山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

「iPhone Air」は電子書籍ビューワーとして優秀? 「iPhone 17 Pro Max」と比較

iPhone Air(左)とiPhone 17 Pro Max(右)

 iPhoneは過去2世代にわたり、ラインナップの中に「Plus」と「Pro Max」という2つの大画面モデルが存在し、標準的な画面サイズである6.1型が物足りない場合に選択できた。今秋登場したiPhone 17シリーズはこの「Plus」に相当するラインナップが消滅し、大画面モデルは「iPhone 17 Pro Max」に一本化された。

 一方これとは別に、標準サイズのiPhoneより大きい6.5型という画面を持つ「iPhone Air」が新たにラインナップに加わった。このiPhone Airは、一般的なiPhoneが備える機能の一部を省略しつつも、厚み5.64mm、なおかつ重量が165gという、薄型軽量を実現しているのが大きな特徴だ。

 今回はPro Maxシリーズには及ばないものの比較的大きな画面サイズを備え、薄型軽量を特徴とするこの「iPhone Air」と、名実ともに大画面モデルであるフラグシップの「iPhone 17 Pro Max」について、電子書籍のビューワーとして使う場合にどのような差があるかを、実機で比較しながら見ていく。

 なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』をサンプルとして使用している。

薄型軽量が特徴、画面もそこそこ大きい「iPhone Air」

 まずは両製品のアウトラインから見ていこう。iPhone Airは、iPhone 17シリーズと同時に今秋発表された薄型を特徴とするモデルで、最薄部はわずか5.64mmと、厚み8mm前後が一般的な通常モデルよりも圧倒的に薄いボディが特徴だ。

 画面サイズは6.5型と、標準モデルである「iPhone 17」と、今回の比較対象である大画面モデル「iPhone 17 Pro Max」のちょうど中間。それでいて重量は165gと、iPhone 17 (177g)よりも軽量なことが特徴だ。画面サイズがより小さなモデルであればより軽量なモデルは存在するが、6.5型という大画面で165gという軽さは(少なくともiPhone)では唯一無二の存在だ。

 その一方、薄さを追求する過程で犠牲になったとみられる箇所はいくつかある。例えばカメラは、iPhone 17では超広角と広角、2つのレンズを搭載しているが、本製品は広角しか搭載していない。またバッテリーの容量も控えめだったり、スピーカーがステレオではなくモノラルだったりと、一般的なiPhoneであれば搭載していて当然の機能があちこち削られているなど、かなり尖った設計だ。

「iPhone Air」。正面から見ると何の変哲もないiPhoneだ
横から見るとその薄さが分かる。最薄部はわずか5.64mm

名実ともにフラグシップだが厚く重い「iPhone 17 Pro Max」

 続いて比較対象となるiPhone 17 Pro Maxについて見ていこう。名前からもわかるように、従来の「Pro Max」シリーズの最新機種にあたり、iPhoneのラインナップの中ではフラッグシップに相当する。画面サイズは6.9型と最大で、バッテリーの持ちも39時間と、超ロングライフが特徴だ。

 もっともその反面、重量は233gと、従来モデルのiPhone 16 Pro Max(227g)よりもさらに増し、歴代で3番目にヘビーなボディとなっている。前述のiPhone Airがラインナップに追加されたことで、重量は気にせずあらゆる機能を詰め込んだ、ということなのだろう。カメラのレンズは超広角/広角/望遠の3眼構成、スピーカーはもちろんステレオだ。

「iPhone 17 Pro Max」。こちらも正面から見ると変わった特徴はない
最薄部8.75mmと、現行のiPhoneの中ではもっとも厚みがある

両者を並べて比較すれば画面サイズに差はあるものの…

 では両者を比較しながら見ていこう。画面サイズは、iPhone Airが6.5型、iPhone 17 Pro Maxが6.9型ということで、横に並べて比較すれば違いはあるのだが、単体で見るとそれほど差は感じず「どちらも大画面」という印象のほうがより強い。

左がiPhone Air、右がiPhone 17 Pro Max。それほど極端なサイズ差はない

 コミック表示時のポイントとなる画面の幅は、iPhone Airが69.5mm、iPhone 17 Pro Maxが72.5mmと、3mmの差があるぶん後者のほうが大きく表示できる。ただ、Pro Maxシリーズの初期のモデルであるiPhone 11 Pro Maxは画面幅が68mmで、そこから世代を経るごとにじわじわ広がっていった経緯があり、ちょっと先祖返りしただけで、iPhone Airが小さい印象はそれほどない。

 さらに解像度はいずれも460ppiと横並びであるほか、ProMotion対応、True Tone、広色域ディスプレイ(P3)や輝度についても同一。反射防止コーティング、耐指紋性撥油コーティングといった仕様もまったく変わらず、そうした意味で表示まわりの差は感じにくい。

コミックを表示したところ。サイズはひとまわり違うが、そこまで極端な差でもない
iPhone Airの表示幅は69.5mm
iPhone 17 Pro Maxの表示幅は72.5mm

 これに加えて、用途に目を移してみても、コミックの見開き表示が難しい点や、雑誌など判型が大きいページの表示に向かない点などはどちらの製品も変わらないので、そうした意味でも違いを意識しづらい。アスペクト比も同一なので、ページ内で上下の余白が占める割合も変わらない。

