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WindowsをAIエージェントOS化する基盤「MCP on Windows」がパブリックプレビュー

アプリがコネクターを公開・登録、エージェントが活用。OS内蔵のコネクターも提供

「MCP on Windows」のアーキテクチャー

 米Microsoftは11月18日(現地時間)、テクニカルカンファレンス「Ignite 2025」で、「MCP on Windows」のパブリックプレビューを発表した。

  「MCP」(Model Context Protocol) は、AIエージェントが外部ツールやデータソース、サービスなどと接続できる仕組みとして2024年末、Anthropicによって導入されたオープン標準仕様。PCにおけるUSBコネクターにたとえられることがあるように、AIエージェントに挿して、機能を拡張できるようにする仕組みだ(そのため、エージェントコネクターや、単にコネクターとも呼ばれる)。

 たとえば、Windowsには以下の内蔵MCPサーバー(エージェントコネクター)が実装され、AIエージェントに公開される。

  • ファイルエクスプローラコネクター:AIエージェントがローカルファイルにアクセスし、ユーザーの同意を得て、必要なファイル操作(検索、読み取り、書き込み、編集など)を行えるようにする
  • システム設定コネクター:AIエージェントがOSの設定を変更できるようにする

 エージェントがこうしたコネクターに接続できれば、ローカルファイルを扱うタスクをエージェントに任せたり、システムの設定変更を自動化したりできるようになるだろう。

 しかし、エージェントがコネクターを利用できるようにするには、エージェントがコネクターの存在を知り、安全に接続できる仕組みをOS側で用意する必要がある。そこで、同社は今年5月に開催された「Build 2025」で、WindowsをMCPにネイティブ対応させる計画を発表。必要な機能を実装して一部のパートナーを対象にプライベートプレビューとしてテスト提供しながらフィードバックを募っていた。それが今回、ようやく一般のアプリ開発者にも開放されることになった。

 開発者が自分のアプリをAIエージェントと接続できるようにするには、自分のアプリにMCPサーバーを実装し、エージェントコネクターとしてパッケージングし、Windowsの「オンデバイスレジストリ」(ODR)へ登録する必要がある。AIエージェントはODRをスキャンして、アプリのコネクター(MCPサーバー)を検出。MCPサーバーが提供するアプリ機能にアクセスするという流れだ。

 エージェントとコネクター間の通信は、すべてOSが用意する「MCPプロキシ」を経由して行われる。このプロキシは

  • 認証:呼び出し元であるMCPクライアントが正規のものであるかどうか検証
  • 認可:権限とポリシーの適用。機能を制限して、プライバシーとセキュリティを保護
  • 監査:コンプライアンスのためにすべてのインタラクション(やりとり)ログを記録

という3つの処理を行う。つまり、エージェントとコネクターが互いに正規のもので、信頼できることを保証し、もし不正があればあとから検証できるようにするわけだ。

 こうしたコネクター登録・接続の仕組みがOSに備わっていれば、以下のようなメリットが得られる。

  • 開発者:プラットフォーム固有の実装が不要になる。コネクターさえ公開していれば、さまざまなエージェントでアプリ機能を活用してもらえる
  • IT管理者:組織で安全にエージェントを展開・管理できる
  • エンドユーザー:セキュリティリスクを抑えつつ、AIアシスタントに日常タスクの自動化を依頼できる

 同社はローカルのエージェントコネクターだけでなく、クラウドサービスへ接続できるリモートエージェントコネクターもサポートする考え。ローカルコネクターと同様、ODRに登録してエージェントがスキャン、アクセスできるようにするという。

 これらのプレビュー版のプラットフォーム機能は、近日公開予定だ。MCPサーバー・クライアントを構築するための開発キット「MCP C# SDK」「MCP TypeScript SDK」、パッケージングの仕組み(MSIX、MCPバンドル)、サンプルコードなども提供される。