来のモノクロ版「BOOX Palma 2」を借用したので、実機でしかわからないポイントを中心に、両者の違いを見ていこう。
なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』を、サンプルとして使用している。
カラーかモノクロか以外にも違いは多数
では外観から見ていこう。なお本稿ではカラー・モノクロが直感的にわかりやすいようPalma 2 Proを「カラーモデル」、Palma 2を「モノクロモデル」と表記する。このあと紹介するように実際にはE Inkパネル以外の相違点も数多くあるので注意してほしい。
まずは寸法。公式サイトを見ると高さ×幅は同じとされているが、実際にはカラーモデルのほうが一回り大きい。また厚みがカラーモデルが8.8mm、モノクロモデルが8mmと相違がある。重量はカラーモデルが175g、モノクロモデルが170gとされているが、実測ではそれぞれ173g/171gと、差はほとんどない。
ボタンの配置も大きく異なる。モノクロモデルは右側に電源ボタンと音量ボタンが並ぶAndroidでよく見られる配置であるのに対して、カラーモデルは本体右側に電源ボタン、左側に音量ボタンというiPhoneに似た配置になっている。任意の機能を割り当てられるカスタムボタンはどちらも左側に配置されているが、こちらは形状が異なっている。つまり面影がほとんどない。
さらにカードスロットはカラーモデルが左側面、モノクロモデルは底面と、配置がまったく異なる。カラーとモノクロとで異なる基板を用いているのは明らかで、製造元が異なるのかもしれない。このように、単にE Inkパネルをモノクロからカラーに置き換えただけの製品ではないことは、品定めの段階で把握しておいたほうがよいだろう。
一方のスペックについては、モノクロモデルがメモリ6GBなのに対し、カラーモデルは8GBへと増量されているが、ストレージは同じ128GBで、両者ともにリフレッシュを高速化するGPUベースの独自技術「BSR」に対応。バッテリーは両者ともに3950mAh、またメモリカードはどちらも最大2TBまでということで、多くの部分において違いはない。
また生体認証については、両製品ともに電源ボタンと一体化した指紋認証に対応する。このほか両製品ともフラッシュ付きの16MPカメラを搭載するが、これは通常の写真撮影用ではなく、ドキュメントのデータ化のためのものなので、スマホと比較する場合は留意する必要がある。
ちなみにカラーモデルにしかない特徴として、スタイラスに対応していることが挙げられる。手書きノートとしても使えることは、購入にあたってひとつのプラス材料になるだろう。さらにモバイル通信に対応しているほか、GPSの搭載によりマップアプリなどの利用に対応するため、モノクロモデルとは違った使い方を生み出せるはずだ。
ホームや設定画面には目立った相違点なし
では実際に使ってみよう。ボディは最初に持った時は一瞬軽く感じるが、これは樹脂製ゆえ感覚的にそう感じるだけで、実際の重さは173g/171gとあって一般的なスマホとそう違いはない。iPhoneに例えると標準モデルとほぼ同等、Proモデルよりは軽いが、Airほどではない、という表現になる。
形状だけでなく使い勝手もまさにスマホそのもの。背面は独特の凸凹があるパターンで、保護ケースがない状態でも手にフィットし、うっかり滑って落としにくい。ただしこの凹凸ゆえ背面に粘着テープで固定するタイプのアクセサリが取り付けられないデメリットはある。
インストール手順はBOOXシリーズ共通の、まずは電源周りの設定を行ってホーム画面の表示にこぎつけたあと、Google アカウントへのログインや通信回りの設定を行うという手順だ。一般的なAndroidと違って通信回りの設定が後回しなので、Wi-Fiを設定せずに使い始め、いきなりモバイル通信の設定を行うことも可能だ。
ちなみにカラーモデルのみ対応するモバイル通信は、今回試したIIJmioのSIMでは、挿入しただけでドコモのSIMと認識されて利用可能になるなど、あまりに簡単で拍子抜けしたほどだ。それ以外のAPNについても手順書が添付されているので、自力でスマホのSIMの設定をしたことがあれば迷うことはないだろう。
