山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

スマホだと画面が小さく電子書籍が読みづらい? ならば折り畳みスマホを使えばいい!

フォルダブルスマホ「Galaxy Z Fold6」を8型タブレット「iPad mini」と比べてみた

左が7.6型の「Galaxy Z Fold6」、右が8.3型の「iPad mini(A17 Pro)」

 電子書籍を読むにあたり、スマホでは画面サイズが物足りないとなった時、まず候補に上がるのは8型クラスの小型タブレットというのがこれまでの定番だった。近年、ここにもうひとつの選択肢として浮上してきたのが、俗にフォルダブルスマホと呼ばれる、折りたたみ式のスマートフォンだ。

 これらは画面サイズはスマホ2画面分で、持ち歩く場合は半分のサイズに折りたためるので、表示はスマホよりも余裕があり、かつ8型クラスの小型タブレットよりも持ち歩きやすいときている。まだまだ高価とはいえ、興味をそそる選択肢であることは間違いない。

 こうしたフォルダブルスマホのうち、Googleの「Pixel Fold」シリーズと並んで国内でも知名度が高いのが、サムスンの「Galaxy Fold」シリーズだ。今回はその現行モデル「Galaxy Z Fold6」を、8型タブレットの代表格である「iPad mini」と比べつつ、電子書籍ユースでのメリットとデメリットを見ていこう。

 なお、画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また、テキストは夏目漱石著『坊っちゃん』をサンプルとして使用している。

まずは「Galaxy Z Fold6」「iPad mini」それぞれの特徴をチェック

 まずはGalaxy Z Fold6から見ていこう。一般的にフォルダブルスマホは、画面を開いた状態でも縦長の比率をキープする製品と、横長になる製品の2種類が存在するが、Galaxy Foldシリーズは前者、開いた状態でも画面は縦長であることが特徴だ。見た目はほぼ正方形ながらわずかに縦長の画面は7.6型と、スマホと比べても画面サイズの大きさは圧倒的だ。

「Galaxy Z Fold6」。広げた状態では7.6型で、正方形よりもわずかに縦長
閉じた状態では6.3型。一般的なスマホに比べるとかなり幅はスリムだ

 重量は239gと、6型後半のスマホよりもわずかに重い程度でしかなく、300g前後が当たり前の8型タブレットと比べてもかなり軽量。また開いた状態での厚みは5.6mmとかなりスリムな部類に入る。折りたたむと画面が2枚重なるため分厚くなるのはフォルダブルデバイス共通の弱点だが、少なくとも開いた状態では一般的なスマホと比べても薄い。

閉じた状態での側面。中央寄りの凹んだところが電源ボタン兼指紋センサー

 基本スペックは、SoCがSnapdragon 8 Gen 3 Mobile Platform for Galaxy、メモリは12GB、ストレージは256GB/512GB/1TBと、スマホとしてはかなりハイエンドな部類に入り、解像度も374ppiと十分。それゆえ実売価格は24万9,800円からと、ハイエンドタブレットと同等で、購入にあたってはこの予算を確保できるかがポイントになる。

重量は実測243g。6型後半の大画面スマホよりわずかに重い程度だ

 一方のiPad mini(A17 Pro)は、画面が8.3型で、iPhoneの中でもっとも画面が大きい「Pro Max」シリーズと、10~11型クラスのiPadの中間サイズに当たる製品だ。8型オーバーでありながら重量は300gを切るなど、軽量なことが特徴だ。

「iPad mini(A17 Pro)」。画面サイズは8.3型

 また、解像度は326ppiと、こちらも300ppiの大台を超えていることから、電子書籍を表示するにあたっての表示性能は問題なし。ただし、いくらコンパクトとはいえ、フォルダブルスマホのように折りたたんで半分のサイズにすることはできないので、持ち歩く場合は最低限の面積は見込んでおく必要がある。

 一方で実売価格は7万8,800円からと、フォルダブルスマホの価格を見たあとでは非常に安価に感じられる。ただし同じiPadのProモデルがSoCにM4やM2を採用しているのと異なり、こちらはA17 Proと、フラッグシップでないことは差し引くべきだろう。ストレージも512GBが最大で、1TB以上の容量を持つモデルは現状のラインナップにはない。

指紋センサーを兼ねた電源ボタンと音量ボタンは同じ面に配置される
反対側の面にはUSB Type-Cポートを搭載する
重量は実測292g。8型クラスのタブレットとしては軽量な部類に入る

ページの表示サイズはどのくらい違う?

