山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

iPhone Airよりも軽い! 長時間の読書でも疲れない電子書籍向けデバイス2製品を比較

今回は重量が「iPhone Air」以下の、電子書籍向けデバイス2製品を紹介する

 Appleの新型スマホ「iPhone Air」は、従来のiPhoneよりもはるかに薄い5.6mmのボディと、165gという軽さを売りにしている。もっとも重量に関しては、6.5型という画面サイズの割には軽量というだけで、過去のiPhoneの中にはこれよりも軽いモデルもあるほか、スマホというくくりも外して電子書籍向けの端末で探せば、選択肢はまだまだある。

 今回は、そんなiPhone Airよりも軽量で、電子書籍ユースに適した2つの端末を紹介するほか、軽さにこだわった選択肢には他にどんな製品があるかを見ていく。なお、画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』をサンプルとして使用している。

6.5型にして165gの軽量スマホ「iPhone Air」

 まず登場したばかりの「iPhone Air」について見ていこう。今秋発表された新しいiPhone 17シリーズのひとつである本製品は、画面サイズが6.5型という大画面ながら、最薄部はわずか5.64mm、そして重量は165gに抑えられている。一定の画面サイズを求めつつ、軽さ薄さも追求したい欲張りなユーザーにぴったりだ。

 解像度は460ppiということで、クオリティ面は問題なし。屋外でのピーク輝度3,000ニトということで直射日光下でも見やすい。スマホゆえ、標準の「Apple Books」だけでなくさまざまな電子書籍ストアが利用できるのも利点だ。大画面と言っても一般的なスマホと同じ縦長のアスペクト比ゆえ、見開き表示が期待できないこと、また雑誌などの大判コンテンツの表示に向かないのが、電子書籍ユースではマイナスと言ったところだろうか。

 一方、電子書籍ユースには関係しないが、カメラがシングルレンズだったり、バッテリー容量が控えめだったりと、一般的なiPhoneと比べると見劣りする点は少なからずある。メインのスマホとして使う場合は、どのような機能が省かれているのか、チェックしておく必要はあるだろう。

画面サイズは6.5型。iPhoneの標準サイズと大画面サイズの中間に相当する大きさだ
厚みは5.64mm。同時発売のiPhone 17シリーズの各製品より約2~3mmも薄い
重量は165g。軽さをアピールしているが、あくまでも『6.5型のスマホとしては』であって、より軽量な端末がないわけではない
テキストを表示したところ。縦長なので1行の文字数が多すぎて目で追うのがつらいが、表示性能も高くおすすめできる
コミックを表示したところ。単ページ表示に限定されるが、スマホとしては表示サイズも大きめで読みやすい

Kindleストア専用ながら158gの軽量モデル「Kindle(第11世代)」

 では『iPhone Airより軽量』である候補を見ていこう。ひとつめは、Amazonの6型E Ink端末「Kindle(第11世代)」だ。同社の電子書籍端末「Kindle」シリーズのラインナップの中ではもっとも小型のモデルで、重量は158gと、iPhone Airの165gを下回っている。

 画面サイズは6型とコンパクトだが、iPhone Airなどのスマホにみられる縦長ではなく、アスペクト比が本に近い4:3であるため、コミックなどを表示した場合は6.5型のiPhone Airよりもはるかに大きなサイズで表示できる。解像度も300ppiということで、iPhone Air(460ppi)ほどではないが、電子書籍を表示するには十分なクオリティだ。

 一方で、最近登場しつつあるカラーE Inkではなく、従来からあるモノクロE Inkなので、カラーページの表示には向かない。また利用できる電子書籍ストアがKindleのみということで、この時点でユーザーを選ぶ製品だ。軽さは大きな特徴だが、それ以外では特徴に乏しく、汎用性もない製品であることは、知っておいたほうがよさそうだ。

画面サイズは6型。アスペクト比は4:3と、紙の本の比率に近い
厚みは8.0mmで特に薄型というわけではない。本体にあるボタンはこの底面にある電源ボタンのみ
重量は公称158g、実測で154g。樹脂素材ということもありボディはかなり軽量だ
テキストを表示したところ。紙の本に近いアスペクト比で読みやすい。タッチ操作に対するレスポンスも高速だ
コミックを表示したところ。単行本よりは若干小さいが十分な大きさで読みやすい。余白を切り詰めて表示するモードもある
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驚きの148gを実現、さまざまなストアに対応する「BOOX Go 6」

 続いて紹介するのは、E Ink電子ペーパーを搭載したAndroid端末「BOOX」シリーズのひとつ、「BOOX Go 6」だ。6型という画面サイズでありながら重量は148gと、iPhone Airはもちろん、前述のKindleよりもはるかに軽いボディが特徴だ。

 モノクロE Ink電子ペーパー搭載、かつ6型という画面サイズは前述の「Kindle」と共通しているが、Kindleストアにしか対応しない前述の「Kindle」と異なり、Google Playストアからさまざまな電子書籍アプリをインストールできる。4:3というアスペクト比ゆえ、画面全体を使って少ない余白で電子書籍のページを表示できる。

 一方で、利用する電子書籍アプリごとに最適化設定が必要になるという、汎用E Ink端末ならではの手間がかかるほか、BOOX独自の高速化規格「BSR」には対応しないため、特にコミック表示に関しては、レスポンスは決して高速ではない。どちらかというとテキストの表示に向いた端末という位置づけになるだろう。同じBOOXシリーズの一部製品にある、ページめくりボタンのギミックがないのも要注意だ。

画面サイズは6型、アスペクト比は4:3と前出のKindleと共通だが、ボディサイズはひとまわり小さい
厚みは6.8mmと、E Ink端末としてはかなり薄型。左端にはカードスロットがあり容量追加にも対応する
重量は公称148g、実測では143gとさらに軽くなる。持っていてフワフワとして落ち着かないほどの軽さだ
テキストを表示したところ。紙の本に近いアスペクト比で読みやすい。ただしメモリは2GBと控えめなことから、ページめくりなどの挙動はややもっさりしている
コミックを表示したところ。サイズ自体は十分だが、リフレッシュモードの設定などによっては画質は低下する場合があるので注意(後述)
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いずれも表示クオリティは文句なし、では違いは?

