山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
Fire HD 8対抗のお勧めタブレット2製品を比較 ~低価格でも使える端末はどれ?
『FireはGoogle Playストアが使えないのでちょっと……』という人に贈る
2025年3月25日 06:55
Amazonのメディアタブレット「Fire」シリーズは、その価格こそリーズナブルだが、購入にあたっては一定の割り切りが必要だ。というのも「Google Playストア」に対応しておらず、使えるアプリが決して多くはないからだ。Amazon製のサービスには大きな強みを持つものの、汎用性という点では、一般的なAndroidタブレットに大きく劣る。
こうした背景もあり、同じ画面サイズで同等の価格帯の『Fireキラー』ともいえるタブレットが、各社からリリースされている。今回はそうした中から、8型の「Fire HD 8」と競合しうる2台のAndroidタブレットについて、具体的な機能や性能を比較してみよう。
なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』をサンプルとして使用している。
Amazon「Fire HD 8」
まずは「Fire HD 8」の概要から見ていこう。本製品はAmazon製の8型タブレットで、解像度は1,280×800ドット(189ppi)。メモリおよびストレージ容量の異なる複数のモデルがあるが、今回はメモリ4GB、ストレージ64GBの上位モデルを使用している。
OSはAndroid 11ベースの独自OS「Fire OS」で、「Google Playストア」には非対応。そのため電子書籍アプリで使えるのは同社の「Kindle」と「dマガジン」に限定される。連続駆動時間は最大13時間で、実売価格は17,980円だ。
Xiaomi「Redmi Pad SE 8.7」
続いて「Redmi Pad SE 8.7」について。2024年に発売された8.7型のAndroidタブレットで、メモリは4GB、ストレージは64GBと、今回の比較対象である「Fire HD 8」のメモリ4GB/ストレージ64GBモデルと横並び。解像度は1,340×800ドット(179ppi)で、リフレッシュレートは最大90Hzと高いのも特徴のひとつだ。
SoCはMediaTek Helio G85で、Android 14ベースの「HyperOS」を搭載し、「Google Playストア」も利用できる。それでいて実売価格は16,980円と、価格的にもFireの競合となりうる製品だ。またバッテリー容量も6,650mAhと大きく、読書時は34.2時間の連続駆動が可能とされている。
TECLAST「P85T」
続いて紹介するのはTECLASTの「P85T」。2023年に発売された8型のAndroidタブレットで、メモリは4GB、ストレージは64GBと、前述の2製品と同等だが、セールでは実売1万円を切るなど、驚異的なコストパフォーマンスが特徴だ。
Allwinner A523というあまり聞き慣れないSoCを採用しており、OSはAndroid 14、「Google Playストア」の利用にも対応している。解像度は1,280×800ドット(189ppi)と、Fireとは横並びだ。バッテリー容量は5000mAh。ちなみに製品ページなどではメモリが「10GB」とされているが、うち6GBは仮想メモリなので、本稿では物理メモリの容量である4GBとして比較している。
表示のクオリティはどれも横並び。単ページ表示を推奨
まずは電子書籍ユースにおける各製品の見やすさ・持ちやすさを見ていこう。
画面サイズと解像度は、「Fire HD 8」と「P85T」が8型/1,280×800ドット(189ppi)で横並び、「Redmi Pad SE 8.7」はひとまわり大きい8.7型だが、解像度は1,340×800(179ppi)とほぼ同等だ。実機で見比べても、表示性能に違いは感じられない。TECLASTの「P85T」は輝度がやや低いが、直射日光下でもない限り、読みやすさへの影響はないだろう。
もっとも200ppiを切っていることから、どの製品も表現力は決して高いわけではなく、特にコミックの見開き表示では、細いディテールが表現しきれず、細い線がギザギザになることもしばしば。見開き表示にするとページサイズが大画面スマホと同等レベルになることもあり、小さな書き文字が多いタイトルは明らかに読みづらくなるので、基本的には画面を縦向きにし、単ページ表示で楽しんだほうがよい。