 当然のことながら、利用できる電子書籍アプリに関しても違いがない。Apple製品ということで、もっとも相性がよいのは「Apple Books」で、それ以外に「Kindle」などさまざまなアプリが利用できる。

 またブラウザーを使用するマンガビューワーなども、問題なく利用が可能だ。このあたりの裾野の広さはApple製品ならではの強みがある。

1ページあたりの表示サイズは、見開き表示にしたiPad mini(右)に及ばない
横向きにするとここまで差がつく。見開き表示に適さないのは明白だ
こちらはテキストを表示したところ。1ページあたり2~3行ほどの差が出る

画面サイズはほぼ同等ながらとてつもない重量差

 一方で、この両製品でもっとも差があり、かつ電子書籍ユースでの影響が大きいのは重量だろう。iPhone 17 Pro Maxが、歴代で3番目に重い233gなのに対して、iPhone Airはわずか165g。ほんのわずかな画面サイズの違いでありながら、重量差は68gもある。

 68gと言えば、第3世代iPhone SE(144g)のおよそ半分ということで、いかに差があるかがわかる。iPhone Air×3台と、iPhone 17 Pro Max×2台がほぼ同じ重量と考えると、誤差レベルでは片付けられない差だ。

 これだけの重量差があると使い勝手が異なってくるのは当然で、いったんiPhone Airに慣れてしまうと、iPhone 17 Pro Maxを長時間持つのは苦痛になる。片手で長時間保持し続けなくてはならない電子書籍ユースでは、これは使い勝手に大きな差をもたらす。

iPhone Airの重量は165g。このサイズにしてはかなり軽い
iPhone 17 Pro Maxは実測232gと、歴代でも3番目の重さとなるヘビー級
片手保持を補助するバンド類を使っていなければ、重量はかなりの負担になるだろう

 一方でこの両製品については、バッテリー持続時間の違いがよく取り沙汰される。具体的には、iPhone Airが27時間、iPhone 17 Pro Maxが39時間(いずれもビデオ再生時の公称値)と、10時間以上の差がある。

 とはいえこれは、バッテリーの消費が少ない電子書籍ユースであれば致命傷にはならない。そもそも3世代前のiPhone 13 Pro Maxは、iPhone Airと1時間しか変わらない公称28時間だったので、iPhone 17 Pro Maxが長いだけという解釈が正しい。動画撮影や重めのゲームなど、消費電力の激しい用途の合間に電子書籍を楽しむといった極端な使い方でなければ、あまり気にする必要はないだろう。

 もうひとつの両製品の違いであるスピーカーについてはどうだろうか。iPhone Airはモノラル、iPhone 17 Pro Maxはステレオということで、音楽や動画の再生では気になるところだろうが、電子書籍で利用機会があるとすればせいぜい読み上げ機能の利用時くらいで、またその場合もスピーカーではなくイヤホンを使えば支障はない。差を感じるのは限られた利用スタイルだけだろう。

底面の比較。iPhone Airはスピーカーはモノラル、iPhone 17 Pro Maxはステレオだ

差を埋めるのが難しいカメラの違い

 一方、電子書籍ユースとは直接関係ないが、両製品の差を埋めきれないのがリアカメラだ。具体的には、iPhone 17 Pro Maxは超広角・広角・望遠という3つのレンズを搭載しており、標準倍率は0.5 / 1 / 2 / 4 / 8倍と幅広く対応するのに対し、iPhone Airは広角のみで、標準倍率も1倍と2倍だけだ。

 遠景を撮るだけならば、デジタルズームを使えばひとまず事足りるが、超広角側については、背後に下がれない環境では工夫して撮れるものではないだけに、カメラ機能を多用するユーザにとっては致命的だ。どうしても超広角が必要な場合、iPhone 17という選択肢もあるが、画面サイズが6.1型と小さくなってしまう。画面サイズと両立するならば、やはりiPhone 17 Pro Maxだろう。

背面カメラ。iPhone Air(左)は1レンズ、iPhone 17 Pro Max(右)は3レンズを搭載する
カメラアプリの標準倍率はiPhone Air(左)が1/2倍、iPhone 17 Pro Max(右)は0.5/1/2/4/8倍と幅広い。またデジタルズームは40倍まで対応する

まずは店頭で手に取ってみるべき

 以上ざっと見てきたが、両製品の実売価格は、iPhone Airの159,800円(256GB)からに対して、iPhone 17 Pro Maxは194,800円(同)から。約4万円の価格差は無視できないという意見もあるだろうし、一方でシングルレンズのスマホに15万円を超える出費するのはいかがなものか、という意見もあるだろう。

 個人的には、電子書籍ユースの割合が高ければ、iPhone Airはまたとない製品だと感じるが、このあたりの判断は電子書籍以外の利用目的によっても変わってくるだろう。現在、販売計画に対して出荷台数が伸びていないと言われるiPhone Airは、今後販路によっては安く調達できるようになる可能性もあり、そのあたりも織り込んでおけば納得の行く買い物ができそうだ。

 ともあれ、既存のiPhoneシリーズの利用経験があればおおむね重量やサイズ感の想像がつくiPhone 17 Pro Maxと異なり、iPhone Airはそれら常識が根本から覆される製品である。実機を手に取ると考えが180度変わってもおかしくない製品であるため、直に触れたことがない人は、まずは販売店の店頭で手に取ってみることをお勧めする。