 さて、ここからはGalaxy Z Fold6を中心に、ほかのデバイスと比較しつつ、電子書籍の表示サイズを見ていこう。なお電子書籍ストアアプリは「Kindle」を用いている。

 まず、画面が縦向きのままでコミックを表示した場合、見開きではなく単ページ表示となり、天地いっぱいまで引き伸ばされた状態で表示される。6.9型のiPhone 16 Pro Maxと比べても、そのサイズは圧倒的に大きい。スマホサイズでは小さすぎると感じる人も、これならば満足だろう。

Galaxy Z Fold6は、通常の持ち方だとコミックは単ページ表示となる。左右の余白が目立つ
とはいえスマホと比べると圧倒的に大きいのはメリット。右は6.9型のiPhone 16 Pro Max

 一方、iPad miniと比べた場合は、表示サイズは2周り以上小さくなる。本製品はアスペクト比の関係で、画面の左右に大きな余白ができてしまうことから、もともとの画面サイズの差以上に、ページの表示サイズに開きができてしまう格好だ。ある意味、非常にもったいない。

こちらはiPad miniで縦向きに表示したところ。上下の余白は小さく、画面のムダも最小限に抑えられている
左がGalaxy Z Fold6、右がiPad mini。7.6型と8.3型という画面サイズ以上に、ページのサイズに差がついてしまっている

 では見開きの場合はどうだろうか。ここで事前に知っておくべきなのは、Galaxy Z Fold6は画面を開いた状態でも画面は縦長であるため、見開き表示にするためには、画面が横長になるよう、本体を90°回転させて横倒しにしなければいけないということだ。

 本製品に限らずフォルダブルスマホは画面の中央、縦方向に折り目があるので、横倒しで見開き表示にするとページの分割は縦方向、画面の分割は横方向と向きが異なることになり、感覚的な違和感は大きい。画面をやや折った状態で使うのではなく、完全に広げて折り目が気にならない状態で使うのが、せめてもの対策だろう。

本体を横向きにすれば見開き表示が行える。ただしこの状態でも上下の余白はやはり目立つ
ページの分割は縦方向、画面の分割は横方向となるため、やや折った状態で使おうとすると違和感がある。完全に広げて使えばこうした違和感は軽減できる

 では見開き表示でのページサイズはどの程度になるだろうか。ズバリ言うと、見開き表示におけるGalaxy Z Fold6のページサイズは、iPhone 16 Pro Maxで単ページ表示を行ったサイズが横に2つ並ぶ大きさとなる。つまり『ページサイズはiPhone 16 Pro Max程度あれば十分だが、コミックは見開きで読みたい』というニーズには、またとない選択肢ということになる。

ページサイズ自体はスマホ(iPhone 16 Pro Max)とほぼ同じなので、画面サイズは二の次で見開きに強いこだわりをもつユーザには好都合だ

 一方、スマホだとページサイズそのものが小さく読みづらいという人にとっては、本製品はあまりよいチョイスとは言えない。大きくしたければ縦向きにすればよいが、それだと単ページ表示になってしまい、見開きに戻すとまた小さくなるという、課題の半分しか解決できない状態になるからだ。そもそものページサイズも大きくしつつ、なおかつ見開き表示にもこだわるのであれば、iPad miniのほうが明らかに条件を満たしている。

8.3型のiPad miniは、見開き表示は快適に行える。画面左右の余白も最小限だ
両者を比較したところ。上がGalaxy Z Fold6、下がiPad mini。アスペクト比の関係で実際の画面サイズ以上にページサイズには開きがある

 ただし本製品は解像度が375ppiと高いことから、見開き表示でのページサイズは小さいとはいえ、ディティールが潰れて読みづらくなることはない。あくまでも表示サイズが小さいだけで、クオリティに支障がないことは把握しておきたい。

解像度の比較。上段がGalaxy Z Fold6、下段がiPad miniで、左側は単ページ表示、右は見開き表示での表示。見開きともなるとさすがに表現力は落ちるが、もともと300ppiオーバーということでクオリティは十分

 また、表示するのがテキストであれば、ページのサイズに合わせてレイアウトが可変するので、コミックのような無駄な余白も生じず、またなによりコミックのように本体を横向きにする必要もなく、そのままの向きで読める。一般にテキストコンテンツは、8型タブレットを横向きにして表示するとやや間延びする印象があるが、本製品ではそれもないので好都合だ。

テキストコンテンツを表示したところ。こちらであれば上下左右の余白は自由に調整できるのでフィット感は高い
iPad mini(右)との比較。テキストコンテンツの場合、横長での表示はやや間延びする印象があるが、本製品ではそれもない

フォルダブルのギミックは電子書籍体験をどう変える?

