山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
名機「Kindle Oasis」からの乗り換えに適したE Ink端末は?
Kindle上位モデル「Kindle Paperwhite」か、ページ送りボタン「BOOX GoColor7Gen2」か
2025年7月11日 16:27
かつてAmazonの電子書籍端末「Kindle」の最上位機種だった「Kindle Oasis」は、ページめくりボタンを備える使い勝手の良さゆえ愛用者も多かったが、すでに終息しており後継も存在しない。いまはまだ現役で使っていても、故障や紛失などによって、乗り換え先を考えなくてはいけない日は、いつか必ず来ることになる。
いま「Kindle Oasis」を買い替えるにあたり、E Ink電子ペーパーにこだわるならば、大きく分けて2つの選択肢がある。ひとつは、現行のKindleの上位モデル「Kindle Paperwhite」への移行だ。ページボタンこそないものの、同じKindleファミリーであることから、使い勝手の違いに戸惑うことはまずない。現行の「Kindle Paperwhite」は、上位モデルにふさわしいパフォーマンスを誇っているので、スペック的にも遜色はない。
もうひとつはBOOXなど、汎用のE Ink端末に乗り換えるという選択肢だ。こちらであれば、「Kindleストア」以外のさまざまな電子書籍ストアにも対応できるほか、カラーE Ink搭載モデルもチョイスできる。BOOXの最新モデル「BOOX GoColor7Gen2」であれば、カラーE Inkを搭載するほか、「Kindle Oasis」に似たページめくりボタンも搭載しているので、機能的には同等以上ということになる。
今回はこの2製品について、「Kindle Oasis」の最後のモデルである2019年発売の第10世代から移行した場合のメリットおよびデメリットを紹介する。なお、画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』を、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最終号を、サンプルとして使用している。
https://item.rakuten.co.jp/sktn/boox-go7g2/
まずは両製品の特徴をざっと紹介
まずはざっと両製品の特徴をチェックしておこう。現行の「Kindle Paperwhite」は、2024年10月に発売された第12世代モデルで、画面サイズは「Kindle Oasis」と同じ7型へと大型化。さらに以前は8GBが標準だった内蔵ストレージは16GBへと底上げされるなど、「Kindle Oasis」亡きあとのフラッグシップモデルにふさわしいスペックへと進化している。ただし32GBモデルはラインナップしないほか、「Kindle Oasis」の特徴であるページめくりボタンは非搭載だ。
比較対象となる「BOOX GoColor7Gen2」は、Onyxから2025年5月に国内発売されたばかりのニューモデルだ。Gen 1にあたる従来モデルとの相違点は、別売のInkSenseスタイラスを用いて手書きメモの作成に対応したことで、それ以外の特徴、具体的にはカラーE Ink電子ペーパーを搭載することや、ページめくりボタンを備えることはまったく同等だ。画面サイズも7型のまま変わらない。
カラーE Inkはメリットもあればデメリットもある
では両者を比べて違いを見ていこう。画面サイズは同じ7型だが、E Ink電子ペーパーは、Kindleがモノクロであるのに対して、BOOXはカラーなのが大きな違いだ。
解像度は、モノクロ300ppiは共通で、BOOXのカラーは150ppiと若干低い。これは昨今のカラーE Inkに共通する仕様で、色がついた部分は粗くなることから、ベタ塗りなどでは問題なくとも、写真などではカラーE Ink特有の色のにじみが出ることもあり、色のないモノクロのほうがむしろストレスなく見られる場合も多い。
このあたりは色がついていることを優先するか、それとも見やすさを優先するかによって、人によっても評価が違ってくるはずだ。ちなみにカラーE Inkのカラーレイヤーだけをオフにし、モノクロだけの表示に切り替えるようなモードは搭載しない。
もうひとつの大きな違いとしては、Kindleは電子書籍ストアはAmazonの「Kindleストア」しか利用できないのに対して、BOOXは「Google Play」経由でさまざまな電子書籍ストアを利用できることが挙げられる。dブックなど稀に相性が悪いストアがあることは留意すべきだが、複数の電子書籍ストアを併用したいユーザーにとっては何よりのメリットだ。
