山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
ここまでできてこんなに安い! お値打ち3万円強のAndroidタブレット対決
サムスン「Galaxy Tab A9+」vs レノボ「Lenovo Tab M11」
2024年3月26日 06:55
10~11型クラスのタブレットと言えば、「iPad」が高いシェアを持つ一方、低価格ゾーンにはAmazonの「Fire」が存在するという、両極端ともいえるラインナップが特徴だったが、最近はこの「Fire」が含まれる2~3万円の低価格ゾーンに、新顔がいくつか登場している。
特徴的なのは、製品を投入してきているのが、これまでこの低価格ゾーンにあまり積極的でなかった大手メーカーだということだ。安価なことからパフォーマンスはそれほど期待できないが、もともとそれほどパワーを必要としない電子書籍ユースで、見開き表示や雑誌の単ページ表示を行うには、魅力的な選択肢だ。
今回はその中から、サムスンの「Galaxy Tab A9+」と、レノボの「Lenovo Tab M11」をピックアップし、電子書籍ユースでの使い勝手、およびそれ以外の付加価値を比較する。両製品ともに実売価格は3万円前半と横並びなだけに、どのような違いがあるか気になるところだ。
なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、サンプルとして使用している。
多くのスペックは酷似するもCPUに大きな違い
まずは両製品の概要をざっと紹介しよう。サムスンの「Galaxy Tab A9+(以下Galaxy Tab)」は、画面サイズは11型(1,920×1,200ドット)で、重量は実測473g。90Hzという高リフレッシュレートを売りにするほか、画面を3分割できる機能も搭載する。実売価格は3万2千円前後だ。
レノボの「Lenovo Tab M11(以下Lenovo Tab)」は、画面サイズは10.95型(1,920×1,200ドット)で、重量は実測469g。こちらも90Hz対応を売りにしているほか、Galaxy Tabにはない防水防塵に対応。さらに手書き入力のためのスタイラスペンを標準添付している。実売価格は3万3千円前後だ。
この両製品、スペックを見ていくと、よく似た部分が多い。どちらもメモリは4GB、ストレージは64GBで、対応するメモリカードは最大1TBまで。また生体認証として顔認証を搭載するほか、Wi-Fiは11acまで対応。さらにバッテリーの容量はどちらも7,040mAhと、気持ち悪いほどそっくりだ。
これに加えて両者ともにポートがUSB Type-Cで、スピーカーはDolby Atmos搭載のクアッドスピーカーを搭載する。ボタンの配置などが異なるため、同一モデルというわけではないようだが、ボディの幅・奥行き・高さのうちもっとも差がある奥行きもわずか2.4mmの違いしかなく、両者を並べても外寸での判別は不可能だ。
一方で異なるのはCPUだ。両製品ともに、CPUについて詳しいスペックが公開されていないが、Galaxy Tabは、2.2GHzと1.8GHzのオクタコア。Lenovo TabはMediaTek G88(2GHzと1.8GHzのオクタコア)となっている。クロック数から見るに、ベンチマークのスコアはGalaxy Tabが上になると考えられる。実際にどれぐらい差が出るかはのちほど紹介する。
Galaxy TabはKindleアプリ内で電子書籍を直接購入できる
まず電子書籍アプリの使い勝手について見ていこう。両製品ともにAndroidということで、Google Playストアから任意の電子書籍アプリを導入できることは共通しているが、Galaxy Tabはこれに加えて、サムスン独自のアプリストア「Galaxy Store」も利用できるという特徴がある。
この「Galaxy Store」で配信されているAmazonの「Kindle」アプリは、かつてGoogle Playストア側の規約変更によって廃止された、アプリ内でのコンテンツ購入機能がいまなお利用できる。そのためKindleアプリだけは「Galaxy Store」から導入することで、コンテンツの購入時にWebブラウザーに切り替えることなく、アプリ上でそのまま購入できる。
それゆえGalaxy Tabは、コミックを読み終えて続巻を購入したい場合はもちろん、サンプルに満足してすぐさまコンテンツを購入する場合も、わざわざブラウザーでAmazonのページを開き直す必要がない。Kindleをメインに使っているユーザーにとっては、これは大きなメリットだ(2024年3月19現在)。
なお上記の購入フローの違いを除けば、読書にまつわる仕様はほぼ同一。画面サイズもそれほど違いはなく、また両者ともにアスペクト比が16:10なので、雑誌を単ページ表示した場合、紙版よりもひとまわり小さくなるほか、画面上下に大きな余白ができてしまうなど、表示の特性も共通。解像度についても横並びだ。
ベンチマークはGalaxy Tabが圧倒。価格も要チェック
最後にベンチマークについて見ていこう。「Google Octane 2.0」で計測した結果は、Galaxy Tabは「28652」、Lenovo Tabは「13865」と、スコアの開きは2倍以上。他のベンチマークアプリでも傾向は概ね同様で、最大2倍程度のスコアの差がつく。OSは同じAndroid13、メモリなどの仕様がほぼ共通であることを考えると、主要因はCPUと見て間違いないだろう。
ちなみに実際に使っての体感的な速度もこれらベンチマークアプリのスコア差をよく反映しており、Galaxy Tabと比べてLenovo Tabはかなりもっさりしている。電子書籍のページをめくる程度ならば大きな差はないが、アプリの切り替えや、開いている電子書籍を閉じて別の電子書籍を開く操作では、Galaxy Tabのほうが快適だ。
こうしたパフォーマンス面、さらに前述の「Kindle」アプリにおける購入フローの優位性を考慮すると、Galaxy Tabのほうが優勢だが、一方でLenovo Tabは防水防塵機能(IP52相当)を備えるほか、スタイラスペンが標準添付されるという、Galaxy Tabにないメリットもある。またアプリベースではあるものの、PCのサブモニターとして使える機能も備える。これらをどう評価するかによって、結論は変わってくるだろう。
なおこの両製品、発売直後は数千円程度の価格差があったのだが、発売からしばらく経ってともに価格が下がり、本稿執筆時点ではほぼ横並びで販売されている。今後もこまめに価格改定が行われる可能性は高く、購入を検討する場合は、上記のポイントと併せて確認するようにしてほしい。