山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

Google VS Apple! 5~7万円で買える10型クラスのスタンダードなタブレット対決

よく似た「Pixel Tablet」と「第10世代iPad」を比較

「Pixel Tablet」(左)と「iPad」(右)。画面サイズはほぼ等しい

 Google純正のスマホとして人気が高いのが「Pixel」シリーズだ。IDC Japanの調査によると、日本における2023年の同製品の前年比成長率(出荷台数ベース)は527%に達しており、全スマホにおけるシェアはApple、シャープに次いで3位につけている。2位浮上も目前といった勢いで、いま国内でもっともホットなAndroidスマホと言っても過言ではない。

 そんなGoogleのPixelスマートフォンの親戚筋に当たるタブレットが、「Pixel Tablet」だ。2023年に発売されたこの製品、しばらくは充電スピーカーホルダーとのセットモデルのみラインナップされていたが、2024年5月からはタブレット単体でも販売されるようになり、入手のハードルがぐっと下がった。

 今回はこの「Pixel Tablet」の電子書籍ユースを中心とした使い勝手について、同製品とほぼ同じ価格帯で販売されている「iPad(第10世代)」(以下「iPad」)と比較しつつ、その特徴を見ていく。言うなれば「著名メーカーによるスタンダードなタブレット対決」といったところだ。

 なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』でで配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、サンプルとして使用している。

全体的によく似た両製品。電源ボタン一体の指紋認証を搭載

 まずは画面サイズから見ていこう。「iPad」が10.9型なのに対して、この「Pixel Tablet」は10.95型と、ほぼイーブン。一方でボディサイズは、「iPad」の248.6×179.5mmに対して、「Pixel Tablet」は258×169mmと、「Pixel Tablet」のほうが横長でスリムだ。

 画面サイズがほぼ同じながらボディサイズにかなりの違いがあるのは、画面のアスペクト比が異なるためだ。「iPad」は画面のアスペクト比がほぼ4:3なのに対して、「Pixel Tablet」は16:10と細長いため、ボディもそのぶん細長くなるというわけだ。これは電子書籍の表示サイズにも大きく影響するのだが、詳しくは後述する。

 厚みは「iPad」の7mmに対して「Pixel Tablet」は8.1mmとやや差があり、両者を持ち比べてもはっきりと違いが分かる。ただし「iPad」は背面カメラが突出しており、最厚部で比較すると両者にそれほど差はない。カメラの段差をなくすように保護ケースを付ければ、差は実質なくなるといってよいだろう。

 重量は、「iPad」が477gなのに対して、「Pixel Tablet」が493g(実測では487g)ということで、差は感じられない。長時間持って使う場合の快適さは、互角と言っていいだろう。

「Pixel Tablet」(左)と「iPad」(右)。「Pixel Tablet」のほうが縦長で、そのぶん幅はスリムだ
背面から見たところ。カメラやボタン類の配置がちょうど鏡写しになっている
角が丸まっているため分かりにくいが、「Pixel Tablet」(左)のほうが1mm程度厚い
「Pixel Tablet」はカメラの出っ張りがないため、バッグなどに入れる場合も引っかかりにくく
「iPad」はカメラが出っ張っているため他のデバイスと重ねた場合に傷がつきやすい。また最厚部で比べると「Pixel Tablet」とはほぼ同等となる
「Pixel Tablet」は実測487gと、公称値よりもやや軽い
「iPad」は実測477g。ほぼイーブンと言っていいだろう

 このほかの仕様については、この両製品は似たところが多い。具体的には、画面を横向きにした時に上部に配置されるインカメラや、背面の隅に搭載されたリアカメラ、さらにはUSB Type-Cポートなどがそれだ。電源ボタンと音量ボタンも、配置こそ異なってはいるものの、構成は変わらない。

 両者ともに採用していながら、使い勝手が大きく異なるのが生体認証だ。両製品とも電源ボタンと一体化した指紋認証を採用しているのだが、「Pixel Tablet」は電源ボタンの高さがその周囲と変わらずフラットなため、指先の感触に頼って押そうとするとボタンの位置を特定しにくい。「Pixel Tablet」がややクセがある部分の一つだ。