一方で、これらのアプリはカラーE Inkでの表示に最適化されているわけではないので、利用にあたってはリフレッシュモードの最適化や、ページめくりボタンへの機能の割り当てといったカスタマイズが、アプリごとに必要になる。Kindleは「Kindleストア」に特化しているぶん、表示周りの設定は一切不要なので、手間だけで言うとKindleの圧勝だ。
「Kindleストア」に限ればパフォーマンスはKindleが上だが…
「Kindleストア」を表示した場合のパフォーマンスについてはどうだろうか。結論から言ってしまうと、ページめくりの速度やタッチ操作に対するレスポンスは、Kindleのほうが高速だ。「Kindleストア」しか使っておらず、レスポンスのよさをとことん追求したければ、Kindleを選んだほうがよいだろう。
とはいえBOOXも、Kindleにとって純正の電子書籍ストアである「Kindleストア」で比較すると分が悪いというだけで、E Inkデバイスとしては高速な部類に入る。またページめくりボタンが利用できるので、タップやスワイプに比べて確実に、かつスピーディにページをめくれる利点もある。特に今回のように「Kindle Oasis」からの移行であれば、ほぼそのままの使い勝手を備えたBOOXは魅力的だろう。
操作しやすさ、持ちやすさという観点ではどうだろうか。ボディ形状はKindleは縦長、BOOXはページめくりボタンがあるため正方形に近く、持ち方はそれぞれ変えざるを得ないが、重量はKindleが実測211g、BOOXが191gとそれほど極端な差はなく、手への負担という点においてはそれほど差はない。
一方でボディ背面は、BOOXは凹凸のある加工で滑りにくくなっており、ケースを付けないという前提であればKindleよりも優秀だ。厚みについてもKindleが7.8mm、BOOXが6.4mmとBOOXのほうがよりスリムで、持ち歩く場合も邪魔になりにくい。一方で、防水機能(IPX8準拠)を備えているのはKindleだけで、BOOXは撥水加工にとどまっている点は留意したい。
ストレージ容量は、Kindleは16GBということで、「Kindle Oasis」の中でも上位の32GBモデルを使っていた場合は減ることになるので要注意。一方のBOOXは64GBの内蔵ストレージに加えて、最大2TBのメモリカードに対応している。Kindleはあくまでも電子書籍の専用端末であるのに対して、BOOXはAndroidタブレットの延長線上にある製品で、ほかのさまざまなコンテンツを保存する可能性があることによるものだろう。
このほか両者ともに横並びの機能としては、2.4GHzと5GHzの両方に対応したWi-Fiや、暖色と寒色の両方に対応したフロントライト、USB Type-Cポートなどが挙げられる。「Kindle Oasis」はWi-Fiが2.4GHzのみ対応、かつポートはmicroBだったので、どちらの製品に乗り換えてもメリットがある。
どちらのモデルを選ぶべき?
以上を総合すると、「Kindleストア」しか利用しておらず、またページめくりのパフォーマンスが低下するのは避けたいユーザーは、「Kindle Paperwhite」に移行したほうが賢明だろう。実売価格は27,980円と、従来モデルからは大きく値上がりしているが、「Kindle Oasis」は3万円前後という価格帯だったので、横並びということになる。
ただしこのKindleファミリーには、2025年6月時点で日本未発売ながら、「Kindle Paperwhite」をベースにカラーE Inkを搭載した「Kindle Colorsoft」なるモデルが存在しており、これの国内販売が今後解禁されれば、より適したモデルとして注目を集めるのは必至で、ここが難しいところだ。
一方で、「Kindleストア」以外のさまざまな電子書籍ストアを利用したい場合や、カラーE Inkを使いたいユーザー、さらにページめくりボタンが必須の場合は、今回紹介した「BOOX GoColor7Gen2」はよい選択肢だろう。「Kindleストア」を利用する場合のパフォーマンスはやや落ちるものの、「Kindle Oasis」をベースにさらにワンランク上の読書体験をしたい場合にはもってこいだ。
ネックは価格で、実売価格が4万円台ということで、「Kindle Paperwhite」との比較ではやや分が悪い。また流通ルートが狭いことに加えて供給は必ずしも安定しておらず、品切れすると長期にわたって欠品が続くこともしばしば。注文から到着までしばらく待たされることを織り込んだうえで、思い立ったら早めにオーダーしたほうがよいだろう。