本製品を起動したあとのホーム画面、さらに画面を上から下へスワイプすると表示されるコントロールセンターは、アイコンの配置こそ異なるものの、カラーモデルとモノクロモデルとで大きな違いは見受けられない。特にコントロールセンターは、モノクロモデルと同じ白黒2階調のアイコンなので、配置さえ合わせてやれば見た目に区別はつかない。リフレッシュモードなどの調整を行うE Inkセンターの画面も同様だ。
タッチ操作に伴う反応は、ざっと使った限りでは違いは感じない。ただし本製品はベゼルと画面が地続きのフラットな状態にあるので、端までタッチしやすい一方で、うっかり触れてしまっての誤操作も思いのほか発生しやすい。
一方の動作速度は、操作によってカラーのほうが速く感じたり、稀にモノクロのほうが速く感じたりと、行う操作によって差があるが、平均するとおおむね同等という印象だ。一般的にはカラーE Inkのほうが書き換えに負荷がかかるはずだが、メモリ容量を多く搭載していることが功を奏しているようだ。ちなみにベンチマーク上は、カラーモデルのほうが1~2割ほど高いスコアとなるケースが多い。
表示品質はモノクロのほうが上と感じる場合も
表示性能について見ていこう。Kaleido 3を採用したカラーモデルはモノクロとカラー、2つのレイヤーを備えており、解像度がそれぞれ異なる。モノクロは824×1,648ドット(300ppi)で、これはCarta1200を採用したモノクロモデルの解像度と横並びだが、カラーは解像度が412×824(150ppi)と低い。
カラーE Inkはこのようにモノクロに比べてカラーの解像度が低いのが一般的で、リフレッシュモードの設定によってはさらに粗くなるため、もう少し上積みは欲しい印象だ。とはいえこればかりはカラーE InkのKaleido 3がより進化しなくては、現時点ではどうしようもない。
こうした傾向は以前紹介したKindleのカラーモデルに近いものがあるが、BOOXはE Inkセンターを用いて表示まわりのカスタマイズが可能で、それらの設定ひとつで見え方がガラリと変わるため、一概にどちらのほうがクオリティが上とは言いにくい。ただし全体的な傾向としては、白黒で表示されているコンテンツはモノクロモデルのほうがクオリティは高いと感じることは多い。
ところでここまでの写真からもおわかりいただけるように、この両製品を使い比べると気になるのは、E Inkの地の色の違いだ。一般的にE InkはフロントライトをONにすることでグレーの背景を白く見せているが、今回紹介しているカラーモデルはこの背景のグレーがかなり濃く、フロントライトをONにしてもグレーの域を脱しない。モノクロモデルと比べた場合のウィークポイントのひとつだ。
総合評価ではやはりカラーか
以上のように、カラーE Inkは、色が付いていることは魅力ではあるものの、表示まわりのクセの強さはモノクロE Ink以上で、なかなか一筋縄では行かないというのが率直な印象だ。
前回紹介したKindleのカラーE Inkモデルにも言えることだが、クオリティ的にはやはりもう少しのプラスアルファはほしいと感じる。特に今回のカラーモデルは地の色がかなりグレー寄りなので、コントラストの弱さが気になることも多い。
とはいえ、一旦色がついたE Inkを目にしてしまうと、モノクロE Inkは物足りなく感じてしまうのもまた事実。読むコンテンツがテキストメインであっても、メニューや本のライブラリなどはカラーが多用されているので、テキスト中心であればモノクロで問題なしと単純に割り切るのも難しい。さらにモバイル通信に対応していることで、読書以外の用途、例えばWebブラウジングなど幅広く使えるのでなおさらだ。
また今回のカラーモデルはスタイラスの利用に対応し、手書きノートとしても使えるなどの付加価値もある。カラーとモノクロで価格差はそこそこあるが(標準価格はカラー69,800円、モノクロ47,400円)、現状ではカラーを調達しておいたほうが満足度は価格差以上にあるのではないかというのが、本稿の結論だ。


































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