「Pixel Tablet」の指紋認証はボタンがほぼフラットなので指先だけで位置が特定しづらい
「iPad」の指紋認証はボタンが出っ張っているため目視しなくとも場所の特定は容易

電子書籍の使い勝手もほぼ同じ。表示サイズの差に注意

 電子書籍での使い勝手について見ていこう。両製品はAndroidとiPad OSの違いはあれど、利用できる電子書籍アプリ自体はそう大きくは変わらない。せいぜいApple BooksがAndroidでは利用できないといった、ストア運営元による縛りがあるくらいで、少なくともどちらか一方が、極端に電子書籍系のアプリが少ないといったことはない。

 一方で、Androidのみの利点として挙げられるのは、音量ボタンによるページめくりだ。これはデバイスの音量ボタンを使ってページを前後に行ったり来たりできるという機能で、タップが反応しにくい場合などに効果を発揮する。これについてはiPad OSは非対応なので、今回比較している2製品のうち、「Pixel Tablet」のみが可能なワザということになる。

 なおAndroidタブレットの中には音量ボタンが非常に硬く、連続して押していると指先が痛くなることからページめくりでの利用にあまり向かない製品もあるが、本製品は適度な軽さで、長時間使い続けても苦にならない。使わなくてはならない機能というわけではないが、電子書籍を楽しむのであれば、ぜひ試してみてほしい機能だ。

Androidの場合、電子書籍アプリの多くには音量ボタンでページをめくるためのオプションが用意されている。これをONにしておく
これで音量ボタンを使ってページをめくれるようになった。手袋をしていたり、乾燥肌などでタッチが反応しにくい場合でもスムーズにページをめくれる

 さて電子書籍ユースにおける両製品の違いとして知っておくべきなのは、画面のアスペクト比の違いによる表示サイズの差だ。今回の両製品はそれぞれ10.9型、10.95型と画面サイズはほぼ同じなのだが、「Pixel Tablet」はアスペクト比が16:10と細長いため、「iPad」と同じページを表示した場合も、全体が圧迫されてひとまわり小さく表示される。

 これは単ページ表示であっても見開き表示であっても同じで、なるべく大きくページを表示したい場合にはネックになる。Androidタブレットの多くはこの「Pixel Tablet」と同じくワイドサイズなので、こうした現象が起こりやすい。少しでも大きく表示したければ、スペック上の画面サイズが等しくても、「iPad」のほうが有利となることは、知っておいたほうがよいだろう。

 その一方で、表示のクオリティについては、両者ともにほとんど差はない。「iPad」は264ppiなのに対して、「Pixel Tablet」は276ppiと、ほぼイーブンだからだ。実際に見比べても差は感じられないので、細かい文字を表示するにあたってどちらか一方の製品が有利なのでそちらを購入する、といった選び方をする必要はない。

雑誌を表示したところ。「Pixel Tablet」(左)は幅が狭いためページ全体が圧迫されて表示サイズがひと回り小さくなる
コミックを見開き表示したところ。こちらもやはり「Pixel Tablet」(上)は短辺側に圧迫されて表示サイズがひと回り小さくなる
画質については両者の差はほとんどなく、線の精彩さなども同等に見える。左が「Pixel Tablet」、右が「iPad」

ベンチマークでは「iPad」にやや分あり

 パフォーマンスについてはどうだろうか。「iPad」は、上位の「iPad Air」および「iPad Pro」と比べると下位モデルという位置づけながら、実際にはそこそこのパワーがある。ベンチマークだけを見れば、エントリーモデルと呼ぶにはやや高性能なイメージだ。

 一方の「Pixel Tablet」は、Tensor G2のパワフルさを売りにしているが、AIの活用やスマートホームなどやや特殊な用途に特化しているようで、ベンチマークでは「iPad」よりも低めの数値が出てしまう。タブレットとしてはエントリーからミドルエンド相当といったところだ。