 最後に、画面を二つ折りにできるフォルダブルスマホ特有のギミックは、電子書籍での読書体験にどう影響を及ぼすだろうか。こちらもざっとチェックしておこう。

 初期のフォルダブルスマホは、画面を閉じた時に隙間ができてしまう製品もあったが、このGalaxy Z Fold6は両画面がぴったりくっつくため、閉じた状態での厚みも最小限に抑えられているほか、広げた状態でも折り目はほぼ目立たない。特にテキストコンテンツでは、切れ目の部分と改行が重なることも多く、折り目が気になることはほとんどない。

開いたところ。完全にフラットというわけではなく、消灯状態では凸凹も目立つ
テキストコンテンツでは行がページの切れ目にかかることも多く、画面の折れ目や凹凸はほぼ気にならない

 画面の開閉は片手ではなく、両手で行う必要がある。このあたりは紙の本に比べるとやや不便な部分だが、一方で開いた状態から勝手に閉じてしまうようなことはないので、そのあたりのストレスはない。

開閉は両手で行う必要がある。ヒンジの力は強く、片手での開閉はまず不可能だ

 なお、完全に開いた状態だけでなく、直角になる角度や、135°前後の角度で保持することも可能だが、本製品は前述のように見開き表示をするには本体を90°回転させなくてはならず、紙の本のようにVの字の状態でキープしたまま読書するのは、あってもテキストのみだ。基本的には平らな状態でしか使えないと考えておいたほうがよいだろう。

動画コンテンツでは半分折りたたんだ状態で鑑賞する方法もあるが、電子書籍ではこうした使い方は考えにくい

 なお、本製品はフラッグシップモデルということで、細かい使い勝手にも優れている。例えば生体認証は、顔認証と指紋認証の両方に対応している。特に指紋認証は本体右側面の電源ボタンと一体化しているので、ロックの解除もスムーズだ。iPad miniは指紋認証にしか対応しないので、この点は本製品の強みとなる。

電源ボタンが指紋認証を兼ねている。これはiPad miniも同様だ
顔認証と指紋認証の両方に対応しているのは、iPad miniにはない利点だ

 このほか画面右から内側へとスワイプすることで、最近使ったアプリや任意のアプリを含むランチャーを表示する「エッジパネル」機能も備えている。ここに電子書籍アプリを追加しておけば、呼び出しもスムーズに行えるようになるだろう。またAndroidということで、音量ボタンによるページめくりにも対応している。

画面右から内側へとスワイプすることでランチャーを呼び出せる。電子書籍アプリなどをすばやく呼び出したい場合に活用できる

単純に考えると8型タブレットが優勢だが…

 以上のように、機能面は文句なしだが、画面サイズに関してはスマホよりは大きいとはいえ、見開きでのページサイズもかなり小さく、トータルでは8型サイズのタブレットのほうがはるかに上、というのが正直なところだ。少なくとも最適解にはなり得ないだろう。

 もともとフォルダブルスマホが欲しい、あるいはすでに所有しているのであれば、電子書籍アプリはぜひ試してみたいところだが、スマホ以上の画面サイズで見開き表示したいという目的が先にあり、そこでニーズに合ったデバイスをこれから探す段階であれば、他の選択肢もあるだろうというのが率直な感想だ。

 ただ、フォルダブルスマホは、今後世代を重ねることでさらに安くなっていくだろうし、噂されるAppleが新製品を投入してくれば、情勢はガラリと変わる可能性もある。また現時点でも、新製品に限らず型落ちの中古まで視野に入れれば、予算は半額程度で済む場合もある。可搬性の高さや軽さは8型タブレットよりも圧倒的に上なので、そうした観点も踏まえつつ、自分にとっての最適解を探してみてほしい。

折りたたんでカバーディスプレイを表示した状態。iPhone 16 Pro Max(右)と天地サイズはほぼ同じながら幅はスリムだ