 上記の3製品を並べてみると、まず目につくのはサイズの違いだ。それぞれ6.5型、6型、6型というサイズだが、アスペクト比の違いによって見た目が極端に違うことがよくわかる。コミックでは横幅が広いほうが有利、テキストではレイアウトは可変であるため横幅が狭いほうが持ちやすいなど、読むコンテンツによって向き不向きがある。

 表示性能については、解像度ベースではiPhone Airが一歩抜けているが、一般に電子書籍の表示において基準とされる300ppiは残る2製品もクリアしているので、実用上は気にする必要はない。どちらかというと、E Inkの2製品はカラーページの表示に対応できないことのほうがネックだろう。

左から、iPhone Air(6.5型)、Kindle(6型)、BOOX Go 6(6型)。アスペクト比の違いによる見た目の大きさの違いが明らかだ
テキスト表示のクオリティの比較。左から、iPhone Air(460ppi)、Kindle(300ppi)、BOOX Go 6(300ppi)。どれも十分なのだが、こうして比較するとやはりiPhone Airのシャープさが目立つ
OLEDディスプレイ採用のiPhone Airと異なりKindle(中)、BOOX Go 6(右)のE Ink電子ペーパーはモノクロなのでカラーページもグレーで表示される
コミックのクオリティの比較。解像度に差は多少あるが単ページ表示に求められる水準は問題なくクリアしている
BOOXは用いる電子書籍ストアアプリごとにリフレッシュモードの設定が必要。画質重視かスピード重視かによって見た目も変わる
BOOXのリフレッシュモードごとの見え方の違い。左の「ノーマル」は十分なクオリティだがページめくり時の残像が多く、右の「スピード」はレスポンスは高速だが画質にざらつきがある。どちらを使うかはケースバイケースだ

 表示性能以外で気をつけたいのは通信方式だ。そもそもがスマホであるiPhone Airと異なり、KindleおよびBOOX Go 6は、モバイル通信には対応せず通信方法はWi-Fi一択となる。電子書籍はダウンロードしておけばオフラインで読めるので、常時ネットに接続しておく必要はないが、外出先で使う機会が多いのならば気をつけたい。

 E Ink採用の両製品のメリットとして挙げられるのは駆動時間だ。iPhone Airはビデオ再生時で公称27時間であるのに対し、Kindleは「最大6週間」、またBOOXも数日単位であるなど、桁違いの長寿命だ。外出時にはとりあえずバッグの中に放り込んで持ち歩き、充電するのは週末だけ、といった使い方にも十分に対応できる。

 最後に価格についてだが、iPhone Airは15万円台。19,980円のKindle、28,900円のBOOX Go 6とはケタ違いだ。iPhone Airは少なくとも電子書籍ユースのためだけに購入する製品ではなく、それ以外の用途も含めてこの価格に納得できるかどうかが、購入にあたってのポイントとなる。

惜しくも条件に適合しなかった製品をまとめて紹介

 最後に、今回の「iPhone Airより軽量」という条件には惜しくも適合しなかった製品をいくつか紹介しよう。

 BOOXでは、スマホ型の6.13型E Ink端末「BOOX Palma 2」が170gと、条件にかなり近い。ただしスマホサイズで170gというのは探せばなくはないので、E Inkであることを除けば希少価値はそれほどない。むしろ本製品より一回り大きい6.5型で165gのiPhone Airが、いかに軽いかがよく分かる。

 これ以外では、楽天Koboの6型モデル「Kobo Clara BW」およびそのカラーモデル「Kobo Clara Colour」が174gと比較的軽いが、同じく6型のKindleやBOOX Go 6ほどではない。カラーE Inkの6型というのは希少だが、6型ならばもう少し軽くあるべきという印象は否めない。また名前からもわかるように対応電子書籍ストアは楽天Koboのみと、汎用性には乏しい。

 スマホにこだわるならば、MVNOなどでは現在も継続販売されているiPhone SE(第3世代)という選択肢もある。重量は144gと、今回紹介している製品の中では最軽量だ。ただし画面サイズは4.7型止まり、解像度は1,334×750ドットしかないので、コミックの表示は厳しい。スマホであることを条件に探すならば、iPhoneにこだわらず、Androidも含めて探したほうがよいだろう。


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 以上、iPhone Airよりも軽い端末をざっと見てきたが、やはり軽量な端末というのは、何か肝心な機能が欠けていたり、あるいはラインナップの中ではエントリークラスで動作がもっさりしたりと、何かが犠牲になっているケースが多い。電子書籍の専用機なのか否かにもよるが、何を削って何を残すかに、設計に当たってセンスが問われている印象だ。

 それを考えると、カメラなど明確な欠点はあるものの、画面サイズの割には明らかに軽量で、かつ他製品を圧倒する薄さを実現しているiPhone Airは、ひとつの到達点と言っていい。欠点を許容できるならばという条件付きだが、片手で長時間保持しても疲れにくいiPhone Airは、電子書籍を楽しむにはよい選択肢であることは間違いなさそうだ。

背面の比較。Kindle(中)、BOOX Go 6(右)はカメラは非搭載だ