 これらのパフォーマンス差は電子書籍ユースで実感することはまずないが、アプリの切り替えなどの操作では「Pixel Tablet」はワンテンポ間が空いたり、ひっかかりを感じることがある。相対的には「iPad」のほうがパフォーマンスが高く、それだけ多用途に使える可能性があると見てよいだろう。

「Google Octane 2.0」による比較。「Pixel Tablet」は「42392」、「iPad」は「60571」で「iPad」のほうが優秀だ
3DMarkの「Wild Life」による比較。「Pixel Tablet」は「6701」、「iPad」は「7911」と、こちらも「iPad」のほうが優秀

 ただし「Pixel Tablet」自体、性能が低いかと言われると少々違和感がある。Androidタブレットは、「Pixel Tablet」の属する実売5~7万円のゾーンの下にもう一つ、実売2~4万円で入手できるゾーンの製品もあるが、こちらで同じベンチマークアプリを走らせた場合のスコアは、「Pixel Tablet」の半分~3分の1程度しかない。

 詳細は以前の記事を参照してほしいが、こういったゾーンの製品は実際に使っていても、もっさり感が気になることは非常に多い。こうした動作の遅さは許容できないが、ハイエンドのタブレットは予算的にも手が出ないという人にとっては、「Pixel Tablet」がよい選択肢になるのは間違いない。

価格帯もほぼ同等。ありそうでない機能に注意

 最後に実売価格とラインナップについて見ていこう。「iPad」は、もっとも安価な64GBモデルが58,800円、次いで256GBモデルが84,800円。これに対して「Pixel Tablet」は、充電スピーカーホルダーが付属しない単体の128GBモデルが68,800円、256GBモデルが79,800円(公式サイトでの価格)。ストレージ容量で見る限り、実質イーブンと見てよいだろう。

 容量以外のラインナップとしては、カラーリングの違いがある。「Pixel Tablet」はホワイト系とグレー系の2色、「iPad」はシルバー、ブルー、ピンク、イエローの4色が用意される。単純に色数だけでいえば、「iPad」のほうが豊富だ。

 なお昨今のタブレットの多くに言えることだが、このカラーリングは、ベゼル色とは必ずしも連動しない点に注意したい。例えば「Pixel Tablet」の場合、ホワイト系(Porcelain)はベゼルは白、グレー系(Hazel)はベゼルは黒といった具合に異なるが、一方の「iPad」は4つのカラーバリエーションすべてベゼルは黒だ。

 電子書籍の場合、テキストコンテンツはページが白いことから、それを囲むベゼルが黒だと、見た目が重くなってしまいがちだ。ちょっとしたことだが、長く使い続けているとこうした些細な点が気になってくるというのはよくある話なので、色周りに神経質な人は気をつけたほうがよいかもしれない。

「Pixel Tablet」(左)はカラーが「Porcelain」だがベゼル色は白。一方の「iPad」(右)はカラーが「シルバー」だがベゼル色は黒だ。このように本体カラーとベゼルの色は連動する場合とそうでない場合とがある

 以上ざっと見てきたが、「Pixel Tablet」は電子書籍ユースとしては無難で欠点のない製品で、「iPad」とともにおすすめできるが、Androidタブレットに多い防水防塵仕様ではなかったり、またiPadでは漏れなく搭載されているGPSが非搭載だったりと、あっておかしくない機能や仕様が省かれているケースも見られる。

 このほかAndroidタブレットとしては珍しく、メモリカードスロットを搭載しないことをネックと感じる人もいるかもしれない。実際に購入するにあたっては、電子書籍以外の用途にも目を向けて、欠けている機能がないかをチェックしておくことをおすすめする。

 また今回見てきたように、タブレット単体として見た場合は、それほど特徴がある製品ではない。単体売が始まったとはいえ、専用のスピーカースタンドがあれば充電もスムーズに行えるので(稀に装着ミスが起こるのは困りものなのだが)、なるべくならばセットでの購入を検討したほうが、満足感は高くなるだろう。