山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
『iPad』vs『Lenovo Tab P11 Pro』! 10~11型クラスで電子書籍を読むのに適するのは?
2023年5月25日 06:55
10~11型のタブレットは、コミックや単行本の見開き表示にも対応するほか、雑誌を表示できるサイズであることから、自宅などでくつろぎながら電子書籍を楽しみたい人に人気がある。
このサイズの著名製品はなんといってもAppleの『iPad』シリーズだが、Androidにも候補となる製品は多い。なかでも定期的に製品をリリースしているのがレノボで、画面サイズや軽さなどの特徴で、目を引く製品も少なくない。
今回はそんなレノボのラインナップの中から、2022年秋に登場した11.2型の『Lenovo Tab P11 Pro』を取り上げ、『iPad』シリーズのエントリーモデル『iPad(第10世代)』と、その使い勝手を比較する。
なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用している。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』を、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、それぞれサンプルとして使用している。
表示のフィット感は『iPad』のほうが優秀
まずは画面周りから見ていこう。『iPad』は10.9型、それに対しての『Lenovo Tab P11 Pro』は11.2型ということで、画面サイズは『Lenovo Tab P11 Pro』のほうがわずかに大きい。
ただしアスペクト比が紙の本の4:3とほぼ同じ『iPad』に対して、『Lenovo Tab P11 Pro』は5:3と細長く、どちらかというと画面サイズの違いよりも、『Lenovo Tab P11 Pro』の画面の長さが目立つ。
それゆえ、コミックのようにアスペクト比が4:3に近いコンテンツを表示すると、『iPad』はほぼ余白なしで表示できるのに対して、『Lenovo Tab P11 Pro』はページが短辺に圧迫されて一回り小さく表示される。同時に、画面の左右に大きな余白ができてしまう。
雑誌など大判コンテンツではどうだろうか。両製品とも、雑誌を原寸大で表示できるほどの画面サイズはないが、本体を縦向きにして単ページで表示することで、なるべく大きいサイズでの表示が可能になる。8型のデバイスなどと比べるとその大きさは圧倒的だ。
ここで問題になるのはやはりアスペクト比で、A4変形版のように正方形に近い関係の雑誌では、ページ全体が縮小表示され、それに伴って上下の余白がより目立ってしまう。見開き表示だとそれほどサイズの差はないケースもあるが、『iPad』のほうが小さくなることはまずない。どちらが雑誌表示に向くかと言われれば、やはり『iPad』だろう。
ただし解像度は『iPad』は264ppi、『Lenovo Tab P11 Pro』は267ppiとほぼ同等ゆえ、表示のクオリティに大きな差はない。これは雑誌のほか技術書でも同様で、画面サイズへのフィット感は『iPad』のほうが上だが、表示性能がネックになることはない。『Lenovo Tab P11 Pro』もじゅうぶんに優秀な製品ということになる。
ちなみにディスプレイは、液晶である『iPad』に対して、『Lenovo Tab P11 Pro』はOLEDを採用しており、かなり鮮やかだ。もっとも電子書籍ユースは動画などと違い、色の鮮やかさは特にプラスになるわけではない。『Lenovo Tab P11 Pro』はリフレッシュレートも120Hzと高いので、動画を見る機会が多ければ、加点要因となるだろう。
『Lenovo Tab P11 Pro』はAndroidならではの優位性も
OSの違いによる挙動の違いを見ていこう。電子書籍を購入するにあたり、かつてはAndroidが電子書籍アプリ上で直接購入できるのに対して、『iPad』はわざわざブラウザーに切り替えて購入したのちアプリに転送しなくてはいけなかったが、Androidも仕様変更によって同じ方式へと改められたため、現在では実質的に差がなくなった。
例外的に電子書籍アプリから直接購入できるのは、『iPad』であれば「iBooks」、Androidであれば「Google Play ブックス」といった純正ストアなど一部ストアのみ。これらストアのヘビーユーザーであれば、それらがデバイスを選ぶ上で加点要因になるだろうが、それ以外のストアはどちらを使っても変わらない。