長時間手に持って読書をする場合にポイントとなる重量は、Fireが実測332g、「Redmi Pad SE 8.7」が実測350g、「P85T」が実測342gと、おおむね画面サイズに比例した重量になっており、「Redmi Pad SE 8.7」は思いのほかズシリと来る。もっとも8型クラスのタブレットの代表格であるiPad miniは300gを切っているので、残る2製品が軽量かというとそうではない。
ちなみに「Fire HD 8」はほかの2製品に比べてベゼル幅が太いことからボディの横幅があり、片手では握りにくい。樹脂製ゆえ傷がつきやすいのもマイナスで、神経質な人にはあまりおすすめしない。その点、「P85T」が出荷時点で表裏ともに保護フィルムが貼られているのは加点要因だ。
ベンチマークでは「Redmi Pad SE 8.7」の圧勝だが…
続いてベンチマークについて見ていこう。今回の3製品のSoCはどれもバラバラで、かつ耳慣れない型番もあることから、スペックを見ただけで性能を把握するのは難しい。ベンチマークおよび実機での動作チェックの順に見ていこう。
まずベンチマークでのスコアは、「Redmi Pad SE 8.7」がFireの2倍近いスコアを示すなど、頭一つ抜けている。「P85T」はFireとほぼ横並びで、性能はお世辞にも高くないが、このクラスの格安タブレットはベンチマークスコアが「Fire HD 8」の数分の1という場合もあるので、価格を考えると善戦している部類には入る。
このようにベンチマークスコアでは「Redmi Pad SE 8.7」の圧勝なのだが、実際に使ってみるとこのスコアほどの差は感じられず、アプリの切り替えやスクロールといった操作ではもたつくことも多い。特に「Kindle」などAmazon製アプリは、Fireのほうが快適な印象だ。ただし今回試した限り、操作中に応答がなくなるなどの致命的な問題は見られなかった。
これに対して「P85T」は、スクロールなどの操作中にもたつくのは日常茶飯事で、無応答になることもしばしば。操作が受け付けられていないのか、それとも処理待ちなのか、挙動だけでは見分けがつかないことからストレスは溜まりやすい。ベンチマーク上では「Fire HD 8」と横並びではあるものの、実際にはかなりの差がある印象だ。
例を挙げると、今回の試用中に、「Kindle」アプリのタッチやスワイプは反応するものの、画面中央をタップしてのオプション表示がまったく応答しなくなるといった現象が見られた。再起動で解消したものの原因はわからずじまいで、操作中にこうしたストレスを抱えたくないユーザーは、避けたほうがよいだろう。
またこの3製品は、バッテリーの消費ペースにかなりの差があるので注意したい。例えば「Prime Video」で動画再生を1時間行った場合のバッテリーの減りは、「Fire HD 8」が5%、「Redmi Pad SE 8.7」が11%、「P85T」が20%と、数倍の開きがある。読書ではここまでの差は出ないとはいえ、外出先に持ち歩いての利用を考えているのであれば、見逃せないポイントだ。
価格にも大きな開き。何に主眼を置くかが重要
最後に実売価格(2025年3月15日現在)を見ていこう。「Fire HD 8」は実売17,980円、セールでは過去に12,980円まで下がった実績もあるほか、メモリ3GB/容量32GBモデルならば10,980円まで下がった実績がある。予算が限られている場合は、こうした容量違いも検討するとよいだろう。
一方の「Redmi Pad SE 8.7」は、セールでは「Fire HD 8」ほどの破格値は見られないものの、実売16,980円と通常価格ではFireより若干安いのが魅力だ。さらに128GBモデルや、このクラスのタブレットとしては珍しいセルラーモデルをラインナップするのも見逃せない。
そして価格面で圧倒的に有利なのは「P85T」で、実売は12,900円、セールでは1万円の大台を割る9,900円で販売されることもしばしばで、かつクーポン併用で7千円台という破格値がついたこともある。ただしここまで見てきたように気になる点はちょくちょくあるので、そのあたりを踏まえる必要はある。
以上を総合すると、「Fire HD 8」よりワンランク上を狙うならば「Redmi Pad SE 8.7」、とにかく価格を重視するならば「P85T」、という選択になるだろう。どちらも「Fire HD 8」と違って「Google Playストア」が利用でき、「Kindle」以外の電子書籍ストアが使えるのは何よりのメリットで、汎用性を重視するユーザーにとっては、検討に値する選択肢と言えそうだ。