一方で、今なおAndroidの優位性として挙げられるのが、音量ボタンを使ってのページめくりに対応することだ。Android 12を採用する『Lenovo Tab P11 Pro』も、本体左上の音量ボタンを使って、多くの電子書籍アプリでページめくりが行える。タップでは指先が反応しにくい人や、屋外で手袋をはめた状態で操作する機会が多い人は重宝する。
またAndroidデバイスではメモリカードを使って容量を追加できる製品があり、『Lenovo Tab P11 Pro』もこれに対応している。本体内のストレージと比べて用途が制限される場合もあるが、容量をやりくりするための選択肢があるのはメリットだろう。ちなみに『Lenovo Tab P11 Pro』は最大1TBまでのmicroSDに対応している。
重量や薄さはほぼ同等。生体認証は好みが分かれる
ボディの扱いやすさ、その他の使い勝手について見ていこう。
重量は、『iPad』は公称477g、『Lenovo Tab P11 Pro』は480gと差は10g以下。実測では『Lenovo Tab P11 Pro』のほうが軽いのだが、それでもやはり10g以下だ。実際に手に持つとボディが細長いこともあってか、『Lenovo Tab P11 Pro』のほうが軽く感じられる場合もあるが、実際の差はほぼないため、長時間手に持っていても腕の疲れ方には差はない。
また厚みも、『iPad』が7mm、『Lenovo Tab P11 Pro』が6.8mmと、こちらも誤差レベル。実際に使っていても差を感じることはない。
こうしたことから、持ちやすさについては、甲乙つけがたい印象だ。ただしタブレットの場合、ケースなどのアクセサリが持ちやすさに与える影響は大きく、アクセサリの種類が豊富な『iPad』のほうがある意味で有利かもしれない。
充電ポートはどちらもUSB Type-C。Wi-Fiが11axに対応していることも共通している。電子書籍にはあまり関係がないが、短辺側に2×2のステレオスピーカーを配置しているのも同様だ。『Lenovo Tab P11 Pro』はドルビーアトモスにも対応している。
一方で相違点として挙げられるのは生体認証だ。『iPad』は電源ボタンと一体化した指紋認証、『Lenovo Tab P11 Pro』は顔認証という違いがあり、ユーザーの好みは分かれるところだ。
実際に試した限りでは、『Lenovo Tab P11 Pro』の顔認証は、『iPad』の上位モデル『iPad Pro』などが採用するFace IDに比べて精度は高くなく、また今回の試用中は登録済みの顔データを削除したところ再設定ができなくなったりと、完成度の点でやや疑問符がつく。実際に使い比べた限りでは、『iPad』のほうが使いやすい印象だ。
製品のバリエーションについては、『Lenovo Tab P11 Pro』は1モデルのみ、容量違いやカラーバリエーションもないのと比べ、『iPad』は容量の異なる2モデルと、カラーバリエーション4色がラインナップされる。またモバイル通信が可能なWi-Fi + Cellularモデルも用意されており、使い方に応じて選択できる。
ベンチマークの結果を踏まえて価格差をチェック
最後になったがベンチマークもチェックしておこう。両者ともに電子書籍ユースではサクサク動作しストレスは感じないが、その他さまざまな用途に使うことも考えると、パフォーマンスにどれだけ余裕があるかは気になるところだ。
以下、プラットフォームが異なるのであくまで参考扱いで見ていただきたいが、Googleの「Octane 2.0」でのスコアは『iPad』の「54539」に対して『Lenovo Tab P11 Pro』は「29792」。また「Geekbench 6」では『iPad』の「1881/4144」に対して『Lenovo Tab P11 Pro』は「906/3047」と、『iPad』のほうがスコアはおおむね1.5~2倍ほど上ということになる。
そしてこれらの価格だが、『iPad』はストレージ64GBで68,800円。一方の『Lenovo Tab P11 Pro』はストレージ128GBで59,840円。容量と価格だけで見ると『Lenovo Tab P11 Pro』のほうが有利だが、前述のベンチマークでの値の違いをどう見るかによっても、評価は変わってくるだろう。製品選びの参考になれば幸いだ。